Swings so beautiful yet terrific.


月明かりの下、ベンチに並んで座って話すことが二人の日課になりつつある。今日なにがあったか、そんな他愛もない話をつらり、つらりと重ねるのだ。この落ち着いた時間は、いつしかマレウスにとって大切なものになっていた。それには、監督生の存在が欠かせない。

「どうしたの、ツノ太郎?」

相槌がなくなり、じっと此方を見つめるマレウスを不思議に思い、監督生は錬金術の授業中に起こった悲劇について話すのをやめた。黄色が混じった緑色の瞳は柔らかく形を変え、監督生を写していた。

「ひとつ、試したいことがある。」

そう言うと、マレウスはベンチから立ち上がり、監督生に手を差し伸べた。監督生は頷いてその手を取った。

「ちょ、待って!」

マレウスは、流れるように監督生の腰に空いている手を回して距離を詰めた。こんなに近づいて何をするんだろうと様子を伺っていると、そのまま顔を近づけてきた。まるで、キスをしようとしているみたいに。監督生は腕を突っぱねて急いで隙間を作った。

「む、なんだ。」
「いやいや、これ以上近づいて何する気?」
「…人は寝る前におやすみのキスをすると聞いた。」

だから、試してみようと思ったんだ。マレウスは拒否されたことが不服な様子で、むっつりと話した。

「え、おやすみのキス?」
「大切な者が穏やかな眠りにつけるように、と。そう聞いたぞ。」

監督生が腕の力を抜いた隙をついて、マレウスがその頬に口を寄せた。優しい音が耳に届く。今日はもう休んだほうがいい。マレウスは驚いて固まっている監督生に、一方的にそう告げた。

「おやすみ、人の子。良い夢を。」

マレウスはひどく満足そうな表情を浮かべ、瞬く間に消える。残された監督生は、じんわりと火照る頬を押さえて暫く立ち尽くしていた。

「…こんなの、眠れそうにない。」

おやすみのキス



partiality