青峰大輝の場合

fetishism
─ おっぱいフェチ ─


 私 ミョウジナマエの彼氏 青峰大輝は自他ともに認めるおっぱい星人だ。今思えば彼が告白したのも「(私のおっぱいが)好きだ」という意味だったなのかもしれない。それを尋ねられるほど私には度胸も勇気も覚悟もない。
 けれど、やっぱりこういう所を見るとどうしても"そう"なんだなぁ…と思ってしまう。

「好きだ」
「私の目を見てそういう事は言いなよ」

 私のとても高校生とは思えないほどの豊満なバストに顔を埋める青峰くん。うっとりとした、恍惚とした声音で言うものだから、表情も見たいと思った。だって、それが私に向けられたものなら私はそれだけで満たされるのだから。でも今のままだと不安が広がるまま。
 だけど今の青峰くんはあの凶悪な表情ではなく、声と同じように蕩けきって年相応、もしくは少し幼いのだろう。ソファに座る私の足を開かせて、床に膝をついて足の間に収まる青峰くん。そのままおっぱいにダイブしてぎゅうっと私を抱きしめて、私に甘えている。
 私に甘えているというのは事実で、それだけで私は満たされてしまう。いとも簡単に絆されてしまう私に、私の冷静な部分がそれで良いのかと問うけれど、良いんだと思ってしまう適当な私が居る。
 出来心で青峰くんの背中をぽんぽん、母親が子供をあやすように軽く叩いてみる。すると「んー…」と甘えた声を出して青峰くんは首を左右に振りながらもっと胸に顔を埋める。あ、なんか可愛い。
 手を上へ移動させて、青峰くんのうなじから髪を逆撫でするように手を入れる。青峰くんの髪は少し固いけれど、短いから全然痛んでいない。そういえば最近枝毛が酷くなって来たかもしれない。そろそろ髪を切ろうかな。
 今度の青峰くんは無反応だった。ちょっとイラついて私は手に力を込めて青峰くんの顔を胸に押し付ける。びっくりしたらしい彼が慌てて離れようとする。いっそこのまま窒息死してしまえと私は青峰くんの頭をホールドしてもっと押し付ける。

「んー!!んー!!」
「ははー、私のおっぱいはどう?」

 そろそろ本気で死ぬかな、と思って腕を放す。ぷはぁ!と大げさに息を吐いて大げさに吸い込む。青峰くんはガングr…地黒だから分かりにくいが、なんとなく顔が赤い。まあ、息を止めていたら誰でもそうなるか、と思った。

「どうでした?」
「苦しいわ。死ぬかと思った」
「本望なんじゃないの?」
「…んなわけねぇよ」
「私のおっぱい好き?」
「おう」
「きもちい?」
「おう」

 こういう時の青峰くんはとても素直だ。初めこそ不機嫌そうな顔をしていたけれど、多分そんなに腹を立てていたわけではないのだろう。凶悪さを潜めて熱い視線を私の谷間に向ける。

「触る?」
「えっ」
「何期待した顔してんの。触らせる訳ないでしょ」

 野生というか野獣というか、本能に忠実な所のある青峰くん。触らせてしまったらそのまま最後まで行ってしまいそうで怖かった。甘えてくるのは許せるけど、身体 しかも貴重なヴァージンを許してしまうほど私は絆されていない。だからお触り禁止令を出していた。
 遊びで解禁令をチラつかせてみれば、分かりやすく顔を輝かせる。パァア…って効果音が似合う。プレゼントを貰った子供か。まあ、それに近くはあるけれど。身の危険を感じて突き放せば、青峰くんは今度こそ不機嫌になって顔を背ける。

「ねえ、私がぺったんこでも好きになってくれた?」
「さあな。でも、多分ないんじゃないか?」

 「私のこと好き?」そう言う事は憚れた。だって、重い女子の代表格なセリフじゃないか。それに、それを言っても青峰くんは「ああ、(おっぱいが)好きだ」くらい簡単に返してしまうだろう。だから言い換えたけれど、その返答も予想は容易だ。それで案の定そう返してくるんだもの。本当に読みやすい男だ。

「じゃあ、おっぱい含めて私の事すき?」
「おっぱいあるナマエが好きだけど、ナマエのことが好きだ」
「日本語が変」
「あー?めんどくせぇな。だから、おっぱいのあるナマエを好きになったけど、今はちゃんとナマエが好きだ」

 青峰くんは普段鈍感だけど、たまに物凄く鋭くなる。今だってそう。私の質問の意図を察してしまう。普段は馬鹿だから絶対に分からないくせに。だけど珍しくちゃんと好きだと言ってくれたし、その言葉の証拠の裏付けだってされている。目を見て言ったのは褒めてあげる。でもその後顔(分かりにくいけど)真っ赤にして反らすのは反則。
 私は青峰くんの頭を胸に抱き寄せる。ぽよんと頭が胸に当たって、少し跳ね返って、また胸に落ち着く。首を下に向けて、青峰くんの耳の近くで、「私も青峰くんが好きだよ」って出来る限り甘い声で囁いてあげれば、青峰くんは私のおっぱいに顔を埋めてうめき声を漏らす。青峰くんの顔が熱かった。
 結局の所、私は青峰くんが好きで、絆されてしまうらしい。こんな可愛い所だって、私のおっぱいにだけ向けてれば良いよ。
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