それが始まったのは2週間程前だろうか、と考えながら緑谷の最近の悩みの種である人物を見た。細くしなやかな指を自身の指と絡めて隣で眠る名前を見て頭を抱えた。


先の経験から生徒の安全を確保する為に、急遽導入された全寮制度。クラス全員が同じ寮内でも1人1部屋鍵がついておりプライバシーを確保している。にも関わらず、名字名前はここ2週間緑谷の部屋に通っている。通っていると言っても一方的に夜、ベットに潜り込んでいるのだから、押しかけるという表現が正しいかもしれない。


「…ん…おはよう、デクくん」
「ちっ、近い、名字さん!」
「今日も顔真っ赤だね、可愛い」


ゆうるりと長い睫毛をあげ名前は猫のように伸びをした。元々心の底で密かに緑谷に想いを寄せていた名前だったが、寮になった事で愛情が暴走し始めた。少しでも一緒に居たいという気持ちで溢れ、行動に起こしたところハマってしまい毎日続けているのである。おかげで名前のハッキング能力は鰻登りだ。


「いつも言うけど夜に入っちゃダメだ」
「なんで?教えてデクくん」


悪戯っぽく笑い、答えが分かるのに恍け指を更に絡ませる名前に緑谷はホオズキのような赤い顔で大きく息をついた。何度言っても部屋に来るのを辞めず諦めない。
1度クラスの男子に相談したが、ほとんどから嫉妬と羨望に満ちた反応が返ってきた。特に峰田は自分が代わりにベットで待つと野獣さながらの目で言っていた為、止めるのに苦労した。それも名前がハッとするほどの美貌の持ち主だからだ。


「デクくん、あったかい」
「……っ」


胸板に顔を押し付けると、電気にかかったように身体が強ばった。ふしゅーと緑谷の頭から機関車の如く蒸気が出ているのを見かけ、やりすぎたかなと名前は少しだけほんの少しだけ後悔した。


緑谷ほどの力の持ち主であれば身体を突き放す事も部屋から追い出す事も、無理に迫ることも容易い。それをしないのは緑谷が柔らかな優しさを持っているからだと知っている名前は今日の夜はどう部屋に入ろうかな、とまどろみの中へ誘われるのであった。












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