------after 7 months,




秋のような風だと思った。頬を撫で癒すようにして身体をすり抜ける風は、一時の苦慮を消し去るのには十分だと感じる。

「悠一、やっぱりむくんでる」
「うるせ」
「だから早く寝ようって言ったのに」
「でも身体はスッキリしてる」
「そういうことじゃなくて」
「まあいいじゃないの、」

スタジオに向かう二つの影は寄り添い合っていて、なんだか間抜けなカップルのようだ。それでも黒いジャケットに手を掛けながら、わたしは悠一と名前を呼ぶ。

「たつそのバッグわたしの」
「え?…わまじだ」
「急ぐから間違えるんだよ」
「すみませーん」

懐かしい後ろの声には、もう振り向かなかった。きっと順調なのだろうとその声を聞くに思う。お似合いなものをお互い隣にして歩いている。もうきっと彼女と私が交わることは、無い。

「暑苦しいそう、これ」
「え、なんで」
「だってまだ秋よ?冬じゃない」
「いやでも愛人が選んだから、」
「冬に着てくれることを考えて買ったのよ。今着てほしいわけじゃない」
「…それ早く言って」
「まあ、嬉しいのよ?」
「うそツンデレだったのそれ」

誰だって、自分が一番になれる幸せの価値を知っている。選ばれた喜びを何時までも自分の所に取っておいて、大事に育んでいるのだ。やがて落ち着いたそれらは、私を暖かく包んで、一つの血潮になる。

「…あの人、」
「…?」
「なんだか変わったね。幸せそう」
「そ、だな」

足枷になる人生なんて、まっぴらごめんだ。太陽の下にも月の下にも私は堂々と生きていく。それは、あなたに出会えて漸く叶うものだった。

「愛人、」
「ん?」
「結婚しようか」
「へ、」

落ちるなら、どこまでも。私はあなたに身を委ねたまま、深く深く下っていくのだ。


Our greatest glory is not in never falling, but in rising every time we fall.


落下。

17/05/22 fin.


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