市川雛菜さんにかき乱される
 最近になって、あの子から避けられていると感じることが増えた。なんというか、会ってくれるには会ってくれるけど、どこか上の空だし、あんまり楽しくなさそうだし、以前よりもずっと私に触れなくなった。
 あの子は高校3年生で、私は大学2回生。大学と高校で合うことは付き合い始めの3年前よりずいぶん少なくなったし、向こうは受験だってあるから連絡も控えている。そりゃ、マンネリ化っていうか、そういうのもあるかもしれないけど……
 実を言うと、今日はちょっとした用事で母校に訪れることになっていた。あの子には、何も言ってない。浮気とか、しそうな子じゃないけど、してないとは言い切れないし……やっぱり、何も言わずに来たのはやばいかな……な、なんか胃が痛くなってきた……
「ねぇ、先輩〜彼女さんいるって、本当なんですか〜?」
「ま、まあ……うん……」
 息を飲むって、まさにこのことなんだろうな。あの子の声と、かわいらしい女の子の声が聞こえてきた。え、なんかあの子デレデレしてない? てか今どきの高校生って外でふたりでお昼食べるのは付き合っていなくてもするものなの?
「ふ〜ん。何歳なんですか?」
「えっと、今年20才で大学2回生だよ」
「彼女さん大学生なんですね〜20才って高校生から見たらオバサンっぽいけど、話合うんですか〜?」
 お、おばさん……おばさん……そ、そっかあ……もう私おばさんなのか……
「わ、わかる? 結構年違くて、大学の話聞くのはまあ楽しんだけど、なまえさん他のやつと遊んでんじゃないのかなって。最近全然会ってくれないし」
 いやいや、君が受験生だから会うの控えていただけだよ! ていうか今の状況からして君のほうが他の子と遊んでんじゃん!
「雛菜、彼女さんのことよくわかんないけど、彼女さんも大学で楽しいこと見つけたから先輩と会わないんですかね〜?」
 思い出したけど今話してる相手の子、この前ストーリーにのってた子だよね? 受験の息抜きとか書いてたボウリングでめちゃくちゃ近くにいた女の子だよね?
 なんか、頭痛くなってきたな……なんかこんな木陰からストーカーみたいに見てるのも恥ずかしくなってきたし……用事、はやくすまして帰ろう……

 あの日から、あの子のインスタのストーリーから血眼になってあのふわふわしたはちみつみたいな女の子を見つけようとしたり、たまに会ってもあの時見せてたデレデレした顔を私には見せないから、気づいたら別れていた。あっけないもんだな〜

 とか考えてたんだけど。
「あの〜みょうじなまえさんであってますか〜?」
「え、えっと……そうですけど……」
 目の前に立つ、ふわふわ〜って感じの可愛い女の子。なんか、顔を見たことがあるような、ないような……
「わたし〜、市川雛菜って言いま〜す! 前に、みょうじさんの恋人とお付き合いしたことがあるんですけど〜、おぼえてますか〜?」
「ああ……あのときの……」
 言われてから思い出した。わ、私のことをおばさんって言ってた子だ……
「あは〜雛菜、もしかして有名人〜? っていうか〜雛菜はみょうじさんに聞きたいことがあってきたんですよ〜」
「そうなんだ」
「みょうじさんって〜雛菜よりも年上ですよね〜?」
「まあ、あなたよりはおばさんだよ」
「やは〜! みょうじさんもしかしてそういうの根に持つタイプですか〜? でもあの人とは別れたんで〜安心してくださ〜い」
 なんとなく、私に会いに来る時点で図太い子なのかなとは思ってたけど、普通にぶっこんでくるな……一体何のようで私なんかに会いに来たのか……
「それで、私になんの用事が?」
「雛菜ね〜みょうじさんに教えてほしいんですよ〜恋愛について〜」
「わ、わたしに……? なんで?」
「だって雛菜のまわりには〜みょうじさんみたいな大人の女性って感じの人〜全然いないんですよ〜もっと素敵な人としあわせ〜な恋がしてみたいんです〜! だから、おねがいしま〜す!」
 満面の笑み、みたいな表情をして私の手を掴むひなな、さん……。どうやら逃してはくれないみたいだ。みょうじ