──東京卍シスターズ家出事件




事の発端を簡単に説明しよう、




佐野エマ(小6の姿)の家出(3時間)である。




21世紀某日、中学生になったばっかりのマイキー御一行は缶蹴りをして遊んでいた。その場にエマもいたのだが、なんの手加減もなしに中学生のお兄ちゃん達が本気を出してくるので、あまりのウザさとおもんなさに拗ねしまったのである。これでは缶を蹴って遊んでいると言うより、己で遊ばれている感覚だ。男児側が実際どういうつもりかは置いといて。



「もういい!帰る!!」
「べーっっ!!」
「おいマイキー…」



被害経験がおありの方はご存知かもしれないが、スマブラと缶蹴りでイキり出した男は"パッキンが外れていた遠足の水筒"とか"夏の夜に電気消してから頭上を飛ぶ羽虫"と同じくらいダリィので、エマちゃんは怒りで半泣きになりつ家に帰ったのである。誘ってきたのそっちじゃん、ウチ楽しみにしてたのに、ドラケン居るからちょっと色ついたリップ塗ってきたのに、の気持ちである。

マイキーからしたら意味不明である。だって良かれと思って妹を混ぜて遊んであげてるつもりなので。は?何怒ってんの?ワガママじゃん、のお気持ちである。



ドラケン追っかけて来てくれないかなぁ、と期待していた気持ちが余計、まだまろい頬っぺたに伝う大粒の涙が夕日に照らされて地面に落ちていくのを助長する。









帰路へ踏み出したエマの脳内にフッ…と悪魔が囁いた。
そうだ、ヤツらをちょっと困らせてやろう。










そう、









プチ家出である。



















日が暮れて解散したあと家に一人で帰ったマイキーのただいまー!におかえりー!を言ったのは真一郎と爺ちゃんだけだった。
は?まだアイツ拗ねてんの?

イラっとしながら真一郎に「エマは?」って聞いたら「?まだ帰ってないけど?」とか言われた。


目を見張って固まった我が弟に嫌な予感がした真一郎が問いただすと、ケンカして先帰ったとか言い出したので、とにかく一緒に遊んでいたメンバーとツテに連絡をとって地域一帯を探し始めた。












蛍光灯が着いた近所の公園の土管の中で丸まったエマを1番初めに見つけたのは一虎であった。
なぜ一虎が誰より早く見つけられたのか。そう、一虎の姉ちゃんが家出常習犯だからである。キレた姉ちゃんが一虎の手を引いて無理やり家を出ていくせいで、大体の隠れやすい所とか、家出した時に落ち着く場所とか、なんとなぁ〜くわかる特殊技術を持っていた。だからエマ(家出初心者)の隠れる場所なんかすぐに分かった。



「ウチ、ドラケンがよかった………ズビッ、」
「えぇ…」
「………まだ帰らないもん…」
「ん〜、……ン"〜〜〜………」



ワガママに振り回され慣れている一虎は、"今ここで機嫌を取っておかないとさらに拗れる"
ことを知っていたので、とりあえず帰りたくないらしいエマを自分の家で保護することにした。そう、S62の溜まり場になっている自分の家に連れ帰ったのである。




「ただいま〜!!」
\ん〜、/
「あれ、姉ちゃんは?」
「パイセンと出かけたぞ」



リビングから頭をひょっこり覗かせて返事をするのはイザナ(高1の姿)である。
他のメンツは他人の家なことを弁えているのでさすがに勝手にお菓子開けないし炭酸を自分でコップに注いだりはしないのだが、イザナは生まれもって王様()だから、今もリビングで一虎に買い与えられたはずのNARUTOのプレステを勝手にやっている。
一虎は年上の横暴に慣れているので、イザナが勝手に自分のゲームをやろうが潰しさえしなければ全然いいし、むしろ一緒に遊んでくれてラッキーとさえ思っている。姉ちゃんは負けてイラついたらコントローラー投げてテレビごとブっ壊すのでイザナのほうがウン千倍マシである。1番優しいのは竜胆、急に機嫌悪くなったりしないし面倒見いいから。



「え、」
「あ?」
「え?」




ガタガタ言ったが、大事なことは何も人の家のソファの肘置きに足引っ掛けて玉座にしている暴君の生活態度ではない。







黒川イザナとエマ、この時実に10年振りの再会である。







「え、……あの、もしかして、………ニィ?」
「っ、」




まだその呼び方で呼ばれると思ってなかった。
他人の家で菓子パン齧りながらNARUTOやってたイザナは疾風(伝)より勢いよく舞い込んできた修羅場に口から菓子パンを落とし、目ェかっぴらいて停止し、思わずコントローラーをギュッてした。
一方一虎はなにかを察知したので良かれと思ってリビングから退散、イヤお前ん家なんだよ此処。




パイセンのヤベェ発言と思想によってトラウマが上塗りされ宇宙空間に地雷を飛ばされただけで、イザナの気持ちの折り合いはまだまだ着いていない。
一旦保留、それが1番的確な表現。


そのつかの間の平穏に地雷の1つが歩いてやってきたのである。まぁ核ミサイル万次郎よりかはマシだろうが、エマもしっかり地雷なことに変わりはない。




羽宮家のリビングに黒川兄妹の微妙な空気が流れる。


一虎がエマを見つけたのがイザナの運の尽きだったのだろう、その一虎がエマを見つけれたのは姉ちゃんの暴挙に鍛えられていたからであり、そもそもこの家にイザナが入り浸っているのは姉ちゃんのツテ。やっぱ結局姉ちゃんによって巻き起こされた修羅場なのだ、今回も。







「ニィ…」
「、」
「なんで、…ウチのこと、捨てたの…?」
「へ?」
「そんな事する為?」



どこかで言った気のするセリフが耳に流れてくる。


「…………」
「……迎えに行くって言った…」
「っ、」
「約束って、…言った…!!!」
「、」
「エマも行きたいって言った"!!!!」







そう、エマのニィはイザナだけなのだ。







佐野のお兄ちゃん2人をお兄ちゃんと思っていないのではない。




でも、真一郎は真一郎で、マイキーはマイキーなのだ。







……エマは、ママの「迎えに来る」は期待していなかったかもしれない。








しかし、ニィの「迎えに行く」は信じていた。






……今はもう1人じゃないし寂しくないかもしれない。




だが、環境がどう変わったとて、エマが
黒川イザナニィと約束した事実は無くなったりしないのである。







だいたいそもそも、生き別れた時点でエマは3歳、そんな時の記憶なぞ断片的にしか残っていない。


それでも、"黒川イザナ"の名前を聞いて、すぐに「ウチのお兄ちゃんの名前」と思い出せるということは、よっぽど忘れたくなかったか、頑張って自分で覚えているかのどちらかしかない。









ソイツが呑気に菓子パン加えながらゲームやっているのである。





「っ"、なんでなんにも言わないのっ"!」
「…るっせェな、」
「え?」
「…オレとオマエは兄妹じゃない。」
「え?」
「オレの母親は黒川カレンじゃない」
「………」
「オレは他所の子、…血がつながってないんだよ」




これまたどこかで聞いたことのあるセリフが自分の口から出てくる。







しかし、エマが尋ねたのはイザナが兄であるかどうかの是非ではない。


迎えに来るつったのにNARUTOで道草食ってんのはどうなってんだ?待ってンだけど?疾風(伝)の如く急いで来いや、え?と言っているのだ。







「そんなこと聞いてない!!」
「…は??、……や、だから、」
「迎えに行くって言ったじゃん"!!!」
「オマエ人の話聞いてた?オマエとオレは、」
「そうやってみんな約束破るんだ…!!」
「え、」
「ウゥ"〜〜………!」
「エ"っ、、ちょ、…泣くなよ、…オイ…ちょっと、」









\ガチャガチャ、……キィーー……/

「帰った」
「おかえり姉ちゃん!」


ここで嵐のご帰還である。












「で?じゃあこの、エマちゃんは佐野サンの妹で?昔黒川と一緒に住んでたってこと?」
「……」
「うん"」
「これ、ティッシュ、」
「ありがとカズ君"」
「んで、一虎のダチに佐野サンの弟が居て、エマちゃんは家出して今ウチ居るってこと?」
「そう」
「約束忘れて泣かしたとかカスじゃね?約束くらい守れや、ゴミカス」
「ハァアア゚〜〜〜⤴︎︎⤴︎︎???💢💢💢」
「姉ちゃん今日のトイレ掃除当番姉ちゃんの約束だよね、守ってくれるってことだよね」
「おうアタシは美人だからトイレの女神様とトモダチなんだよ、頼んどいたしもう終わってっから使っていいゾ」
「嘘ばっかり…!!!」
「エマチャン?泣きやめ〜、明日目ェ腫れンぞ」
「絡まないであげて姉ちゃん…!!」
「ズッ、…うん、」
「可愛い顔が台無しジャン、勿体ネーよ、強く生きろ?大丈夫だな?」
「うん"!!」
「あそ、じゃアもう遅いから帰れ」
「!」
「!!姉ちゃん…!!」
「ケンカなんだろ?じゃあ帰りな。さっさと帰って謝らせてこい。その、誰だっけ、えっと、ジョン?」
「マイキーだよ姉ちゃん」
「マイキー。」
「………」
「そんな、仲良さげな他所の家のお嬢ちゃん拉致ってたらアタシが怒られるワ、黒川送ってけよオマエ」
「は?オマエまじで言ってる??」
「ったりめーだろ、アタシはそろそろ風呂だし一虎はイイ子だからこんな遅せェ時間に一人で出歩かねぇンだよ、わかったらさっさと出てけ」
「オマエ色々知ってんだろ???」
「それがどうしたんだよ、テメェの事情がなんかの足しになんのか?つかもうメシの時間なんだよ、腹減ったんだよ一虎が。」
「姉ちゃん人のせいにするのやめろよ腹減ってんの姉ちゃんだろ」
「ウソだろ人の心とか無ェわけ?」


"アイツが持っていっちまった"までもなく元々搭載されていなかったので、一虎の姉ちゃんに心を求めたりするのは諦めて欲しい。そんなもん禪院家当主就任よりよっぽど不可能だ。




エマと仲良く手を繋いで羽宮家を放り出されたイザナは、しかたなーく、しかたなーーーく佐野家に向かって歩き出した。





兄が欲しかったのかもしれないが、イザナはどちらかというと自分が兄貴気質だ。しかも優しい兄貴である。
齢6歳にして、今から自分が行く楽しい場所にまだ幼い妹も連れて行ってあげようと思えるくらいには優しいニィである。



フツー上の兄弟はそんなことは思わない。そんな優しい姉ちゃんやら兄ちゃんは絶滅危惧種なのでワシントン条約で保護されている。別に保護されてない六本木の三つ編みジャイアンと一虎の姉ちゃんを見てほしい、……分かって頂けたことだろう。




自分も余裕はないのに、他の身寄りのない奴の居場所を考えれるくらいには元の心が広い。狭まってしまっのは環境要因が大きい。



佐野家の近くまで来ると真一郎が真っ青になりながら「エマー!!!」ってクソでかい声で叫んでいた。いや、もう夜なんだよ。




「ほら、行ってこい」
「え、、、……ニィは?」
「いや、オレは…」
「ねぇニィ、また会えるよね?」




エマは聡いから、イザナがエマを嫌っていないのはわかっていた。でもなんだかこの手を今ここで離してしまうと二度と会えないような気がしたので…


「スゥーーー、…\ただいまー!!!!/」
「は!?」




イザナの手を持ったまま帰還、その流れで真一郎と微妙な空気になりつつ、踵を返そうとしたら全力で引き止められ、お礼とか言われて無理やり家に上げられ、そこで万次郎とご対面…目ェ合った瞬間に殴り合いになり……














「で?その、ジョンに蹴り飛ばされて利き手再起不能かよウケる〜www」
「全部テメェのせーだからな…💢」



なぜ教師はコイツらを同じクラスに分けてしまったのだろう、今日も元気に窓際の後ろ2席で仲良くケンカ(※授業中)している。



骨折していては何かと不自由だろうと、今日は真一郎が迎えに来るらしい。
申し出があった時は気マズさから断ったのだが、真一郎とエマがイザナに付きっきりになると露骨に拗ねた顔をする万次郎に気がついたイザナは、万次郎をちょっとでも嫌な気分にさせるためにお世話になることにしたらしい。
しょうもないケンカである。





こうして、家出事件はイザナと佐野家の和解のきっかけとなり、一件落着となるかと思われた。





しかし本題はここからである。








一虎が、何故か帰るのが遅くなった。




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