「お疲れ様でした七海さん!大丈夫ですか?怪我はないですか?」

「問題ないです。帰りましょう。」



一級の任務をサラリと済ませた七海さんは昔、私を助けてくれた人だ。

私を助けて、この道へと導いてくれた人。


帳を降ろしてからいつも願う、彼らの安否。
どうか、無事に戻ってきますようにとぎゅっと手を握る。
帳が上がると、とてつもない安堵が押し寄せる。

今日も無事で良かった。



車内でサクサクと任務報告を伺う。

だいたいインプットして帰ってから報告書の作成。
その後に引率した人に確認してもらってから上げることにしている。


「ありがとうございます…帰ってまとめたらメールで確認をお願いできますか?」


「わかりました。」


車の時計は18時前。
定時上がりしたいだろう七海さんのお宅付近まで送り届けよう。それから報告書かな…


夕御飯…間に合わないかもな。



「ここで結構です。貴女はここから高専へ戻ってください。」

「でも、七海さんの家から遠いですよ?」


「さほど遠くありません。気にしないこと。早く高専に戻らないと貴女が帰れませんよ。」



チラチラと時計を気にしていたのがばれていたのか、恥ずかしい。







君という花





「ありがとうございます…お言葉に甘えてここで、」


「ではまた。」



赤信号になった路肩で一旦停止。



「あの!七海さん!乙骨さんって知ってますか?」


降り際で思いきって聞いてみた、今日会った彼のこと。



「知っていますが。」



「あの、彼の後ろに憑いてる…」


どす黒くて重苦しい何か。
私でも感じ取れる恐怖、死。




「…気になるなら本人に聞くのが一番かと。」




確かにそうだよね…



「…そうですね!…すみません変なことを聞いて!お疲れ様でした!」




軽く会釈をして七海さんが横断歩道を渡りきったのを見届けて高専へと急いだ。





※※※※※







「おわらなーーーい!」






タッハーー!!と頭を勢い良くデスクへぶつける。
変な話、報告書はザックリでいい。
書式も決まってるし実際におこったことを時系列で簡潔に。
呪霊の詳細と数、とかいつもならすぐ終わるんだけど。


七海さんに確認してもらうと思うとどこか緊張して誤字やらミスがないかチェックしてもしても不安だ。


「ここはもっと…こうがいいかな」



五条先生とか確認をメールで送るも1秒後とかにOK⭐️ってくる。
絶対見ていない。眼を通してない。


以前それを咎めると

「ちっさいこと気にしないの!名前の書いた報告書だから信用してるんだよ。みなくてもいいでしょ。」

頼りにしてるよ!とバシバシ叩かれた。ほんとにもうあの人は。





時刻は20時をまわっている。
真希さんかパンダ君にメール…


いや、盛り上がってたら狗巻君の方が気がつくかも。




スマホを手に取り狗巻君に送る文面を考える。





ーーーーーーー
狗巻君ごめん!
仕事片付かなくて
今日はいけない
ーーーーーーー



でも誘ってくれたのは乙骨さんだったよね…狗巻君にお断りの連絡いれていいかな?




うーんうーんと悩みながら自販機に飲み物を買いにいった。
悔しいが疲れているので五条先生推しの激甘いちごミルクだ。





「あれ?名字さん?」






そこには飲み物を買いに来たであろう乙骨さんが、ひょっこり覗いてきた。




end