2022/04/02(Sat)

あいおに

4/1だったなぁというだけ
「俺嘘とか下手くそだし、なんていうかその、言うこと全部嘘に聞かれちゃうのかと思うと下手なこと言えないからさ。なんかこの日って少し苦手で」

カレンダーを見ながらいつになく深刻そうな顔を浮かべていた相方が、暗がりの中示す秒針が0を回ったところで隣で胸をなでおろす姿にどうしたのかと問うと頬をかきながらぽつぽつとそう呟いた。
すでに日付は先程翌日となっていたが、カレンダーを見てみるとそういえばそんな日もあったかと今更に気がついた。

「オマエに言われて気がついたな」
「うんまぁ、俺もそんなイベント事とかはあんまり気にしないんだけど、昨日のはちょっと気になって」
「いつになく大人しいからまた腹でも壊したのかと思ったが」
「いつも騒がしいみたいに言うなよなっ」
「…確かに、オマエの嘘はわかりやすいな」
「言っとくけど、俺だってオマエがなんか隠そうとして話すとき、ちょっとわかるからな」

嘘を吐く事自体あまりした自覚はないのだが感情が表に出ないとよく言われる為多少はつき通せているのかと思っていたところに不意に出た言葉に首を傾げると暗がりでも頬を赤く染めているのがわかる。

「長い付き合いだし、多少はオマエのこと見てればわかる」
「その割には言い吃るのか」
「だって、オマエばっかみてるみたいで恥ずかしいじゃん」

それなりの年数を共にしている相方の反応は相変わらずでそれが根本的な彼らしさだと言う事はとっくに理解している。体が先行して後からくる愛おしさに気がつけば軋むソファの音ともに彼のうぎゃっと場違いな悲鳴を聞きながら柔い肌を押し倒していた。

「…俺はオマエばかり見ている」
「…知ってる」
「そこは照れないのか」
「その、やたら目が合うなって、ちょうど最近気づいたんだよな」
「なら俺が昨日やたら素っ気ないオマエに送っていた視線の意味もわかるか」
「え、そうだったの?」
「これから存分に教えてやる」
「お、俺そろそろ眠いですっ」
「俺は安心できるまで眠れない」

今のは揶揄っているだろうと避難の声も受け流し言葉とは裏腹に然程抵抗を示さない相方の赤いまま色づく頬に口づけた。


ss
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