※ピッコロさんのお家の玄関から向かって真正面の扉の先が浴室だと仮定して書いてます。そうであってくれ。頼む。後生だから。


「ピッコロさ〜ん!こんにちは〜」
 日も十分に昇ったころ、私はピッコロさんの家を尋ねた。いわゆるお家デートである。手土産のおいしいお水、喜んでくれるだろうか。この家にはインターホンがない。なので扉を2回ノックして返事のないまま玄関をあけた。いつもそうしているから。それがまずかった。
「お邪魔しま〜す」
 私が玄関を開けるのと同時に、ピッコロさんが部屋の奥にある浴室からでてきたのだ。全裸で。
「ム、すまん来てた――」
「エッッッ!?ワッ!?すいません間違えました!!」
 自分でも驚くほどの速さで踵を返し、開けたばかりの扉を閉め、それを背にしてうずくまった。まってやばい裸みちゃった、初めて、ピッコロさんの、全裸。うわラッキー、いや違うくて、そうじゃなくてちゃんと謝らないと。間違えましたってなにが?なぜ全裸で?なにやば、胸でっっっっか、腰ほっっっそかった……ていうか、生え、生えて、ついて、なかったぁぁ……そうやってぐちゃぐちゃの感情のまま、脳内でついさっき見た光景を反芻しているうちに、ゆっくりと室内から扉が開かれた。
「待たせたな、ん?どうした顔が赤いぞ」
「ひ……いえ、なんでもないです……」
 ピッコロさんはもうすっかり道着に着替えていた。ターバンとマントは着ていなかったが。頼むから着てくれ!乳が丸見えだ!「とにかく入れ」と促され、おずおずと室内へとお邪魔する。この人には恥じらいというものがないのか?ないか。あったらもっと騒いでいる、というか恥じらいがあったら全裸で風呂場からでてこないか。恥じらいがあるない関わらず、事故であろうと許可もなしに勝手に裸体を見てしまったのはよくないことなので、もう一度ちゃんと謝ろう。
「あの、すいませんでした。裸見ちゃって」
「ああ、別に構わん」
 構わん?!私は構うが?!そんなことかとでも言うように、ピッコロさんは気にしていない様子だった。それよりももう、私の持ってきたおいしいお水に興味津々のようであった。
「これは……パオズ山の水か?」
「えへ、お口に合うといいんですけど」
 駄目だ、乳にしか目がいかない。助けてくれ。勝手に視線が誘導される。今までピッコロさんのことを性的な目でみたことなんてないとは言い切れないが、これまで純なお付き合いを続けてきたというのに。たった一回のラッキースケベでここまで心乱されるとは。いまだ心臓はバクバクとやかましいままだが、何はともあれどきどきわくわくお家デートスタートである。


 元々この家には人間が暮らしていくための設備がほとんどない。なので椅子やら鍋やら、必要最低限の生活用品を持ち込ませてもらっている。自分だけの紅茶を淹れ、持ち込んだ椅子に座りなんとか一息つく。まぁ、視線は豊満すぎる乳に吸い寄せられているわけだが。いつもなら楽しくて仕方がない会話にも、まったく集中できない。しばらく他愛のない世間話をしていたが、話の途中であるのにおもむろにピッコロさんが立ち上がり、私の前にしゃがみこんだ。何事?
「普段なら視線が合っていない時間がないほど見つめてくるが」
 そう言いながら、下から覗き込まれる。上からのアングルの谷間やっっっっっば!!
「今日はまったく視線が合わん。一体どこをみて――」
 ハッとしてこいつまさか、といった顔をされ、私の顔とピッコロさんの乳とを彼の視線が行き来する。最悪だ。乳しか見てないことがバレた。だって道着の前開きすぎてるし……
「さっきから様子がおかしいと思えば、まさか……」
 ああ、めちゃくちゃ怒られるか?それとも別れを告げられる?乳しかみてない恋人なんかいやだもんな……考えうる限りで最悪の別れ方だな。
「見たいのか?」
「みた、えっ?なんですって?」
 一体なにが起こっているんだ、私の身に。みた、見たいのか?なにを!?裸を?いいの?いやだめでしょ。なんだその急なビッチムーブは。これ以上惑わすのはやめてくれ。見てどうするんだ。見たその先は?先って何?あるのか?この先に展開が。エッチなのはいけないと思います。いやでも鴨がネギ背負ってスピード超過のままこっちにぶつかってきたようなものだし。過失は100相手にあるでしょ。多分。
「オレの裸がみたいのかと聞いたんだ」
「みた……みてみ、ぃいや、だめいやいやいや」
「どっちなんだ」
 なんということだ。私はただ純粋に会いに来ただけだというのに。小指の先ほどの理性で何とか耐えている。そういうこともできることなら、したくないわけではないが待ってくれ。ここで肯定したらふしだらな女確定だぞ。もしやあるのか、ナメック星人にも性欲が?繁殖行為を必要としないのに?まってこれってもしかして、誘われてる……ってコト?!乗るしかないのか?このビッグウェーブに!!
「うぁ……み、見たい、です」
 言った。言ってしまった。ふしだらな女確定である。恥ずかしさのあまりぎゅっと目を瞑って返事を待つ。けどしょうがない。誘ってきたのはあっちだし。逆に良くもった方だと思う。自身の健闘を称えたい。恋人からの誘惑によく耐えましたで賞大賞受賞である。
 目線よりも下からフン、と鼻で笑う音が聞こえた。ふと彼の顔をみやると、ふたつの黒玉がゆるりと蕩け、形の良い唇は弧を描く。思ってもみないその表情に、心臓を鷲掴みにされた。
「スケベめ」
 今日が私の命日かもしれん。南無仏。

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