Angel/Devil
コートの脇に置かれた籠へ、最後の黄色いボールを投げ入れる。既に溢れそうなほどテニスボールが入った籠へ私の投げたボールが飛び込むと、いくつかのボールがコートへ弾き出されていった。
「(あーあ、)」
片付けが終わらないと部活も終わらないのに。なんて思いながらも億劫になってしまった私はその場に腰を下ろして背後のフェンスに背中を預ける。3年生で部長の私と、幽霊部員が2人と、1年生が2人のこのテニス部も来年には同好会に格下げだそうで。家が遠いと聞いていたので1年生は先に帰らせた。
「センパイ」
カシャン、と背後のフェンスが少し揺れると同時に頭上から聞き慣れない声が降ってくる。私に向けられているらしいその声の主はフェンスの外にいるらしい。
「私?」
「他に誰もいないじゃないですか」
まあね、なんてぼんやりと言葉を返した。君は誰なのか?なんて問うのも今は面倒くさくて、ただその言葉の先を待ってみた。
「なんだか楽しくなさそうですね」
クスクスと、高い声を揺らしてそう笑った
「ああそう」
「他の部員は?帰っちゃったんですか?」
「私が帰らせたんだよ」
そのはず。そういうつもりで見送った、はず。
「あの子たち、すぐそこの公園の傍に住んでるんですよ」
クスクス、
可愛い声でまた笑う。
「あっちいけよ」
「やだなあ、こわいひと」
クスクス、クスクス、
なんなの、入部希望? まさかね、そうだとしても入れてやらない。
「こっち向いてくださいよ、先輩」
「名前知ってんのね。入部希望?」
「まさか。私はサッカー部ですし」
「ふーん、声変わりしてないから女の子かと思ったわ」
仕返しに喉を鳴らして笑ってやったら、これには少しムッとしたようでコイツはそのまま暫く黙り込んだ。
「暇なわけ?構ってちゃんかよ」
振り返らないのはちょっとした意地、名前を訊ねないのは興味がない素振りをしたいから、けど返事を待つのは好奇心。背後のコイツはやはり、クスクスと笑う。なんかもうムカつく通り越してどうでもいいわ
「ねェ、笑ってばっかでさ、聞いてんの?」
「構ってほしいのは#name1#先輩でしょう?」
「生意気ね、クソガキ」
#name3#が構ってほしい?どっから出たのそれ、後輩なんだよねコイツ、どんだけ不躾なのよ
「クラスで友達居ないでしょ」
「えらそうに、何を知ってるってのよ」
「だから部活が楽しみなのに、他の部員がいい加減で、やっぱり独りで。後輩だって「家が遠いからもう帰る」って片付け放って先に帰っちゃったのに、帰り際に「そっか、じゃあ先帰っていいよ」なんてまるで自分が帰らせたみたいに、クスクス、さみしい?」
やばい、コイツこわい。いきなり絡んできてなんなのコイツまじで、頭、
「知ってますよ、見てますし」
ずーっと。クスクス、
背筋がぞっとして咄嗟に立ち上がって振り向いた
「知ってますよ、なんでも。」
#name3#より少し背の低い少年が、クスクスと笑っていた。
「なにお前、気分悪、あっちいけよ」
「どうしてです?」
「知ったふうな口聞かれて気分悪いっつってんのよ・・・!」
ガシャン、とフェンスを叩きつける。恐い?腹が立つ?悲しい?分かんない。何を言われてるかよく分かんない、とにかく耳を塞ぎたい聞きたくない何も聞きたくない
「それは、図星だから?」
「・・・!」
違うし#name3#独りなんかじゃないし、#name3#は、
クスクス、あはは!
声を上げてコイツは笑う。#name3#は耳を塞いで叫ぶしかできない。#name3#、独り?ちがう、ちがう、聞こえない。いやだ、違わない、ホントはずっと、
ふいにフェンスから伸びた薄白い手が#name3#の胸元を掴んでフェンスに引き寄せられた
ガシャン
「う、っ」
「でも、ほら、見て」
フェンス越し、体温を感じそうなくらいの距離にあるコイツの顔がニコリと笑う。
「私は#name1#先輩のこんな近くにいる」
天使みたいな澄んだ笑顔で、悪魔のような事を言う。イカレてる
「#name1#先輩はどっちがいいです?」
「な、にが、」
「独りと、ふたり」
こんな狂気じみた話があってたまるか
::::::::::::::::::::::
久々更新、ストーカー的博之くん。
2014.4.13