「頼んだよアーマルド」
「引き続きお願いします、ゴウカザル!」
「さっきは突然の事でやられたけど、次はそうはさせない。昨日今日で借りてきたポケモンになんて負けないよ」
「そうですか。ゴウカザル、瓦割り!」
「アーマルド、水の波動だ!」
「ゴウカザルいったん避けて、背後に回ってインファイト!」
いくら普段は流星ノ滝に篭って石探しをしているニートとはいえ元チャンピオンの実力は健在だ。
ライラも一度は撃破しているが毎度必ず勝てる訳ではない。
不利なタイプに当たっているにも関わらずインファイトを食らった身体でアーマルドは主人の勝利のために奮闘する。
「アーマルド、つばめがえし!」
「火炎放射で反撃です!」
百発百中の攻撃に耐え、ゴウカザルは再び火炎放射を放った。
灼熱の炎を受けたアーマルドはぐらりと体勢を崩す。
「今です!瓦割り!」
炎の中から飛び出したゴウカザルの一撃を受けアーマルドは鳴き声をあげる。
そしてついに膝を折ってフィールドに倒れ込んだ。
「アーマルド!」
「昨日今日で借りてきたポケモンになんて負けないんじゃなかったんですか?」
「はは、少しライラを甘く見てたみたいだ」
「メタグロスもこの勢いで片付けてあげます。ゴウカザルありがとう、リザードン行きますよ」
どしん、と重量感のある音と共にフィールドに現れるリザードン。
尻尾の炎がいつもより強く燃えているように見えた。
「メタグロス、君に全てを託すよ」
こちらもまたフィールドの砂を巻き上げながら巨体を現す。
両者共に珍しく気持ち悪い程に真面目な表情で指示を出しはじめた。
「リザードン、煉獄です!」
「メタグロス、コメットパンチだ!」
リザードンの煉獄で火傷を負ったメタグロスは動きが鈍くなる。
もとより素早さにおいて有利なリザードンはコメットパンチを楽々避け、次の指令を待つ。
「リザードン、空を飛ぶ!」
大きな翼を動かし空に身体を浮かす。
そしてメタグロスの周りを旋回しながら翻弄しダイゴに狙いを定めさせない。
「メタグロス、サイコキネシスだ!」
「音波の届かないところまで逃げて!フレアドライブです!」
少し間に合わなかったのかリザードンは小さく鳴くが直撃は逃れたようでフレアドライブの体勢に入る。
炎がメタグロスの身体を包む。
「ちっ…メタグロス、」
「リザードン、」
「「破壊光線!!」」
空中からと地上から、互いにまばゆい一本線を放った。
それはぶつかり合って爆音をあげる。
「リザードン、ドラゴンクロー!」
破壊光線のあとは一定時間動く事ができない。
しかしやはり素早さで勝っていたリザードンの方が先に動き出すことができた。
鉄壁の守りを誇る鋼の身体も火傷で弱っていては鋭利な爪で傷付けられてしまう。
「っ…メタグロス!」
主人の声は聞こえている。しかしそれに応える気力はもう残っていない。メタグロスはそこで目を閉じた。
ライラの勝ちだ。
「ふぅ……デンジさん!やりましたよ!ちゃんと言われた通りに勝ちました!」
「ああ、やったな」
いつもの無気力な顔でも苦笑いでもない、朗らかな心底安心した笑顔。
駆け寄ってきたライラの頭をくしゃりと撫でる。
「……それで」
飼い主に甘える犬よろしく、ぶんぶんと尻尾を振っていたライラがくるりとダイゴに向く。
「勝ちましたよ。約束通り、もう私に干渉しないでください」
「……わかってるよ。ライラがどこに行こうと、もう引き止めはしないさ。でも、やっぱり男の所に行くっていのは「はーい、そこまでよー」」
「シロナさん!」
長い琥珀色の髪を揺らしながら現れた美しい女性。
その姿を見てダイゴが怖じけづいた。どうやらこの二人には上下関係があるようだ。
「ダイゴ、あんた負けたんだからライラちゃんに口出しするのはダメよ」
「だ、だってシロナ!」
「でももだってもない!いい?デンジはね、確かに死んだ目をした無気力な男だし、いつもジムの改造ばっかりしてる変人よ。だけど誠実で芯の強い男だわ。それは私が保証します」
「シロナさん……」
「万が一にもライラちゃんが私に泣きつく事があったらデンジを鉄拳制裁してあげる。だからあんたは心配しないでさっさとホウエンに帰りなさい」
「(マジかよ…)」
美人に絶対零度の視線を寄越されるなど、考えるだけでもメンタルがやられるというのに、それに加えて鉄拳制裁などされた日には心身ともにブレイク必至だ。
顔面蒼白になるデンジとは別に、いよいよ最愛の妹を取られる事が受け入れられないダイゴは、情けないほど震える声でライラの名を呼んだ。
「……ダイゴが私に口うるさいのは私を本気で大切にしてくれてるからだって事はわかってます。その気持ちは嬉しいし、感謝もしてます。でも私ももう何もできない子供じゃない。たまにはホウエンにも帰りますからそんなに心配しないでください。ね?お兄ちゃん」
「!…ライラ、今お兄ちゃ「ほらほら、行くわよー」シロナぁ〜!」
このまま放っておくと永遠にナギサジムから出ていきそうにないと感じ取ったのか、シロナがダイゴの襟元をつかんでズルズルと引っ張っていく。
その強引さに流石のライラも目が点になりながらそれを見送ることになった。
やっと嵐が去りナギサジムに平穏が戻ったところでライラはデンジた向かい合う。
「ねぇデンジさん」
「ん?」
「さっきの言葉、本当ですか?嘘じゃないですよね!?嘘だったら早速シロナさんに通報ですが!」
「…嘘じゃない」
「はぅあ〜…」
蕩けそうな顔をしたライラからデンジは罰が悪そうに目を逸らす。
今更になってあの大胆な告白が恥ずかしく思えてきたようだ。
「デンジさんデンジさん」
「……何」
再び自身の名前を呼ぶライラに顔を覆った手の隙間から目を覗かす。
そんなデンジに夢見心地な彼女はニッコリと笑い一言。
「もう一回好きって言ってください」
「……ヤダね。一回しか言わないって言っただろ」
「む。なら言わせるまでですよ!」
「ぜってぇ言ってやんね」
もうっ、あなたが素直になるまで何度だってアタックしてやりますからね!
だからちょっと覚悟しててくださいよ、デンジさん。
--END--