「嫌やー!北と離れたないー!子からママを離すなー!」
「駄々っ子か」

今日は席替えの日である。私はこんなテンションだがクラス替えでも何でもない。
今まで割と私の生活を助けてくれていた北が離れるというのはかなり痛い。甘やかさず育ててくれていたママが離れると何もできなくなる、ダメ人間か?

「四季」
「北くんはママではなく親友です」
「離れろ」

北にへばりついていると一蹴される。なんて冷たい奴。
でもそこで親友に盛るとこ嫌いやないで、と友人が言う。ありがとう、私もそう言ってくれる奴だから好きになった。

「北、大好きやから離れんとってな」
「くじ引きで頼まれてもな」
「北は神様やから神頼みや」
「訳分からんわ」

先頭から回ってくるくじの入った箱を受け取り、一枚紙を抜き取る。番号は十二番。窓から二列目、後ろから二列目。
近隣は十六番、二十番、五番、九番。

「北何番!?」
「十四」

十四番の席を見る。廊下側の前から二番目。

「遠いやんかー!」
「やかましい」
「もうええ毎日北に絡む」

北大好きか、と友人が笑う。大好きだ。



席替えをして以降、よく北を見るようになった。いつも背筋が伸びていて、真っ直ぐ前を向いて授業を受ける姿はクラスではむしろ浮いて見えた。
かっこいいよなあ、北。何がどうとか、言えんけど。

「四季、北のこと好きなん?」
「んえ?」
「いや、めちゃくちゃ見とるやん」
「マジ?」
「マジ」

隣の席のクラスメイトに尋ねられる。
数回同じ班になったことがあり、割と仲は良い。よくフリスクくれたし。彼にまで認識されるレベルだったのか。見すぎたな。

「大好きやけど恋やないよ」
「友情?」
「なんかそれも違うんやけど……尊敬?」
「万年遅刻ギリギリの四季が?」
「万年遅刻ギリギリだから尊敬すんの」

自分にできないことして生きてる奴って凄いなあと思う。それは当たり前のことや。

「四季と北、付き合ってると思われとるで」
「は!?」

話すなら小声にしろ、と先生が私に言う。話すことは許してくれるんやな。

「な、なんでそんな烏滸がましいことに…」
「夏祭りで見かけたって」
「インスタあげてへんのに!?」
「行ったんやな」
「ゔ…でも友達やし!」
「…それさあ、」

無理ない?クラスメイトはそう言った。男子と女子やし、意識しないなんて無理やろ、と。
何でそんなこと言うんやろ。私は北を尊敬しとるし、北は…知らんけど保護者やし。そこに恋愛とかは多分、ない。北がモテるのもかっこいいのも分かるけど、そういう雰囲気を出さないところが特に好き。

「…そんなんと、ちゃうし」
「ふーん」
「信じてへんやろ」
「まあな。そんなんとちゃうといいなあ、て思っとるだけやろ」
「…嫌なこと言うなあアンタ」

図星だから、嫌や。

「…なんかすまん、フリスク食う?」
「食う」

クラスメイトがタブレットを私の手のひらに振る。
口に放った桃味のフリスクはわざとらしいのに美味しかった。



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