「四季、かえろー」

放課後。日はまだ高くて、いつもの私なら即帰宅!という判断を下す時間帯。私はまだ教室にいた。

「ちょっと残って課題終わらせるわ」
「珍しく真面目」
「そんなんやないけど」

何となく、頑張ってみようと思った。放課後教室にいると、体育館からバレーボール部の掛け声が聞こえることに気がついたから。
いや、そうじゃなくても。北みたいに丁寧に何かをやってみようと、小さなことでもいいからちゃんと、何かをしてみようと思った。
いつもは適当に写そうなんて考えているノートにシャーペンを当てた。

「ナイッサー!」


「…終わったー!」

偉い。偉いぞ、私。
完成したノートを見ると、前に北が見せてくれたノートとつくりがそっくりで笑ってしまった。

「北のノートみたいや…」

明日あたり北に見せよう。ママからの小さな巣立ちである。
気がつくと日は落ちていて、それなのにまだ体育館からはバレーボールが床に当たる音がした。
北、居るかな。
窓から顔を出して音の方を見る。体育館の入り口に、目立つ髪色をした、バレーボール部の中では少し低い身長。

「北ー!!!」

ブンブンと手を振って声を出す。
北は私の方を向いて、目が合って―――睨まれた。
いや正確には睨まれているわけではなく見つめられているだけなのだが。怖い。だって北やし。
まあ仕方ない、部活中に声かけてくる友達とか迷惑だ。
北へお礼をしたい気持ちでいっぱいになったがための行動なので許してほしい。
北に満面の笑みを返すと、近くにいた双子の金髪の方がぎょっとしたような顔をした。

北はため息をついて…ここからはよく分からないけどちょっと表情を変え、体育館の中に入った。JKの笑顔は最強なんやで、とか抜かしたら多分正論パンチされるな。

スマホのトークアプリを開き、「北のおかげで勉強できた!ありがとう!」と送信した。

「帰ろ」

教科書を片付けているとスマホが鳴って、『四季の努力や。送るから教室におれ』と画面に表示された。
暗い中一人で帰るのは怖い。昔変な人がついてきたことあるし。
なんで北はこうやって面倒を見て、いつも欲しい言葉をくれるのだろう。くすぐったくてうれしい。

『北マジで大好き』と返事をする。今度何かご飯奢りたい。多分北は生きているだけで私を変えるのだ。それくらいの感謝を、北にしたい。

「へへ」

北は人生の師匠やなあなんて笑って、スマホを両手で持った。



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