「ふぅー、やっと終わりましたね!食べましょうか」

「もう僕へとへとだよ〜!ありがとうね。食べやすいように処理してくれて」

膨大な量の生野菜は日持ちしそうな物は切って冷凍庫に。
日頃料理しないらしいからせめて、パッと野菜が入れられるように。
お肉とお魚も味噌や醤油に漬け込んで焼くだけにして仕分けてみた。

「いえいえ!こんなにたくさん買ってくださってたんですね。ありがとうございます」

「君が来てくれるから張り切っちゃったよ。さ、食べよう?」

即席で作ったオムライスとソテーと南瓜のスープ。美味しそうだ。
ふわりと香るバターのにおい。
我ながら上出来だ!



「頂きます!」


君という花




「ご馳走さまでした!」

「本当に料理上手だね!美味しかった。こちらこそ縫い物に料理にありがとう。ほんとは僕が作ってあげたかったけど…あ、皿洗いは僕がするから。座ってて」

カチャカチャとお皿を洗う乙骨さん。おもむろに置かれた初心者編の料理本。
何枚か角が折られている。
これを作ってくれるつもりだったんだろうか。


なんだか可愛らしい…。
フフ、と笑みがこぼれる。



「皿洗いありがとうございます!もうそろそろ良い時間ですね。」


新しく縫われた服を綺麗に畳み、積み上げた。何着あったんだろう?
これをまた明日から着てくれる、と思うと嬉しかった。

「まだゆっくりしてて良いよ。プリン食べる?」

「そうですね…食べられそうです!」

「甘いものは別腹だよね。じゃあー持ってくるね。」

そういって自分の作ったプリンを食べた。以外と美味しくできていてホッとする。乙骨さんも結構食べるんだなぁ。

そういえば冷やして固める物は高専に作っていったことないなぁ…。
暑い時期はいい差し入れかも。


虎杖君とかバケツくらいのプリン食べそうだ。想像がつく。


「どうかした?」

「暑い時期は冷たいゼリーとかも差し入れ良さそうだなって!今度作って持っていこうかなって。」

「いいかも。皆喜ぶよ。君の手作りのお菓子は美味しいから。」

サラリと褒めてくれるから時間差でカァァと顔が暑くなる。


「い…虎杖君とか五条先生はバケツで食べられそうですよね!たくさん作らなきゃ」


「…。そ、うだね。」




すると、ヴー、ヴーと乙骨さんのスマホが震えた。


「もしもし?狗巻君!どうしたの?え?今から僕んちに?そうだなぁ…1人?みんな来るって?」


慌て出した乙骨さんが少し席を外す。
越してきてまだ日が浅いから先輩たち来たいのかも。パンダ先輩とかどうやって来るんだろ?



となると早く帰った方がいい。そう思って片付けて帰りの支度をした。


少し、寂しいと思ってる自分がいる。

もう少し話したかったけどなぁ…。
休日に一緒に過ごせただけでも、ほっこり嬉しかった。こんな感情は初めてだ。



大丈夫、また高専で会える。



「(私帰ります!お邪魔しました!)」

ペコリと会釈し、小声でそう伝えて玄関の方へ行くとパシッと腕を掴まれた。


ふと、スマホを遠ざけて耳元に顔が近づく。

「(か、え、ら、な、い、で)」



フワ、と小声で囁かれ、全身の熱が立ち上る。


話し終わったのか、スマホを切った乙骨さんは手を離してくれない。



でも顔を見ることもできない。だって真っ赤だから。



「あの…先輩たち来るんですよね?私邪魔だからすぐ帰り…」


「帰らないでほしい、って言ったら君を困らせる?」


今まで見てきた乙骨さんの表情とは少し違う、ギラギラした顔。

「…えっと…」


「初めてあった時から君が気になってしょうがなかった。敵を省みず戦うし、頑張りやさんだし。自分を犠牲にしてね。」

「あの…」


「君が夏油にやられた時、生きてる心地がしなかった。死なせたくないって思ったけど…それが呪いになったら…気持ちをセーブしてた。だから…これからは僕が守りたいって。」


そうか…里香さんはそれで…あんな大きな呪霊になっている。



「それに君は皆に人気だから。人が自然と集まる。君は誰にでも明るくて優しいからだよね。皆の癒しになっていたんだと思う。僕もその1人で癒されてた。君に。」


黙って話し終わるのを待つ。
何も口を挟めない。



「でも…他の男の事を話してるのを見るだけで…嫉妬してしまったんだ。さっきもそう…。意味わかる?」




意味…って…。





「君が好き。」




end