「こんばんは!乙骨さん、すみません…まだ仕事が終わらなくて…!お断りと思ったんですけど連絡先もわからずに…」

「あはは、お疲れ様。」

何本も何本もお茶とミネラルウォーターを買っている乙骨さんを不思議そうにみている。


「真希さんとパンダ君が酔いつぶれちゃって。あ、内緒にしててね?高専内は禁酒だから。」


どうやらピザとってこっそり買ってきたお酒を飲み散らかして最後はマリオカートして潰れたらしい。


「狗巻君…うますぎなんだよね。ゲーム」

「ふふっ」

「どうしたの?」

「すみません、想像がつきすぎて!半分持ちましょうか?」

「大丈夫だよ、ありがとう。明日も皆任務だからね、部屋に連れていってきた。」


優しいな、と思う。きっと毛布もかけてきたんだろうな。


いちごミルクを1口飲んで鳴り響いたお腹の音。
あ、お昼から何も食べてない。
空きっ腹にいちごミルク。




「よかったら残り物だけど…ピザ食べない?僕の部屋にあるよ。待ってて。」


「えっ!」


恥ずかしさのあまり食べるとも食べないとも言えず、そのまま待つことにした。



少し開けた窓から初夏の涼しい風が流れ込む。




君という花




「す、すみませんご飯まで…」

「いいよ気にしないで。余らせても食べきらないと勿体無いしね。」


この休憩室では電子レンジもあるので温め可能だ。
目の前にピザが2切れとフライドポテトが。ほっかほかだ。

そういえば真希さんはジャンクフードが好きだったな。



「じゃ、遠慮なく…いただきます!」


「どうぞ。お茶もいる?」


ピザの横にいちごミルクの飲みかけを置いていたのを気にしてか、1本差し出してくれた。



「えええ!大丈夫ですよ!自分で…」

「余ったからもらってくれると嬉しい。」


にこにこと隣で話す乙骨さんに少し調子が狂う。


「初めて会ったのにこんなことしてもらって…すみません」

「僕がしたいからいいんだよ。」


一度覚めても温めたらそこそこおいしい。というか人とご飯はなんでもおいしい。


「おいしい…!」

「よかった!僕も久しぶりに日本の食べ物を食べたけど、やっぱりおいしいね。」


ホッとした顔をした乙骨さんはへにゃりと笑って窓の外を見ていた。
時刻は21時前。

七海さん報告書待ってるだろうな…あと30分で終わらせよう。

腹ごしらえもできたし!




「ごちそうさまでした!!」


「こちらこそ、またご飯はリベンジだね。皆名字さんが来るのを聞いたら喜んでたから」


「ありがたいです…私には同期いないので…。でも、、お邪魔じゃないですか?」


「そんなことないと思うよ。じゃ、冷えるから。また明日ね。仕事もほどほどにね。」



「はい、おやすみなさい」



大量のペットボトルを抱えて歩いていく乙骨さんの背中は、細いのにしっかりしている。



「はっ!!仕事仕事!」




お腹が満たされたのか、脳がエネルギーを蓄えてすんなり報告書が書けた。
少し遅い時間だけど…七海さんに送信して…返信を待つのみ。



終わったとたんにくる壮絶な眠気。
そういえば最近夜の任務が多かったからな…鏡を見るとなんとも疲れた顔だ。



パソコンを開いて待つもその数分が起きていられず、デスクで突っ伏して寝てしまった。



end