「ん〜…」

サクサクとブロック型栄養食を食べる。お弁当を買い損ねたのである。居眠りのせいだ。時間に余裕を持って生きるべきだと思ってはいるが、行動に移せた試しがない。

「何食っとるん?」
「チョコ味の……わあ北くんか」

お弁当を食べる前に手を洗ってきたのだろう、北くんの制服の袖が少し濡れていた。北くんも人間なのだとこういうところでたまに感じる。
さて、北くんに声をかけられるのは珍しい。仲が良い悪い以前に、席の近さの割に交流がないのだ。
お腹が空いたのだろうか。北くんも食べる?とブロックを割ると、いらんと返事をされた。だと思った。そんなわけないですよね。

「体に悪いで。飯はちゃんと食べや」
「…分かっとるんやけど、ギリギリまで寝てまうんよ」

ブロックを咀嚼し、飲み込んでから話す。ヤバ、グロスにブロックちょっとついたかも。

「何時に寝とるん?」
「1時くらい」
「何でそんな時間に寝るん?」
「スマホ見てたら時間が…」

いや本当にアホみたいな時間の使い方してるな私。
北くん絶対生活習慣しっかりしてるから言うの恥ずかしいな。

「北くんはスマホ見なさそうやな」
「まあ、せやな。部活して帰って風呂入って飯食ったらもう寝とるし。そもそも機械がそんなに得意やないなあ」

分かる。文字打つのが速い北くん、想像できない。友達と話すときとか、既読ついてからゆっくりゆっくり返信してそう。多分誤字はないんだろうな。

「それ美味いん?」
「普通。嫌いやないけど口パサパサなるし。やっぱ米やな。あと足りひん。大きい方買うたほうがよかった」

水を飲む私を見て、北くんはお弁当の入っている袋からおにぎりをひとつ取り出して、私の机に置いた。

「食え」
「ええの?」
「ええよ。この前のお返しや」
「北くん…!惚れてまうわ。運んどくべきは北くんの荷物やな」
「もっと他にあるやろ、優先度高いやつ」
「今の私にはないで」

北くんを拝みながら、机に置かれたおにぎりを手に取る。惚れるより先に生活習慣直しや、と北くんに正論パンチをされたのでやっぱり北くんは怖かったし、それはそれとしておにぎりはおいしかった。
ご飯を食べているときの北くんがこちらを向くことは一切なくて、行儀が良い。私が産まれてから死ぬほど注意されたお行儀は食事の仕方である。それを自然にやっている人は少ない。自分でもちょっと崩したいと思ったことが何回かある。
それなのに北くんがあんまりにもお弁当を丁寧に綺麗に食べるので、ちょっと良いなあと思ってしまった。



Back