10話

「ごめんくださーい」

北から伝えられた道に沿って着いた家の戸を叩く。いかにも日本って感じの家で、北に似合うなあと思った。

「はーい…あら!」
「こんにちは。北くんのクラスメイトの四季です、今日は迷惑かけます」

戸を開けてくれたおばあちゃんに、ぺこ、と頭を下げる。この人が北の話によく出てくる「ばあちゃん」か。ニコニコしていて可愛い。
ちなみに今日来てきたのはワンピースだ。私が持っている中で一番清楚っぽい服。

「ええよええよ、信ちゃんの後輩の子らも来てん。賑やかでええわあ」
「もっと騒がしくしてしまいそうで申し訳ないです」

玄関で靴を脱ぐ。来る前にサンダルにしようか迷ったがやめた。
ちゃんと踵を揃えて隅に置くと、近くに大きめのサイズの運動靴が三足ほどあった。きっと後輩くんたちの分だ。

「お、四季来たか」
「失礼します。北、このアイスみんなで食べてや」
「別にええのに」
「私も食べたくなったんやから許してや」

おばあちゃんがいることをちゃんと思い出していれば、もっとみんなで食べられるようなものを買ってきたのだが。結局後の祭りである。
来る途中で買ったアイスを北に差し出すと、「アイス!?」と大きな声が北の出てきた部屋から聞こえた。
うわ、デカい。北より四、五センチは高いであろうその身長とよく目立つ金髪。そして後ろから同じように現れる銀髪。同じ顔。

「うわイケメンおる…」
「初対面の感想がそれか」
「あ、そっか。はじめまして、四季です。可愛い後輩って北から聞いてるから知っとるよ」
「え、あ、はい?」
「四季、アイス冷凍庫入れたで。そんな所で話さんと手洗っとき」
「はいママ」
「教えへんぞ」
「ごめんなさい」



「わ、分からん……そもそもなんでこんな計算をせなあかんのかわからん…」
「少なくとも学生でいるうちは義務やからな。四季、ここ間違えとる」
「解答写すことを容認しない北が好きやで…」
「おおきに」

ぐでぐでと机に溶けながら北が指した箇所を解き直す。
ちらりと横を見ると同じ様になった双子がいて、なんとなくシンパシー的なアレを感じた。北には多分アレってなんやねんって笑われる。

「せや、北さあ、今日の私の服どう思う?」
「どう思うって…俺には善し悪し分からんしなあ」
「好み?好みじゃない?」
「センパイは彼女なんか?」
「違うけどさあ!尊敬しとる人の好みに揃えたらそういう人間に近づけるかもしれへんやん!」

シャーペンを置いて北を見た。北はよく分からない顔をして、沈黙。少しだけ間が空く。

「……四季が楽しいと思ってんならええと思う」

答えになってない。でもこれは多分私のことを気遣って言ってくれたのだと思う。
それはそれとして、誤魔化されたという事実は揺るがないので再び机に溶けた。

「夏祭りさ、めっちゃ可愛いカッコして行く。北もわかるくらいの美少女なる」
「……四季はかわええよ」

何だよ今のタメ。気でも使われたか。でもやっぱ嬉しいから頭に永久記憶しておこう。

「…北さんも女子にかわええとか言うんやな」
「そりゃかわええと思ったら言うで」
「聞いとったんですか!?」
「変な邪推せんと宿題進めや」



「やっぱ北ってママやんな……旦那おってもおかしないわ」
「先輩はまだそんなこと言うてるんですか」
「それが実は居るんですよ、旦那」
「マジ!?絶対大耳やと思ってたんに」
「本人気にしてるからやめときや」



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