動き出す運命の輪

「すごいっ!こんなカード見たこと無い!!!」
(くぅ〜っ、ハルちゃんが応援してくれてるー!!!ヨーシ)
「灼熱のサン・ドラゴンでキョウタにダイレクトアタックだ!!!」

「うわあああっ」
「「「キョ、キョウタさ〜ん!!!チクショー憶えてろよー!!!」」」


「大丈夫?ハルちゃん」

「うん。あのね遊士くん」
「ん?」
「スゴく、かっこよかったよ!」
「…!ありがとうハルちゃん!学校遅れるぜ、走ろう!!!」

オレはハルちゃんの手を取り、校門をくぐった。

「やあ」
「誰だ!?」

「オレはマサト。君のさっきのデュエル、面白かった。行こう…遊里」
「ええ」
「オレのデュエルを…見ていた人が居たのか…!?」



遊里と呼ばれた少女は、気味悪いくらいオレとそっくりだった。
放課後ハルちゃんと訪れたのは、山城塾。明智カード店のすぐ向かいにあるのだ。

「時空を司る《アストログラフ・マジシャン》よ!その深淵なる力で我らの望みを重ね合わせよ!」


『出たーーーー!!!細川遊里のエースカード、アストログラフ・マジシャンの登場だぁーーーー!!!』

「麗しき龍よ神の名の元に降臨せよ!ムーン・ドラゴン!!!」


「ムーン・ドラゴン!?」

『マサト選手の墓地から復活したのは、麗しき神龍ムーン・ドラゴン!!!』


「時空の魔術師ぐらいでオレに勝つことは出来ないよ。最も、この龍は深淵の真実を知る麗しき龍。偽りの深淵など、刈り取ってくれる!!!」


「私のアストログラフ・マジシャンが偽りのカードですって!?二度とそんな口開けないようにしてあげる!」

***


「マサトカッコイイーーーッ!!!キャーーーーッ」
「うるせえんだよアイカ。タツヤ兄ちゃんの解説が聞けねえだろうが」

「そっか。タツヤ、解説者として輪舞市決闘大会に出てるんだもんね」
「痺れるくらい羨ましいよな〜」


「細川遊里はよっぽど榊遊矢の影響を受けているみたいだね。輪舞市でペンデュラム召喚を使うのって彼女くらいだよ」
「マリアくん、遊矢お兄ちゃんは凄いのよ〜」
「アユ姉ちゃんのノロケ話は聞き飽きたよー」

「遊士は黙ってて」


オレは始終考えていた。朝、校門の前で出会ったあの2人。今日山城塾のMVPで見た反骨マサトと細川遊里にそっくりだ。アストログラフ・マジシャンとムーン・ドラゴン。
あのマサトってヤツの瞳の色はムーン・ドラゴンの瑠璃色の瞳によく似ていた。
オレは最近、自分の瞳がサン・ドラゴンの溶岩の色に似てきていると思い始めてる。

そういえば、細川とマサトは薔薇園塾に通っているのではなかったか。確かそうタツヤ兄ちゃんが教えてくれたような気がする。

「なによ、遊士のヤツボーっとしちゃって!」
「アイカちゃん。遊士くんはね、今日キョウタとのデュエルで私を守ってくれたんだよ」

一瞬、その場が氷河期になったかのように凍りついた。

「ゆ、遊士が!?どんなカード使ったの!?」
先に切り出したのはアイカ。
「え、ええ!?ええっとね、アレ…なんだっけ ?ねえ?遊士くん」
「ああ。灼熱のサン…ってオイ!!!またテキストが見えなくなってるぞ!!!さっきはソリットビジョン無しでも爆風が上がるほどだったのに!!!」

「爆風?」
アユは顔をしかめた。
「確か、柚子お姉ちゃんが沢渡達とデュエルしようとした時も、ソリットビジョンじゃない爆風でスラムが燃えてたって言ってた」
「じゃあ、遊矢兄ちゃんみたいな痺れる力を持ったカードってことか!?ソレ!!!」

「…マサトと居た時はドラゴンのイラストが描かれてたのに、また見えなくなってる…」

「よーし!それじゃあ行きますか!!!」
「アイカちゃん?」
「行くって何処にだよ、アホアイカ」
「ったく。薔薇園塾に決まってんでしょー」


「ま、待てよ!オレ今日は明智カード店に…!!!」

「行っておいでよ。なにか掴めるかもよ?もしかしたら、伝説のデュエリストを超えるカードだったりして!その…遊士くんのカード!」


「よし!行くぞアイカ、マリア!」
「…面白そうだね。(サイコソーダを飲みながら)」

ハルは誰にも気付かれずに不敵な笑みを浮かべ、向かいの明智カード店に帰っていった。




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