めも





「舞台裏の話」から本編や番外編についての設定解釈云々の小話を読めます。

最新話までのネタバレ多いです。

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▽2019/08/18(Sun)
無題
昨日呟いていた擬似トリップの冒頭を追記につけました。
連載までするかはちょっとまだ考え中ですねぇ、どうしよっかな
本編おろそかにしたくない気持ちと…書きたい気持ちと…
書き方をかえて1人称視点で書いて見ることにしました
書けることと書けないこととあって面白いですね〜

 2羽、茜色に染まる空を仲のよさそうに鳶が舞うように飛んでいた。羨ましかった。自由に、どこまでも飛んでいくのだろうとその軌跡をぼんやり眺める。

「…何処に行くのかなぁ」

「そら寝床やろ」

 独り言に何故か返事が返ってきて振り向くと、見たことのない髪色の男の人が立っていた。黒い着物に真っ白な羽織、それから目を引く派手な長い長い金色の髪。眉を顰めてこちらを随分と不機嫌そうに睨んでいた。

「…えーっと、なんだっけ。外人さん?めりけん、だっけ」

「は?」

 男の人は首を傾げてこちらを見る。綺麗な髪が風になびいて、収穫前の田園風景を思い出した。外人さん、と言ったけれど顔はどう見ても日本人。そういえば、最近は外人さんと結婚している人もいるんだっけ。

「オマエ誰や。此処、オレんちの庭なんやけど」

「おじゃましてます…?」

 そういえばここはどこだろう。辺りを見回してみると、白い小さな花がたくさん咲いていた。風がぴゅるりと吹いて、ほんの少し寒い。自分の服を見ると寝巻きのままで、あぁこれはもしかすると、死んだのかもしれないと思う。

「おーい」

 だって気が付けば見知らぬ場所で、見知らぬ人の家にいるのだから。そういえば身体のどこも痛くないし、気怠さもない。お腹の奥がむずむずするような、久しぶりに感じるこの感覚は、あれだ。

「おなかすいた…」

 自分の腕を見ると見事に痩せ細っていて不健康の例に出すには持ってこいって見せびらかせそう。まぁずっと寝ずっぱだったし、仕方ないかな、なんて。あれ、なんだか自分のことあんまりよく覚えてないぞ…まぁいいか。

「死んだのかなぁ」

「知らんやん」

 また独り言に返事が返ってきて、そういえば外人さんがいるんだったと思い出した。

「此処、どこ?」

「オレんちの庭言うたやん。不法侵入やぞ。オレの方がオマエ誰やねん言う話やっちゅーのに」

「…っくしゅ」

 また風が吹いて、薄手の寝間着じゃあ何も守ってくれない。身をさするように縮こませると、外人さんは大きなため息をついた。

「この時期にそないな薄着で寒いに決まっとるやろ、アホ」

 白い羽織を脱ぐと、汚したらあかんで、と言いながら私にかけた。あったかい。汚すなと言われたけれど、背の高い外人さんの羽織は私には大きくて、裾が地面に着いてしまう。どうしたものかと、とりあえず適当に掴んで地面に着かないように持ち上げてみる。あぁでも汚したらダメなら皺をつけるのも良くないのかな。
 顔を上げると外人さんはいなくて、どうしたものかと立ち尽くす。

「何ぼーっとしとんねん、こっち来んかい!」

 居なくなったと思って居たけれど、障子からひょっこりと顔をこちらに出して手招きされる。

「あー!止まれ止まれ!オマエ素足で庭おったんやから足拭いてあがりぃ!!」

 ほれ、と布巾を渡されたのでとりあえず足の裏の土を綺麗に拭う。…お腹空いたなぁ。
 足は綺麗になったけれど、どうしていいのか分からず、縁側に腰掛けて羽織にくるまる。空を見上げればさっきまでいた鳶はどこかに消えてしまっていて。外人さんの言う通り寝床に帰ったのかもしれない。

「ったく…ほれ、これ食え」

 目の前に差し出されたのは不恰好な形をしたおにぎり。食べろって言った?この人。
 見上げると最初見た時と変わらない顰め面でこちらを覗いている。

「早よ。腹減った言うたんは自分やん」

 急かされておずおずとおにぎりを受け取る。最近はずっとお粥ばっかりだったから、こんな綺麗なお米を食べるのはいつぶりだろう。

「…しょっぱい」

 一口齧るとおにぎりはやけに塩辛く感じた。こんなに味があるのを食べたのもいつぶりだろう。随分長い間食べていない気がした。あんまり覚えてないけど。

「文句言いなや、久しぶりに握ったんやから。で、自分名前は」

 口いっぱいに頬張りすぎて口が開かない。ちょっと待ってと手で示して慌てて飲み込もうとしたら咽せた。あーあーと呆れた声が横から聞こえてきて、お茶が手渡される。ゆっくり、ゆっくり飲み込めばご飯は無事に喉を通ってくれてホッと一息つく。
 固形物を久しぶりに食べたのがいけないんだ、多分そう。

「梢琴音、です」

「で、なんでこないなとこおってん」

「わかんない」

「は?」

「死んだのかな?病院にずっといた、ような気がするから。でも、苦しくないし」

 もう一口、おにぎりに齧り付く。塩辛さにも慣れてきたような気がする。
 息苦しくないのはいつぶりだろう。空気を吸うだけで気分がいい。

「ほな知らん間にここにおった言うんか」

「うん」

「何処から来たんかも分からん言うんか」

「うーん…病院に、居た気がする。肺病だったような、なかったような」

 おにぎりを食べ終わって、お茶を啜る。あ、お茶は美味しい。お腹も満たされて、羽織はあったかくて、どうにも眠たくなってきた。
 隣から唸り声が聞こえる。どうしたんだろう。

「はー…なんで迷子の保護せなあかんねん…明日喜助んとこ連れてくか、あいつならなんか分かるかもしれんし…って、寝とる!?」

「おき、てる…よぉ」

 ちょっとうとうとしちゃっただけ。まだ寝てない。もうすぐ寝ちゃいそうだけど。

「待ち待ち、寝るんやったらあっちで寝ぇて。羽織も返せ」

「やだ…あったかいから」

 半分しか開かない視界で、うとうとと意識は浮かんだり沈んだりを繰り返す。あぁ、眠い。
 外人さんは私の手を掴んで無理やり立たせると、ほれと座布団の並んだ居間を指す。ここでなら寝てもいいらしい。目の前の欲求に逆らうことなく座布団に体を沈めた。
 こんなに何の不安もなく眠りにつくのはいつぶりだろう。外人さんは文句を言いながらも、私にご飯も寝床もくれた。優しいなぁ。
 死んだから?ここは極楽浄土、ってやつなのかな。おばあちゃんがいいことをしたら行けるんだって言ってた。私、いいことはしてないけど悪いこともしてないもんね。だからなのかな。
 もう息が苦しくて起きることもないんだと思うと、ふわふわと幸せな気分で眠りにつけた。





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