memo
2022/04/01(Fri)
ヨリマゴ
ヨリマゴ
「別に、いやなら、いいんだけどさ」
最初言われたときはあまりにも唐突で思わず何でだって聞き返してしまった。聞き返すべきではなかったと撤回しようにもそれはあまりにも遅すぎた。これ以上の失態があるのか、あの幼馴染のことだ。きっとその言葉を言うまでに葛藤があったに違いない。
怒るでもなくしかしどこか寂しげに一瞬だけ見えた灰色の瞳がすっと逸らされて何でもないと逃げていくのを耐えれるわけもなく無意識に細いその腕を掴んでいた。
「なに」
「なにって、気になるだろ。何しようとしたんだよ」
「いいよ、別に改まるようなことでもなかったし」
「俺はそれをしてほしーの!ヤダヤダヤダ」
調子に乗るなといつものようにあしらわれるかと思ったが数秒の沈黙のあとそろりと目の前で両手を広げおずおずとこちらを見る幼馴染にまたしても気がつけば自身より背の高い彼を抱きしめずにはいられなかった。
「はぁ…もう、リンよりよっぽど子供だよな」
「子供でもいいんだよこうできるならな」
「うーん、うん…まあ、これがしたかったから、いいのか」
「これ?」
身長差的に見上げる形となった彼はそろりと視線は合わせないがほんのりと赤らんでいるのが白い肌もありより一層色濃く滲んでいて垣間見た瞬間に自身の胸の奥がぶわりと何かが襲う。
「なんていうか、あるだろ、たまには、その、そういうの」
「…っマゴ」
愛おしい。それ以外何か言葉で言えるのか。言葉すら無粋に感じてたまらずに胸の高鳴りのあるがままに抱きしめる力を強め背伸びをしてそのかさついた唇と自身の唇を重ねるとひくりと震えるが抵抗する素振りはない。
唇の端から舌先を這わせてそっと舌先を滑り込ませるとひたりと肉が擦れ合う。つるりとした感触と唇の隙間から漏れていく互いの熱のこもっていく息とぬらついた水音がもっともっとと欲を掻き立てていく。
「はっ、ぁ…!こ、こまでするとは、言ってない…っ!」
「言ってないだけで、ほんとはどうしたいんだろ?」
ここでやめるのか?と問いながら己自身もそれは勘弁願いたいと思ってはいるが目の前の幼馴染も瞳が色濃く濡れているのを確信しているので、挑発をするようにべろりと舌を出すとコクリと喉が鳴った。
「シ、シたいから、布団、いこ」
ぽつりぽつり、こぼすその言葉ひとつひとつが爆弾発言なのをいつになったら自覚をするのか。もはや忍耐という概念が消失しつつあるのを必死に抑えあまりにも愛おしすぎる恋人を抱き上げて早々に暗がりへと向かうのだった。