朝。北くんとぶつかった日よりはちょっと早く、世間一般的には遅れて登校すると、また北くんを見つけた。
北くん、その隣には巨人。確か尾白くん。尾白くんは多分バレー部。ということは、北くんもバレー部。
ああなるほど、バレー部の朝練あったから北くん昨日あんな遅い時間に歩いてたのか。
それもそうだ、北くんが私みたいな遅刻の仕方をするわけがない。
「四季!またアイツと喧嘩したんやけど〜!」
席について一息つくと、前の席に座った友人が話しかけてきた。私よりも少しだけ化粧が濃くて、口の悪さは同じくらい。
半年前くらいまで男運がないと嘆いていたが、どうやら今回の彼氏は長く続いているらしい。こうして数週間に一回くらい愚痴を言いにくる。
「嫌いなん?」
「死ぬほど好き……」
そして決まってこの会話で愚痴が終わる。どれだけ好きなのか。今の声をトークアプリで友人の彼氏へ送信する。ちなみに彼の連絡先は友人関連以外で使われたことはない。何なら昨日の夕方に友人と仲直りしたいという相談をされた。そして何故か惚気られた。二人でやれ。
「恋って大変そうやなあ」
「彼氏欲しくないんか?」
「欲しい」
「欲しいんかい」
欲しい。インスタに彼氏と写真上げたい。カップル割とやらを使ってパンケーキ食べたい。彼氏がいた中学生の頃が懐かしい。
「でも彼氏欲しくて恋するもんでもないしなあ」
「ロマンチストや〜」
やかましい。
「そろそろチャイム鳴るし、退いてくれへん?」
そういえばこの前買ったグロスがめちゃくちゃ良かったんやけど、と話を変えた友人に声がかかる。早口でもないし大きいわけでもない、それなのにちょっと圧を感じる声。
「北か、すまん勝手に椅子使ってもうて」
しょ、と友人が立ち上がって私の隣に立つ。
まだ話すのか。北くんちょっとこっち見てるぞ。
「北とか女子の化粧全く興味なさそうやな」
お前心臓に毛生えてんのか?その言葉は飲み込んだ。北くん、そっちの言葉遣いの方を注意しそう。
実際問題興味ないんやでこの男は。女子高生の前髪注意してきたんやから。
「せやなあ…まず女子の顔よく見る機会ないし分からんわ」
いや乗るんかい北くん。確かにウチの高校は校則緩いけど化粧とかのイメージ良くなさそうなのに。
「じゃあ四季の化粧分かる?」
「四季さんの?」
「おい北くんに何させるんタコ」
北くんがこちらを見る。
うわかわいい顔してるなあ北くん。
友人を睨もうとすると、ちょうどチャイムが鳴った。北くんこんな話題でもきけば返してくれるんやなあ、律儀やなあ、と思いながらため息をついた。
「四季照れてたやろ」
「はよ戻れ」
「チャイムは鳴り終わるまでセーフや」
「それがもう鳴り終わるんやろが」
友人が戻った頃には北くんはもう前を向いていて、結局化粧については聞けなかった。
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