白磁のガーデンテーブルが置かれたサンルーム。
天窓から射す日光は程よく、喧騒は遠く。緩やかな時が流れる空間は彼女のお気に入りの場所だ。
「彼女」とはカルデアに在籍するサーヴァントの一人である。
正確にはサーヴァントではないが、人類最後のマスターである私の呼び掛けに応じてくれたのは確かだ。なので、ここではサーヴァントと呼んでおこう。
「スピカ」
「あら、ごきげんよう。何かご用?」
あまりに優雅で、あまりに耽美。
瞬き一つで世界を傾けられるほどの、恐ろしいまでに美しい彼女の名はスピカ。
カルデアには、伝説の英雄や時の名君、魔女に鬼に神。そんな英霊、神霊が数多に召喚されているが、スピカはその中でも群を抜いて特殊な存在だった。
彼女は神代もとうの昔に終わりを告げた現世で、唯一といってもいいであろう実体を持つ神なのだ。
いや、実際に本人の口からそうとは聞いていないが、魔力量は神霊のそれを遥かに越えているし、実体持ちの神という他なかった。だから勝手にそう解釈している、というのが正しい。
縁もゆかりも無いスピカがなぜ私の呼びかけに応じたのかは未だにわからない。
以前、理由を聞いた時にも「あなたのことが気になったから」と、一方的にこちらを観測していたことだけを告げられ、曖昧に誤魔化されている。
しかも彼女は滅多に特異点に同行しないし、同行しても傍観に徹していることがほとんどだ。時折、助言という助け舟を出してくれるものの人理修復に協力的というわけでもなかった。
「用があるわけではないんだけど、スピカと話したいなって。ダメかな?」
「まさか。とても嬉しいわ、マスター」
顕現理由も正体も謎のスピカではあるが、私を「マスター」と呼び、どんな時も信じ見守ってくれているということは事実だ。
いったい私の何をそこまで気に入り評価しているのかは皆目見当がつかないが、本来なら一切の力も貸さない立場であろう彼女が私に期待を寄せているというのであれば、こちらも彼女の期待に応えたいと思う。
スピカの正面のガーデンチェアに腰掛け、改めて彼女の顔を真っ直ぐ見る。
私の視線に気づいたスピカは、目尻を下げゆるりと口許に弧を描いた。
「なぁに? どうかしたの?」
眼前の美は圧倒的で近寄りがたいはずなのに、どこか慣れ親しんだ懐かしい感覚を与えてくる。
この懐かしさの理由がわかれば彼女の正体も自ずとわかるのだろうか。
「ううん、なんでも」