頼れる一輪の華

マサトと遊里の目の前に黒のフードを被った男が立っていた。年齢は、身長からして同い年ぐらいだろう。


「…誰?君」
「オレはリィ」

「リィ…?」
「ライトという妹を探している。心当たりはないか?お前はここいらじゃ見ない顔をしているようだから声をかけた」

「知らないよ」
きっぱりとマサトが答える。リィはフードを脱ぎ払い、ディスクを構えた。
「そうか。ならば消えてもらうまでだ」


「…リィ。私達は消えるわけにはいかないのよ。本当の自由を手にするために」
「邪魔者になりそうな奴は全員この手で潰してきた。お前等もその内の一人になるだけだ」

「じゃあ、今度は私達から質問。アカデミアって知ってる?次元戦争を存じているのなら知っているはずよ」
「…オレの妹はアカデミアに連れ去られた。貴様のその格好からして、アカデミアであるというわけか。なおさら消して置かなければ。決闘!!!」

「…フーーーー。しょうがないわね、決闘!!!」



***


「おい、貴様はアカデミアなのだろう!!!何故敗北したオレをカード化しない!!!」

「何故って…私はそんなやり方で戦っているわけじゃないから。それに、直ぐ吠える君をカードにしたって何の意味もないじゃない」

「ならばオレが今すぐお前をカードにしてやる…お前などに貸しは作りたくないからだ」


「…生かされてると知りながら、哀れね。リィ」
「誰?」

「アキ様!?」
「リィ。その勝負は諦めなさい。初めまして遊里さん、マサトくん。私は十六夜アキ。いくわよ」

「…くっ、命拾いしたな遊里」

「…ったく、だから“どっちが”よ」



(いつでもカード化できたのだ。あの、少年は)



「遊里も大変だな。絶対目を付けられたぜ、アイツに」
「マサト、あなたまた傍観者だったわね。いい加減私以外の決闘者と戦ってみたら?でも、アカデミアは解散して、今はもう無いはずなのに変な話しよね。また次元分裂が始まっているとでも言うのかしら?」

「オレは気に入ったやつとしかデュエルしない。なんせ、リィとか言ったか?アイツには素質がねえ」

「…アカデミアに妹をさらわれたって、どういうことかしらね」
「さあな。だがオレもうかうかしていられなくなってきた。マーキング中のオマエを嗅ぎまわる奴が出てきている。あながち、ズァークの復活も侮れないだろう。ムーン・ドラゴンとあのカードが揃っちまえば、ヤツの思う壺だからな」
「そう言って、この状況を楽しんでいるのは何処の誰かしら。フフ」
「うっ、うるせえっ」

「…そうね。薔薇園塾。そこに行けば、今の状況よりは些かマシになりそうね」
「リィの誤解をとくためか?」

「あら、妬いてくれてるの?」
「べ、別にそんなんじゃ」

「…行くわよ。空が曇天に、闇に呑まれ始めている」
「ああ」


***


「…何故お前らがここに」
「歓迎するわ。ここが薔薇園塾です。私は塾長の十六夜アキ。よろしくね」






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