慣れない事はするもんじゃない、わたしも、あなたも
時折、なぜ自分がこの騎空団にいるのかわからなくなる時がある。ここには何の理由もなく身を置く者もいれば、何か役割や使命を果たすために乗っている者もいるが、私にとってはそんなのはどうでもよかった。口封じと簡単に移動するという目的で乗っているけれども、最近はあまり泥棒としての活動はできていない。届く依頼の手紙はどれも自分の欲しか考えていないものばかりで、その文字を目で追うたびに、自分自身まで汚くなっていくように思えてしまう。
「あ、あの……キャサリンさん。大丈夫、ですか?」
「ああ、大丈夫よ。心配しなくても」
タイミングがいいのか悪いのか。この純粋無垢で汚れを知らない娘の笑顔を見ると、どうしようもなく自分が卑劣な盗人だということを思い知らされるから、そこまで得意ではない。好きか嫌いかで言えば、こうして悪に染まった泥棒へも平等に優しく接してくれるし、笑顔が可愛いから大好きだが。
「これ、お水です。ちょっとは気分が良くなる、かも」
「……ありがと」
ルリアに似ているようで、どちらかと言えば消極的な彼女はよく私にかまってくれる。別に、嬉しいとかそういうことを言っているわけじゃなくて、ただ人数の多いこの騎士団でどうして私に目を向けているのかがわからなかった。慣れ合うつもりなんて、ないもの。
「あんた、なんで私に構うわけ」
「め、迷惑でしたか……? キャサリンさんも、魔物の討伐などにお忙しいのに気遣えなくて申し訳ないです……」
「そういうこと、言ってるわけじゃなくて……純粋にどうしてなのかって思っただけよ。あんたの間抜けそうな笑顔見ると、帰ってきたって実感できるから、謙遜なんかしなくていいわ。その、泣きそうな顔されると、どうすればいいのか、わからなくなるじゃない……」
恥ずかしくなって、彼女の涙を拭うふりをする。泣きそうなだけなのに。
「その、ありがとう、ございます」
頬を染め、はにかみながら、私の手をふんわりと握ってくる。きっと私の顔も、赤くなっている。