──新宿エンカウント-前編
本記録には前編と後編がある。
まず前編の事の顛末を簡単に説明しよう、
新宿が稀咲鉄太少年(小6の姿)の傀儡になった
では新体制の総長は誰か、皆さんおなじみ長内信高である。フツーに稀咲がけしかけた。
小6の稀咲がなぜ長内と接点があるのかと言うと、長内が一虎の姉ちゃんと知り合いだからである。
長内はもともと新宿のゴロツキである。小6の彼がガチヤベェやつに目ェ付けられて絶対絶命になったある日、一緒に走って逃げてくれたのが、当時中1と中3の一虎の姉ちゃんとパイセンであった。ホームアローンよろしく、大男を色んなトラップで鮮やかに交わしていくイタズラなお姉さん達に懐いたのだ。単純でおバカなので。以来週一でラーメン奢る仲である。
あと、長内はバカだけど自分のバカを認めるくらいには素直なヤツである。ケンカだけが強ェ。しかしそのケンカでのし上がれるほどアタマ良くない自覚があるので暴力で誰かをどうこうしようとかそういうことは考えない。調子に乗せられない限りは。ビビりだからすぐにイモるし。
一虎の姉ちゃんとパイセンからしたら、どれだけデカくなっても長内は始めた会った時のまま、大人に囲まれて小便漏らしそうなガキなのだ。「ケンカも程々にね?」「吹っかけられたのしか買ってねぇよ」「バカそれをやめろつってんだよ」「羽宮サンもヤベェだろーが」「ァん?アタシは吹っかけられたのしか買ってねぇよ」「だからオレもだつってんだよ!!」「危ないことはだめよ♡」「……うっす」
なんだオマエら、オカンと息子か??
ある日【パーフェクトれんあい教室】の後にラーメンを食べに行くことになり、そのラーメン屋で稀咲と長内は接点を持った。ちなみに、パイセンは塩ラーメン、一虎の姉ちゃんは豚骨、長内は味噌ラーメン、稀咲はチャーハンを食した。稀咲少年は少食なのだ。
レンゲでチャーハンを食いつつ、コレは使えると思った稀咲少年は長内を愛美愛主の総長までのし上げることにした。
ワンチャン知ってたらラッキーだなと思った歌舞伎町の死神について話題を出してみた。
「あぁ、アイツだろ、罪と罰の、(ズズッ)」
「あの背の高いコね?(チュルチュル)」
一虎の姉ちゃんとパイセンは歌舞伎町ではちょっと名前が通っている。歩いてたら挨拶されるくらいには顔が知れている。昔、長内みたいに助けてやったヤツらが成長して上の立場になってきたので融通が効きやすいのだ。だから愛美愛主の奴も何人か知り合いがいた。
ただし半間修二とは接点がなかった。
半間修二は言うなれば歌舞伎町のミ○キーである。入り浸っている輩でその名前を知らない奴は居ないほど有名なのだ、もちろん一虎の姉ちゃんもパイセンもその存在を知っていた。しかし、別に自分から声をかけることもないので喋ったことは無いし、向こうから話しかけられたことも無い。性別も違うし別に逆ナンするほど男に困っていない。「わぁ長ぇヤツいるな〜」くらいの感覚である。半間修二は自分からケンカを吹っかけないという噂を聞いていたので悪い印象はなかったらしい。
「オレ知ってる、呼ぶか?」
新宿で不良やってる奴には種類がある。家が嫌で逃げてきたヤツと、ケンカ強いからブラついてるヤツ。愛美愛主の大半を占めるのは前者であるが、長内と半間修二は後者に近い。単純に武闘派である。だから少しだけ接点があった。
「ダリー、」
ラーメン奢ってやるつったら案外簡単に来た。多分暇だったんだと思う。てか半間修二は基本ヒマしていることが多い。
「………うぉ、マジか♡」
ソイツは、テーブルまで来たと思ったら一虎の姉ちゃんとパイセンを見てニヤッとひと笑いした。
「こんばんは♡」
「ハジメマシテー。夜中に呼びつけてワリーな?」
「暇だったから気にすんなww」
なぜニヤッとしたのか、それには理由がある。
先程も申し上げた通り一虎の姉ちゃんとパイセンは名前が知れているのだ。もちろん半間修二も2人を知っていた。半間が2人を初めて見たのはフツーに道路だった。喋ってたヤツが2人に向かって挨拶したと思ったその方向を見てみれば、飛び込んできたのは極彩色の眩しい光だった。
半間は別に女に困っていないので自分から声こそかけなかったが、腕を組んでキャラキャラ笑いながら夜を歩くその女達は明らかに周りと違った。なんかバチバチ光って見えた。
そう、半間修二からは一虎の姉ちゃん達がエレクト○カルパレードみたいに見えている。何がそんなにおもしれぇんだろ、でも絶対ェ混ざれねぇんだろーなーとか思っていた。実際、声掛けられたりしなかったし。
これからも関わることはないと思っていた。…だがどうやら違ったらしい。
つまり今ここにはミッ○ーとエレクトリカ○パレードが居るということになり、このラーメン屋は実質ディズ○ーランドである。ウォルトに謝れ。
まァせっかくの機会なのでちゃっかりラーメンを奢ってもらう事にした半間修二(腹減り)は醤油ラーメンを注文した。人の金なのでチャーシューもしっかり増やしてやがる。
「ねぇねぇ、それどういう意味で彫ったの♡?」
半間は、穏やかそうな方の女がいきなりぶっ込んだ質問をしてきたので飲んでたお冷を思いっきり吹いた。
「ソレ初対面で聞いてくるやつ初めてだわwwwwwwww」
「いやむしろソレしか聞くとこねぇだろ」
「あ、聞いちゃいけなかった?…ごめんね」
「別に〜?でもナイショお(シーっのポーズ)」
一部では売春斡旋なんて噂もあったし、なんせエレクトリ○ルパレードに見えているのでもっと気取った女なのかと思っていたのだが、中身はほぼガキのソレだった。そりゃ好かれるワケだ。これアレだあれ、ギャップ萌ってやつなんじゃね?よく知らねぇけど。
「ウワサ通りヤベー女ァww」
「ヤベェってなんのこと?スカート丈うるせぇ生活指導のヤツの家に銀杏撒き散らしてきたこと?」
「ラブホテルに住んでること?彼氏2人居ること?」
「ばはっ♡全部マジなン?ww」
「「ナイショお〜(シーっのポーズ)」」
「エッ、アタシらなんかウワサ立ってんの?ウケるw」「世紀末ハーレー知らない奴居ねェだろ」「そんなか?だってアレ雑魚ばっかだったじゃん」「バイク見せてってお願いしてるだけなのにね」「つか灰谷出入りしてるってマジ?」「灰谷蘭と灰谷竜胆?ガッコ一緒だぜ?」「うわマジなんかwwww」
稀咲少年はずっと黙って羽宮とパイセンの間にから半間とのやり取りを眺めていた。長内は追加で頼んだ唐揚げと餃子で忙しかったから静かだった。
半間修二。彼は稀咲鉄太という残虐の化身のような男に12年間も懐刀として付き合い続けた有能な人間である。さらには指名手配をたった1人で躱し続けるのだ、あまりにも世渡りが上手い。頭がだいぶキレるのだろう。元々のステ値全てにおいてバランスが良く、さらにそれをシーンと目的に分けて使いこなせる。理性を飼い慣らせるのだ彼は。
稀咲少年的には半間修二を活かさない手は無かった。
今日を逃せばもうタイミングは無いだろう。
「オレの駒になれ、半間修二」
「あん?コマ?」
女子2人と長内が御手洗に立ったタイミングではじめて、稀咲少年は半間修二と口を聞いた。開口一番言う言葉ではない、オマエまぢ度胸どうなってんだよ。
ただのガリ勉のガキだと思っていたヤツが急にものすごい上から口をきいてきたと思ったら、オレをコマにするとか言い出した。…何コイツ、オモロ♡
エレクトリカルパレードに隠れていて気が付かなかった"色"を見つけた半間修二は、なんとなく気に入ったソイツに付き合ってやることにしたらしい。
以上、混ぜるな危険が各方向から四つ辻で混ざり合ったこの日が新宿エンカウント(前編)である。
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