「不二ってさあ」どういうつもりで私を花火大会に誘ったの、と遠回しに探ろうとして顔を上げたのと同時だった。あ、と不二が小さく声を溢すのが聞こえて、ちょうど二秒の沈黙の後に、暴力的なまでの爆音が足元から突き上げて、胃の底を揺らした。目の前に昼間の明るさが広がる。「始まっちゃった」不二がそう言うや否や二発目の花火が上がる。今度こそ音は、確かな実感を伴って瀬生の頭を揺さぶった。夏に纏わるありとあらゆる熱量が、強烈な音と共に正面から襲ってくる。花火はまるで、誰かが打ち上げた熱烈な告白みたいだ。周りから小さな歓声が沸き起こる。真っ暗な空に息を飲むほど眩しい光が散って、道行く人々を照らした。その途方もない迫力に見惚れてしまう、とはまさにこのことだ。「あのさ」夢中になって空を見上げていれば、隣から呟くような不二の声が聞こえてきた。どうやら、どれだけ大きな花火の音の中でも、耳は正直に不二の声を拾えてしまえるらしい。まるで前からそれを言われることが分かっていたように、不二の言葉はストンと胸のうちへ落ちた。不二の呟きになんと言って返したのかは、あまり覚えていない。多分、ああ、とか、うん、とか、そんな感じだ。これ以上、花火に勝る返事も思いつかなくて、瀬生は花火に集中した。相変わらず花火の音は鳴り響いている。夜空に目を細めながら、自分の身体を揺らす振動が繋いだ手から不二まで伝わればいいと思った。
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