私と達央の出会いは、そういえばタバコだった。

「…あ」
「、どおも」
「お疲れさまです」

まだ鈴木さんと呼んでいた時。喫煙所でさっきまで仕事をしていた人と再会するのは少し気まずかった。ぎこちなく社交辞令を交わして、早く切れてくれと煙草を強く吸い込んだ。

「煙草、吸うんすね」
「あ、はい」
「アメスピ?」
「いや、アイブラです」
「ふうん」

この時から、人と距離を詰めるのが彼は上手くて、結局、私はそれにまんまとハマってしまったのだと思う。一度話してみたかった、と言って隣に来たあなたは一瞬で私を捕まえて、帰りたい思っていたところをすぐに打ち崩してしまった。近くで見ても整った顔だと思ってみとれていた頃に、あなたは視線を合わせてやらしく笑う。

「綺麗ですね」
「そうですか?」
「うん、タイプ」
「え、」

携帯につけている可愛いストラップはきっと彼女と交換したものであろうに、あなたは私に近づいた。外から見えない所で手を重ねられていた。目と目が合ったまま、彼の大きい目に吸い込まれそうで、その状況に既に私は興奮していたように思う。

「この後、会わない?」
「この後ですか」
「うん」
「それは」
「二人で。どう」
「…いいですよ」
「だと思った、」

その時、廊下に人が通らない時間帯を知っていてあなたは私にキスをした。重なる手も唇もとても熱っぽくて、私はもう何も知らないふりをして。

「、彼女は?」
「…知りたい?」
「いや、いい」

彼の香水にやっと鼻が慣れた頃、私はあなたの唇の味を知ってしまった。お互いタバコ臭かったけれど、それさえも相まって、私はもっとあなたを知りたくなった。先に達央が出ていってしまって後からブースに戻ると、いつもと変わらず共演者と仲良く話す達央がいて心はもうざわざわしていた。いけない道を進んでいることとか、もう染まりかけた心とか、全てが

「本番いきまーす」
「はーい」

あなたのものになりそうだと悟ったから。
心臓がどきどきと脈打って、あなたしかもう見ていなかったから。


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