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今日の収録が無事に終わり、プロデューサーである私は、もふもふえんの3人を送り届けることになった。 後部座席には直央くんと志狼くん、私の隣…助手席にはかのんくんが座っている。 3人とも、今日の収録が上手くいったことを素直に喜んだり、反省するべきところを話したりしているのが…なんというか、微笑ましい。 道が渋滞して、家に着くまでもう少しかかるかもしれない。 そう告げてから数分後、車内は静まり返っていた。信号にかかった隙に3人の寝顔を盗み見て、頬を緩ませる。ぐっすり眠る姿は、起きている時の彼らとはまた違った愛らしさがある。 「んん、……プロデューサー、さん?」 「おはよう、かのんくん」 最初に起きたのは、かのんくんだった。 あと10分もあれば、うちにみんなを送り届けられるだろうというところだ。そろそろ3人を起こそうと思っていたけれど、あまりにも気持ちよさそうに寝ているから私から起こすのはちょっと悪い気がしていた。それでも、疲れた3人には早くお家でリラックスして休んでもらいたい気持ちの方が大きいので、ギリギリまで待って起こそうと思っていたが。 「もうすぐお家に着くからね。もうすこしだけ、眠っていていいよ」 「だいじょうぶ。かのん、プロデューサーさんとお話する…」 寝ぼけ目のかのんくんが私の方をみてにっこりと笑っている。……のが、横目に見える。運転中だからしっかり見ることができず、無念…! 「プロデューサーさん、かのんね、夢をみたんだ…!」 「どんな夢だったの?」 その声色から、よほど嬉しいことがあったのだと分かる。 「プロデューサーさんが、いっぱい、いっぱい、かのんのこと褒めてくれたんだ〜」 夢の中のプロデューサーが、かのんくんをいっぱい褒めたのか。そっか〜。 ……って、あれ。何か、期待の眼差しを感じる。 なんというか、私はもふもふえんの3人のことは事務所のどのアイドルよりも甘やかして、褒め倒してきた自信がある。それは、まだ小学生の彼らだからということもあるが…それ以上に、幼いながらにプロとしてしっかりとした意識を持って仕事に真剣に取り組む彼らが愛しくてたまらないからで。他のアイドルに比べて彼らを甘やかす回数は確実に多く、贔屓か?と言われたらもはや否定できないレベルである。……というくらい、褒めて、いる。褒めている自信がある、と言ったらおかしいけれど。 「今日もよく頑張ったね!」 「うん。プロデューサーさんに頑張ったねって言われるの、かのん大好き!でもね……」 夢の中のプロデューサーさんは、頑張ったねって言ってちゅーしてくれたんだぁ。 かのんくんが私の横でにっこり笑っている。 ……待って。待って、夢の中のプロデューサーなにやってるの。 かのんくんの期待の眼差しが私に刺さる。 ちゅーはアウト?ちゅーはセーフ? そんなことが頭の中をぐるぐる駆け巡る。これ犯罪にならないかな、夢の中のプロデューサー、夢の中の私。 「おねがい、なまえさん」 ぴと、と小さな手が私の膝に乗せられる。 いつもはプロデューサーさんと呼ぶかのんくんが急に名前を呼んできたことにびっくりしつつ、大人として、プロデューサーとして冷静に、冷静に―― 「う、運転中だからじっとしててくださいかのんサン」 「ふふ。プロデューサーちゃんのお顔、りんごみたい!」 将来、かのんくんがどんな大人になってしまうのか心配になったプロデューサーです。その後、車が止まってからも「ちゅー」を要求されたが、頭をなでなですることで今日のところは許された。 ちゅーはアウトですか、セーフですか。い、いやでも、待って。…………今度ちょっと誰かに相談しよう。 2016.07.15 |