ボンゴレファミリー10代目が発足して、10年後。
ダメツナと言われ続けた幼なじみのツナも今では立派なボスとなり、世界中のマフィアを牛耳っている。私たち守護者はというと、相変わらず騒がしい部分もあるが、みんな幾分と丸くなりファミリーとして上手くいっていると思う。
わたしは花の守護者としての任務を終え(大体潜入捜査)日本の大都市の中の閑静な森に佇む本部へと戻る。ひどく大きなその屋敷は、五年前に出来たまだ新しいものだ。2週間ぶりの本部はみんな出払っているのか、人のいる気配がない。とりあえず部屋にいこうと足を進めるが、ぐうっと鳴るお腹の意思に沿い、ダイニングに向かうことにした。
「ただいまー…、」
「お、なまえ帰ったのか」
「あ、獄寺。ただいま。」
「なんか長い出張だったな。で、どうだった任務は」
「そりゃあもう完璧よ」
「はっ、だろうな」
10年間で一番丸くなったのは目の前の彼だろうと思う。ギラギラとしていた中学時代に比べ、協調性があるのだ。一匹狼で孤独だった昔の影は形を潜め、ツナの右腕として守護者も纏める立派な人物になった。
「みんな今いないの?」
「みてえだな。俺も朝帰ってきたばっかりでわかんねえけど、了平とボスはイタリアで、山本はランボとスクアーロのとこに修行とか言ってたな。クロームは骸とでかけてるらしいし、雲雀は相変わらずだ」
「ふうん…まあ、そうよね」
「けっ、相変わらずうちのファミリーは自由だぜ」
ツナと笹川先輩はイタリアだったなら、わたしと会ってもおかしくなかったのになあ、と思いながら冷蔵庫に入った誰かのプリンを食べる。ランボと大きく書いてあるが気にすることはなく、ぱくっと平らげる。んー、やっぱり日本の食べ物が一番だ。海外任務が多いこの仕事で感じるようになったのはこんなことだろうか。
「獄寺は何してたの?」
「俺か?俺はーあれだ、ディーノのところに例のマフィアのブラックリスト持って行った帰りだ」
「え、じゃあ獄寺もイタリアいたの?」
「まあ、そうなるわな」
煙草を咥えてそういう獄寺は、10年間の間に少し大人の余裕を纏うようになった。まあ、10年前から煙草をやっていたのだが、飾りに見えたあの時よりも、煙草を嗜む姿は随分と様になった。ような気がする。
「ん、なんだ?そんなに見て」
「いやあ…、なんか大人になったなあって」
「は?なんだそれ」
「うん。なんか、煙草の姿に貫禄で始めてる」
「いいことじゃねえか、」
「そうだね。なんかね、色気でたね」
「…ほう。そうか?」
一瞬間が空いたような気がしたのは気の所為だろうか。机を挟んでにやり、と笑った彼を見逃すことはなく、なんなんだと思いながら最後の一口を食べて、足早に去ろうと片付ける。…なんだか嫌な予感がする、
「じゃあわたしも部屋に戻、」
「ちょっと待て」
「…ん?どうかした、かな」
振り返ると離れていたはずの距離は一瞬で縮んでおり、目の前に端正な彼の顔があった。煙草はいつの間にか消したらしい。煙たさを纏わせたまま、ぐっと距離を詰められる。
「お前も変わったな」
「そう?」
「ああ。随分と大胆になったし、」
女になった。
耳元で囁いた獄寺に、身体に熱が灯る。平然を装って、元から女よ?なんて言ったところで、彼につけてしまった火は消えないらしく、足の間にぐっと足を入れられ、顔の隣には獄寺の腕、後ろには壁。逃げ場なんてないぜ?と言われたようだった。
「わたし、今帰ったとこ」
「ああ。知ってるぜ」
「寝たいなあー…とか、思ってますが」
「それは、…聞こえねー」
ふわり、と綺麗な銀色をした髪の毛が顔を撫で、刹那、唇と唇が埋まる。煙草の味のキスは大抵、彼のキス。
「っは…。ん、なんだこれ?」
「え?あ、首の?任務中につけられちゃった」
「…邪魔だな、」
首筋に付いた赤い痣を指でそっと摩ったと思った瞬間、ぴりっとした痛みが走る。ちゅ、っという効果音が、羞恥心を駆り立てる。
「…他は?」
「え、も、もうないと思」
「無いなら、部屋いくぞ」
「ち、ちょ」
「あったら、今すぐ風呂で消毒だ」
それって拒否権ない?と訪ねたとこで彼の気持ちをリセットできる術はなく、引かれる腕を解けないままされるがままに廊下を歩く。この方向だと、私の部屋だろうか
「なまえ、」
「なに?」
「 お か え り 」
ああ、さようならわたしの昼下がり。
女は毒を制す