情事が終わり眠りについたが、どうやら数時間程しか寝ていなかったようだ。外は暗くて、月の光が部屋に射し込んでいる。まだまだ夜は明けそうにない。流石に今からは何かをしようなんて思えない。勇者は寝返りを打ち、再び夢の世界の入り口へ向かおうと目を閉じたが、隣が少し寂しい事に気が付いた。数時間程前に自分を抱いていた男がいない。普段なら気にも留めないでそのまま眠ってしまうが、今回は何となく気になり、気怠そうに体を起こした。覚醒してない頭を掻きながら辺りを見回してみると、窓辺に揺らめく何かが見えた。寝惚け眼を擦りながら、その何かを確認してみる。靡く銀色に目を奪われてしまった。自分の事を抱いていた男、魔王がそこにいた。窓を開けて空を見上げている。月を眺めているのだろうか。柔らかな光に包まれた横顔を見て彼は息を呑む。不本意ながらも美しいと思ってしまった。
「おい」
「……起きたのか。まだ早い、朝まで休むと良い。今日は激しくしてしまったからな」
魔王の言葉に勇者は眠りにつく前の交わりを鮮明に思い出して、顔を真っ赤に染め上げた。羞恥心が湧き上がってくる。それと同時に心の奥底に熱が灯るのを感じた。あんなにも激しく抱かれたのに、まだ魔王を求めてしまっている。物足りなかったのだろうか、それとも、欲張りになってしまったのか。どちらにしても目の前にいる奴のせいだ。うん、そうに違いない。そうしておこう。ベッドから降りて、窓辺に向かい彼に抱きつく。ふわりと香る彼の匂いにすら欲情してしまい、どうにかなってしまう。熱に焦がされた蒼い瞳は、真っ直ぐと紅い瞳を見据えた。
「したい」
「あれだけされて、まだ求めるか。随分と淫乱になったものだ」
「お前のせいだろ。淫乱になった責任を取ってもらうからな」
勇者はがっつくようにキスをした。薄く開いた唇に舌を入れて絡める。舌同士が触れ合うだけでも、身体の中がジリジリと熱に焦がされていくのが分かる。
魔王は彼の腰に手を回して、応えように舌を絡める。それが嬉しくて、絡める舌が気持ち良くて、腰が砕けてしまいそうだ。口が離されると、物足りなさそうに勇者は彼の下唇を甘噛みし始めた。もっと、欲しい。既に頭をもたげている熱を、無意識に彼の太腿に擦り付けながら、キスをねだる。先走りで濡れた腿と、自分のそれが擦れる感触に身体が震えた。
蕩けた表情でおねだりしてくる様子は、流石に腰にくる。魔王は触れるだけのキスをし、勇者を抱きかかえてベッドに降ろす。もっと、もっと、とせがむ彼にもう一度、キスを落とした。舌を吸い上げる度に小さく反応するのが、何とも可愛らしい。
「ん…あっ、ふぁ…」
「その内、キスだけでも果てるようになりそうだな?」
「ばか、言うな…!…う、あぁ…」
「こんなにトロトロにしている癖に。説得力と言うものが無いな」
魔王は勃ち上がっている勇者の陰茎を無遠慮に握りしめた。激しめに扱いてやると、先端から止め処なく先走りが溢れる。そこに爪を立てると、面白いほど彼の身体が跳ねた。耳朶を軽く噛みながらぐりぐりと先端の穴を弄ると、甘い声を上げながら縋り付いてくる。わざとらしく音を立てて耳の穴を舐ってみると、嫌だと言うように小さく首を横に振る。勿論、そんな事をされても止める気は更々ない。緩急をつけ扱き、耳の中を犯していると、彼が自分の肩に頭を擦り付けて来た。もうそろそろ、か。
「勇者」
「ひぁっ…あぁっ!」
耳から舌を引き抜かれ耳元で囁かれると、それに反応するかのように勇者は達した。高められている時に、その声は卑怯だ。卑怯だが、好きだ。甘さを含んだ低い声で囁かれると、蕩けてしまう。ぐったりとベッドに身体を預けて、ぼんやりと魔王を見るとニヤニヤ笑いをしていた。こいつ、分かってやがる。
「そんなに私の声が好きか?」
あぁ、好きだ。声だけじゃ無い。ツノの先から足の先までお前の全てが好きだ。心の中で呟いてみる。口になど、出すものか。
勇者は貫くような紅い瞳から目を逸した。多分、何もかもお見通しなのだと思う。でも、そうだとしても、何も言わないでいてほしい。奴のことがこんなにも好きな事がばれているなんて、恥ずかしくて消えてしまいたくなってしまうから。
羞恥も何もかもを掻き消したくて、足を開いて魔王を誘う。陰茎よりも下の孔が彼を求めて伸縮している。何時間か前に使った場所だ、このまま挿入しても大丈夫だろう。多少痛みを伴っても、構わない。熱を孕んだ瞳で再び彼を見ると、欲情した瞳と視線が合った。思わず、胸が高鳴る。
「…早く、寄越せ…」
「そう急ぐな。すぐにくれてやる」
魔王が勇者の足を持ち上げ、猛った陰茎を孔にあてがう。ゆっくりと腰を進めると、先走りが潤滑剤となりすんなりと挿入出来た。しかし、浅い所で動きを止める。
勇者はもどかしそうに腰を動かした。身体の奥深くが疼く。奥まで突っ込んで、突き上げて、掻き回して。瞳に涙を溜めながら上を見ると、意地悪そうに笑む顔がそこにあった。そのちらりと見える牙も好き、とか思っている場合じゃない。早く、早く、欲しい。
「意地悪…するな…」
「欲しい物は与えたつもりだが?」
「奥…っ…もっと…お前を……感じたい…あぁぁん!」
魔王は一気に奥まで突っ込んだ。本当は泣くまで焦らしてやるつもりだったのだが、無理だった。か細い声で縋るように言われ、限界を超えてしまった。今回も優しく出来そうに無いな。頭の片隅で考えながら、勇者を激しく突き上げた。シーツをきつく掴んでいる手に気が付き、そこから手を離させると自分の首に回させた。肌が密着して熱いな、心地良い。
「好きだ…」
「…!…お、れ…もぉ…すき、だっ…あっ、…魔王…まお、う…!」
いつもは好きだなんて言わないくせに。互いにそう思いつつ、快楽を享受する。
何度も達しながら、もっと欲しいとねだる 。淫らで可愛らしくて、愛おしい。魔王は彼の首に赤い跡を残した。好意の言葉を囁くと孔が締まるのが分かる。本当にお前は私の事が好きなのだな、と頬が緩む。今、自分は締まりのない顔をしているだろうが、嬉しいのだから仕方がない。譫言のように名前を呼んでくる彼にキスをした。舌を出してやると、必至に絡めてくる。あぁ、もう、堪らない。ちゅう、と舌を吸うと中がきつく締まり、魔王は勇者の中に白濁を注ぎ込んだ。
「んんっ!…んぅ……ふぁ…はぁ…もっとぉ…」
「……どうやっても、知らんぞ」
「いい、からぁ…おまえが…ほしい…ぃ…」
達したばかりなのに、魔王の陰茎は元気を取り戻す。こんなにも欲情してしまうのは、目の前の奴のせいだ。幸せそうに蕩けた瞳を見つめながら、彼は再び勇者を突き上げた。
・
目が覚めると、外は既に明るく、太陽が頭の上まで登っていた。どれくらいの時間寝ていたのだろうか。寝惚け眼を擦りながら、立ち上がろうとするが、力が出ない。腰も痛いし怠い。足腰が立たないとはこういう事なのかと、実感した。まぁ、良い。今日はこのまま寝ていよう。俺がこうなったのも全部あいつが悪い。
勇者は再び布団に潜り込んだ。
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