とても禍々しいものを背負っている。
重たくて、どす黒くて、そんな風には見えないのに。


五条先生がすぐに分かるよ、って言ってた意味が分かった。


ターミナル内の小さな呪霊たちが一掃される。それも一瞬で。


バックは重たいのに本人はニコニコとしている。



この人が特級呪術師、乙骨憂太。




君という花








「乙骨憂太さんですか?補助監督の名字です、出張お疲れ様です!車はあちらに。」

「すみません、遠くまで迎えに来てもらって。電車とかでも良かったんですけど…」


アハハと困ったように笑う彼はとても礼儀正しかった。


「大丈夫ですよ!今は比較的忙しくないので!パンダ君や狗巻君も乙骨さんが帰ってくるのを楽しみにしてましたよ!」

「本当ですか?!嬉しいなぁ…何年ぶりかなぁ?あ、これお土産です。ケニアの調味料なんですけどね…」


車内では互いに初めましてなのに会話が弾んだ。
乙骨さんはとても、こう…なんというか話しやすい。
高専関係者はわりと変わった人が多いから。得に呪術師。得に五条先生とか!!


「真希さんと同期ということは…乙骨さんは私より1つ年上なんですね。」

「うん、名前さんは落ち着いてるから年上にみられそうだね。」

「そんなことないです!まぬけ面だからせめて見た目くらいと思っています!」

「まぬけ面って、久しぶりに聞いたよ」

和気あいあいとした車内移動もあっという間に過ぎて、高専近くまで来た。


「補助監督は…?」


「3年目、です。私…見えるだけで。」

「でも帳は降ろせるんだよね?」

「はい。でも祓うのも戦うのもそこまで出来ず…。低級くらいならなんとかなんですけど……」


あの日出くわした呪霊は勤めてから2級の呪霊だったってことがわかった。

「弱いんです。ここが」


そういってトンと心臓を触る。
単純に、弱い。体術もメンタルも。


「……でも補助監督をしてくれてるんだね。」

「助けてもらったから少しでも役立ちたいと思っているのですが…。まだまだ未熟です!努力あるのみです…」

「怖い思いをしてるのにまた関わろうとしてくれただけ君は強いよ。僕も頑張らなきゃね」


バックミラーに写る乙骨さんをチラリと見る。
その表情はなんとも言えない顔で。



私はそのまま車を走らせた。




end