午後三時半のカップケーキ


 よく晴れた日、午後三時過ぎ。クライトとニコラインは、二人でトレイを運んでいた。トレイの上には、小さなカップケーキが三つ。獏病院を訪れた元患者――ミゼットに教わったものだ。

「んん、ちょっと時間かかっちゃったねえ」
「でも、おいしそうにできましたよ!」

 トレイをことこと揺らしながら、カップケーキが転げないように廊下を進む。二人はゆっくりと進んでいるつもりだったが、歩調は無意識のうちに早まっていた。

「おいしいって、言ってくれるといいですね」

 クライトの口元がふわりとほころぶ。
 クライトに一つ、ニコラインに一つ、そして二人ともよく遊んでくれる、スタッフのエリックにも一つ。三人でカップケーキを一緒に食べようと、クライトとニコラインはトレイを運んでいるのだった。

「あ!」

 ニコラインが珍しく大きな声をあげる。つられてクライトが前を見ると、探していたエリックがひらひらと手を振っているのが見えた。

「エリック先生! ぼくたちケーキを作ったんです!」
「おいしくできたんだよお」

 二人が揃って走り出す。トレイに乗ったケーキが揺れた。

「ちょっと待って二人とも! あまり走ったら危ないよ!」

 エリックのあげた慌てた声に、クライトとニコラインも慌てて止まる。しかしトレイは大きく揺れ、カップケーキがぐらりと傾いだ。

「わ」
「あっ!」

 二人が咄嗟に手を伸ばしたが、三つ全ては受け止めきれずに、トレイの上から一つカップケーキが飛び出した。
 エリックが駆けつける。床に落ちるかと思われたカップケーキは、その手のひらに綺麗に収まっていた。

「おっと、危なかった。これ、僕がもらっていいのかな?」

 にっこり笑ったエリックに、クライトとニコラインが大きく頷く。

「よし、じゃあ中庭で一緒に食べようか。天気もいいしね」
「はあい」
「はい!」

 トレイを持ち直し、三人で中庭に向かう。
 午後三時半。陽の光は暖かく、心地よい風がふいていた。



三人で、少し遅めのおやつを食べようか