▼ 2018/08/03 瑞希

アンドロイド真壁瑞希と過ごす日々

私のお父様は偉大なる研究者だ。日夜睡眠を削りながら、人のような人でないものを造り出している。その研究の成果の一つが、この目の前のものである。シミもそばかすもない真っ白な肌。林檎飴を舐めた後のような赤い唇と、瑞々しい樹々を映したかのような緑がかった黄色の瞳。じぃっと、その黄金比率で造られた顔を見つめていると、その2つの色だけが妙に目立つ。髪の薄紫は、どちらかといえば明度が低く、肌の白に溶けているように思えた。父が手を振りかざす。造られたガラス玉のような瞳がきゅるきゅると音を立てながら何重もの円の大きさが変わっていく。
「あなたは、だあれ?」
私がそう聞くと、彼女は何も言わない。むすりと、私は頬を膨らませようと思ったが、やめた。父が彼女の電源を入れようとしていたからだ。
「まだ瑞希には電源が入っていないんだよ。だから何も言わないんだ。ぽんこつじゃあないぞ」
「そうなんだ。瑞希ちゃんに、いつ電源入れるの?」
「うーん。一週間後って、ところかな」
「えええ、一週間も? 長いよ*」
ふわふわとした闇に溶ける雲のような人工の髪の毛を触る。指通りの良いそれは、作られたものだと思わせないようでもあるが、幻想的でこの世のものとは思えなかった。
「お話しできる日、待ってるね」

今日の分の課題を終わらせる。プラスとマイナスの計算は少し難しい。
「うん。合格。なまえは計算は好きか?」
「好き!頑張れば答えが解けるし、間違えがないから!」
「そうかそうか。お前はやっぱり俺の娘だな。きっと研究の楽しさを知ればのめり込むはずだよ」
「それより、瑞希ちゃんは?」
「ん? ああ、もう一週間経ったのか。約束したから、つけないとな」
「やったー!瑞希ちゃんとお話しできるんだね!」


「ねえ、瑞希。私、瑞希となら死んでも幸せだよ。瑞希と過ごした日々が幸せばかりだったから、側にいられるだけで、いいんだ」
「私もですよ、なまえ。あと三十年位は生きれるので、それまでは私ひとりでも綺麗になまえのことを看取れると思います。安心して眠ってください」
「うん。おやすみ、瑞希。また逢って、たくさん楽しいこと話して、たくさん美味しいもの食べようね」
「はい、おやすみなさい。きっと夢の中でまた、逢えますよ」
瑞希ちゃんは機械なので歳を取りませんが、博士が気を使わせてと言うか、人間として生かしているも同然なので、100年で機能が全て停止するように作ってあります。
医学は進歩しまくりだけど、機械がやると失敗するようなことが多かったし、なによりこの衰退している世界を長く生きようと思う人が居ないから基本的に人間の寿命は五十歳ぐらいかな。
瑞希さんは身体年齢が16歳です。


「今日はあなたが生まれてちょうど20年ですね。昔は成人と呼んで、この日を祝ったそうで、私もなまえの為にドレスを作ってみました。気に入ってもらえるといいのですが……」