しかたがないな

 夕暮れが照らす教室で教室のお掃除をしていると、一緒の当番だった同じクラスの女子に声をかけられた。
「ねぇねぇ、みょうじさん今日暇?」
「ごめんね。暇じゃないんだ」
「そっか。別の学校の男子も来るって言ってたけど残念。みょうじさん人気だからさ。また今度誘うね」
「そうなんだ。今度誘ってね。私お掃除終わったから帰るね」
 バイバイ。と言って掃除用具を用具入れにしまい自分の机の上に置いてあった鞄を持ち、そそくさと教室を出る。なーにが、他の学校の男子じゃ。こちとら、グループの仕事で忙しいんじゃ。
 私は学園都市に住んでいるレベル4の催眠術者。相手が一定の距離にいれば、眠らせることが出来たり、操ることが出来る能力なのだがそんな能力が買われるのは表の世界ではなく裏の世界。学園都市にある裏の世界の組織「グループ」に能力を買われた私は、日々裏の仕事をしつつ学園生活をしている。のだが、仕事をこなして学園生活を楽しむのはいいものの、グループのメンバーの一人、土御門元春に学園第一位のアクセラレータの生活を任されたのは私の中で大きな問題点だった。勿論、反論はしたがアクセラレータの家は狙われやすいらしく、日常の生活面でもお世話することになったのだ。
 私はとぼとぼと学校を出ようと校門の前をくぐると、聞き馴染んだ声に「おい」と声をかけられた。
「何?アクセラレータ」
「今日の仕事はもう終わった。だから」
「だから、早く夕飯にしろ。でしょ」
「分かってんじゃねーか」
「何か月一緒に生活してると思ってるの?」
「あぁ、そうだな。後、コンビニに寄るぞ」
「えっ。スーパーに寄ればいいんじゃ…。ちょっ」
 ずんずんと歩くアクセラレータに私は急いでついていく。行先はコンビニだろう。お金を持っていないから私のお財布からお金が飛ぶんだろうな。そんな覚悟をしつつコンビニに立ち寄る。
「ありがとうございましたー」
 案の定、私のお財布から缶コーヒー一缶分のお金が出された。平然とコーヒーをごくごくと飲む彼を横目にちらりと見ながら、今後も付き合わされる生活に私は溜息を吐きながら、一緒にスーパーに向かうのだった。



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