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おまけ。月島家はなまえちゃんが暮らしていた親戚のお家。


 なまえがいなくなってから、月島家の周りは大騒ぎだった。おじさんが仕事をしている間、おばさんは街中なまえを探し回っていて、学校でも「なまえちゃん、いなくなっちゃったんだって!」と噂になっていた。
 
 あれでも年頃の女の子だ。おまけに、とんでもなく間抜けで鈍臭い。妙な人間に連れ去られてしまったのかもしれない。夜になっても帰ってこないことに心配していたが、友達の家にでも泊まっているのかと思っていた。月島のおばさんは確かに要領の悪いなまえを若干鬱陶しいと思っていたけれど、別に嫌ってはいなかった。なまえの父親と母親からほとんど連絡はない上に、母親はどこかで男を作っているようだからわざわざ会いに来ることもないだろうが、お金をもらって預かっている子だし、なまえ自身はとろいだけで根はいい子なのだ。ここ数日の間、なまえに特に変な様子はなかったはずだ。いや、いつも以上に抜けていたかもしれない。しかし、それといなくなったことには何の関係があるというのだろう。
 
 結局、一週間探してもなまえが見つかることはなかったし、帰ってくることもなかった。大した情報も得られず、家に戻ろうかととぼとぼ歩いていると、茶屋から大きな話し声が聞こえた。
「そういえば、なまえちゃんがいなくなってから、あの白い服の美人も見ないわねえ。」
「確かにそうかもしれない!」
「なまえちゃんが彼とよくうちの店に来てたのよ。ずいぶんと親しいみたいだったけど。」
「私のところにも二人で何回か来たわ。もしかしたら、駆け落ちでもしちゃったんじゃないの?」
「えぇ!なまえちゃんみたいな子が?でもまあそういうこともあるのかしらねえ。」
 駆け落ち。まさか、あのなまえが…。おばさんはくらくらして倒れそうになった。相変わらず人騒がせな子だ。自分たちにだって真偽はわからないのに、これからたくさん出てくる不名誉な噂に頭が痛くなった。それもまた、嫁入り前の女がどこの馬の骨かもわからない男に関することだなんて。なまえとその母親が似ていると思ったことはなかったが、今回のことで血は争えないものだとよくわかった。

2020.10.19


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