祈るように君の涙を拭う、それはただの我が儘
私の幼馴染、星宮いちごはアイドルだ。スターライト学園に通う、トップアイドルだ。
ずっと前は、アイドルとか、芸能のこととか、全然知らなかったのに、いつの間にかてっぺんにいる。この数年間で、私達の間はどれくらい開いたのだろうか。
「いちごちゃん、おかえりなさい」
私が通う高校は、普通の公立高校だし、中学だって地元のに通学していた。学校が違うってことは、毎日会えるわけではないし、家に帰ってからもいちごちゃんはアイカツに疲れて眠ってしまうことがよくある。だから、こうして顔を合わせるのは久々な気がした。
「今度のいちごちゃんのライブのチケット、当たったんだよ。絶対行くからね」
「応募しててくれたんだ。言ってくれれば、関係者席のチケットもらってきたのに……」
人気アイドルのいちごちゃんのソロライブは、当選確率は極めて低くて、当たるのは幻とまで言われている。勉強とか、アルバイトとかで忙しくてなかなか予定も開かないし、なによりチケットが当たらなかったんだけど、今回のは運良く当選して、行けることになった。いちごちゃんの言うとおり、関係者席で見れるのかもしれないけど、自分で当てたチケットで観るほうが何倍も楽しくて、何倍も嬉しいのだ。
「大丈夫だから、自分で当てたほうが嬉しいし。今回も、会場大きいね。武道館でソロライブってのも、夢じゃないのかもね」
「そうだね。会場が広いと、お客さんがいっぱいいて、私も嬉しいんだ」
「……いちごちゃんってば、すごいなあ」
視界がぼやけてくる。学校に入る前は、蘭ちゃんとあおいちゃんといちごちゃんで一緒に仲良く過ごしてたのに。毎日が、あんなに輝いて見えたのに。今は、自分の周りには誰一人いなくて、ずっとずっと先にいちごちゃんたちの姿が見える。どうしてなんだろう。私も、スターライト学園に入ってアイドルになればよかったのかな。そうすれば、いちごちゃんの隣にずっといられたのかな。
*
うつむいて、すこしだけ肩を震わす。なまえちゃんはいつだってそうだ。泣いている姿を誰にも見られてくなくて、気づいてほしくなくて、強がる。その表情を、隠してしまう。
「なまえちゃん、どうしたの……なんで」
「ごめんね。いちごちゃんの前では泣かないって決めてたんだけどなあ……ただの、わがままなんだけど、聞いてくれる?」
わがままなんて、そんな。私は、なまえちゃんのことをもっと知りたい。隣にいれないぶんもっとわかっていたいのだ。
「聞くよ。なまえちゃんは、私が悩んでる時いつだって隣で話を聞いて、一緒に考えてくれたもん。私だって、なまえちゃんが困っているならなんとかしたい」
「ありがとう。すごく、嬉しいよ……でもね、私、いちごちゃんがどんどん遠くに行っちゃって、私の前から消えちゃうんじゃないのかなって、いつか置いて行っちゃうんじゃないのかなってずっと思ってて、その時が来るのがすごく怖くて……」
私も、本当は怖かった。なまえちゃんが、私のこ
とを忘れてしまうんじゃないのか、今まで歩んできた全ての物事を、思い出として閉じ込めてしまうんじゃないのか、そんなことを。私は、今だってなまえちゃんの幼馴染で、友達で、大好きな人だ。だから。
「そんなこと、絶対にしないよ。私は、いつだってなまえちゃんの近くにいる。もしも私がどこかに歩み出す時が来たとしても、なまえちゃんのことを置いて行ったりなんかしないよ……たいせつ、だから」
こぼれ落ちる涙を拭う。私の隣で、なまえちゃんが幸せでいてくれますようにと願った。私も、わがままだな、なんて思いながら。