12.痕跡




『今改札出たよ』

握り締めたスマホが震え、彼女の到着を知らせるメッセージを知らせた。


度の入っていないレンズの向こう、駅の出入り口に目を向ける。もうすぐ、彼女がやってくる。
人の波に流されないように、「翠君は、背が高いからすぐ見つけられるよ」なんて言いながら。


そういえば、このマフラーも、伊達メガネも、帽子も、手袋も、彼女が選んだ物だ。
ニヤけてしまいそうになる口元を、マフラーに埋めた。


「おまたせ、翠君。やっぱり背が高いと見つけやすいね」

「人を目印みたいに言わないで下さいよ」


目の前に立つ名前先輩の、帽子も、マフラーも、ピアスも、全部緑色で、せっかく隠したニヤけがまた出そうになる。


「行きたいところ、ある?」

「いえ、名前先輩の行きたいところで」


平静を装って手を繋ぐ。

今日はあなたのどこを俺色に染めようか。