(side By 獄寺)
「ん…?」
目が覚めると、自分の家ではないことに気づいた。そういえば、姉をみて気絶したか?ということはここは10代目の部屋だと、あたりを見渡す。だが、周りには人は居らずどうやらみんな下で集まっているようだ。迷惑をかけてしまったと自負しながら起き上がろうとした時、
「あ…?アホ女?」
「すーすー…」
隣に茶色がかった髪の毛が見えた。規則的な寝息はどうやらこいつかららしい。何してんだと思いながらも、叩き起こそうと身体を揺らす。
「おい、アホ女…起きろ」
「、ん…?」
「何寝てんだ、10代目の部屋だぞ?!」
「ツナの家…?、んー…すーすー」
「くそ、寝やがった…」
起きただろ、一瞬とつっこんだが、多分寝ぼけていたのだろう。起きる気配は全くない。くそ、と悪態をつきながらも、何故か近くにいるこいつを起こすのをためらってしまい、なかなか動けない。
「(なんか、こいつ…)」
よく見てみると、綺麗な顔立ちだ。日本人といえばそうなのだが、随分と見慣れてきたヨーロッパ系の顔にも見て取れる。10代目の幼なじみだからハーフとかそんなことはないだろうが、どことなく西洋の血を感じさせる顔だ。なんとなく、だが。
「…甘い匂いだな…」
多分発信源は目の前の女だろう。くらくらと甘い匂いが鼻をかすめる。どうしたことだと思いながら、その顔を見つめていた自分がいて、とっさに視線をそらす。
何やってんだ、俺。
「ん…?獄寺?」
「て、てめえ、!起きたのかよ」
「いつの間にか寝てた…。もう大丈夫なの?」
「んあ?ああ…。平気だぜ(やべ、顔見れねえ)」
「そう、よかった」
寝ぼけているのか、声が少しかすれている。ふにゃりとした笑みを浮かべて、下にみんながいるのかと言ってきた。なんだその笑顔。いつもみていた彼女とは幾分か違うように見えてしまうのは、2人っきりだからなのか。
「そ、そうだ。多分みんな下にいる」
「そう。じゃあわたしたちもいきましょう」
「お、おう」
「はあ…。頭使うと寝ちゃうわー」
むくり、と立ち上がる女。行かないの?と尋ねてくる女に何故か目が離せない。行くわぼけ、と口だけは健在に答えられるのだが。
「変なの…いこっ」
「お、おい…アホ女!」
「またアホ女…わたしの名前知らないの?わたしはねー…!」
「、なまえ」
「…え、?」
「(声にでた…?)」
「ま、ま、そうだけど。てか、知ってたんだ」
アホ女はびっくりしたようにこっちを見てきた。いや、俺だってびっくりだ。何故か口が滑って名前を呼んで、
「名前、し、知ってちゃ悪いかよ」
「え?いやー…別に、嬉しかった、けど」
「…(まじかよ)」
「てか、知ってるのなら名前で呼んでほしいなー?」
にやり、と笑って急にこちらに距離を縮めてきたアホ女改めなまえ。な、なんだよ!と焦ってしまえば、女は優位に立ったと思い、退こうとはしない。
「よろしく、獄寺は、や、と、くん」
してやった、みたいな顔をしてこちらにほくそ笑んで離れていったなまえ。なんてやつだ。と思いながらも、無駄に早まる鼓動の意味がわからない。
「ほら、いこう」
掴んだかと思えば進み出した女について行っている自分。なんなんだ、俺、何しているんだ。
「ちょ、ちょい離せ馬鹿おん…」
「誰のことかなー?」
「うっせ、お前離せや、」
「聞こえないですー」
「…くそ。おい、なまえ…」
仕方なしに名前を呼んだ。すると立ち止まって女はくるりと振り返る。なあに?獄寺くん。
「 ばかやろ。離せ」
本能的に、負けた、と思った。でも、認めれない自分は、むかついたので、頭を1発殴っておいた。
それでも鼓動のスピードは変わらないまま、おれは、何故か急ぎ歩きをするしかない。
4.5