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・天道幼馴染主 ステージで堂々と踊る姿に、心にまで直接届く歌声に、きらきらの笑顔に、今まで見たことのない夢を魅せられたかのようだった。 「すっごい良かった!もう、超感動した〜っ!」 隣で興奮した様子でライブの感想を延々と語る友人の声が、私の耳を通り抜けていく。あの景色が、消えない。会場を出て、しばらくした今でも、心臓が熱く、燃えている。 「ねえなまえ!聞いてる?」 「……うん、聞いてる」 「聞いてないんじゃんも〜なにそれ!顔赤いよ、もしかして惚れちゃった?」 「惚れ……」 「あたしはもうとっくに惚れてるってー!ドラスタ最高だよーっ」 きゃーと騒ぐ彼女はさながら恋する乙女のような瞳で、空を見つめていた。どこまでも、高く、広い、あの空へ。輝く星は、私が手を伸ばしても届かない場所にある。 目が合ったかも、なんてライブ中にステージを見つめる誰もが考えそうなことで……でも、確かに。 「なまえはこっちだよね。私は向こうだから!」 「あ、うん。今日は、その……」 「なまえを誘って良かったよ!あんまりアイドルとか興味ないかなって思ってたんだけど、すっごく楽しんでくれたみたいだし!今も、興奮冷めない〜って感じで、あたしちょっとビックリしてる!」 「え……?」 「じゃ!あとでLINEするね〜!」 友人の遠ざかっていく背中を見送り、私はその場で立ち尽くしていた。全然、表に出さないようにって冷静なフリ、できているつもりだったんだけど。 バレバレだった。興奮冷めない、ほんと、熱くて、熱くて、心臓溶けちゃうかも。なんて。ありえないけど、もしかしたらって思っちゃうくらい。 その日は、家に帰ってもなかなか眠れなかった。 ライブの翌日、休日で良かったと心から思った。すっかり寝過ごしてしまって、時計は正午前を指していた。 友人から大量のLINE通知が来ているのを確認して、昨日はありがとうと返しておいた。ライブの直後も、別れるときもすっかり抜け殻状態で、何も言えず仕舞だったので、感謝の言葉は伝えておかないと。 外出する準備をして、家を飛び出した。じっとしては、居られなかった。 社会人になって何年目だろう。一人暮らしをはじめて、慣れるのには時間がかかった。仕事をはじめてから、最初の年なんかは自分のいる環境に慣れるのに必死で、今でこそ日々を楽しむ余裕が出来てきてーー 同級生に会うことは、たまにあったり。でも、そう、幼馴染の輝くんにはずいぶん会っていなくて。幼い頃からヒーローに憧れていた輝くんが、弁護士を目指していたことは知っていて、でも、いつのまにかアイドルになっていたことは知らなくて。 会わないうちに、人って変わるんだなぁ。 テレビではじめてよく見知ったその顔を、その声を聞いた時、私はそんなことを思った。 けれど、ライブで輝くんを見て、その考えは少し変わった。 遠い存在にはなってしまったが……彼の根本は、何も変わっていないと確信したのだ。 休日を利用して、懐かしい故郷へ帰ってきてしまった。それも、昨日のライブのことがあったからだ。 思い出に浸るなんて、こんな年になってまで……って少しむず痒くなるけど、今しか来れないと思ったから。後で、実家にも寄っていこう。そんなことを思いながら昔馴染みの道を歩いていると、私の足が向く方向から、足早にこちらへ向かってくる男がいた。帽子を深々と被っていて、見るからに怪しい。 「なまえ!」 あ、れ。 その声が、私の鼓膜を震わせる。先日聞いた音と同じはずなのに、それはとても懐かしい響きで。 男は私の目の前まで来ると、私の両手を包み込むように握って、絞り出すような声で「会いたかった……」などと言う。 夢のような、現実が目の前にはあった。 「てる、くん」 「おう」 「輝くん……?」 「なんで疑問形なんだよ。俺だよ、その、昨日もちゃんと……見た、だろ」 顔、忘れちまったのかよ。 と少し不安げな顔で私を見る彼と、今やっと目があった。本物だ。 「忘れるわけないよ」 やっぱり、輝くんは変わっていなかった。 「なあなまえ、俺……お前に話したいことがたくさんあるんだ」 彼はそう言って笑う。その笑顔は、私の知ってる輝くんのそれよりもずっとずっとキラキラ輝いてみえた。 2016.07.13 |