密着!灰谷竜胆24時




灰谷竜胆の朝は早い──

現在時刻は午前5時、音楽プレーヤーに入れたお気に入りの洋楽をイヤフォンから流し襟足の長い髪を結ぶ。ギロッポンのエグい高層マンションに住む彼は部屋でグウスカ寝こける兄貴をフル無視し玄関で某有名スポーツメーカーのランニングシューズを履いていた。

マンションの階層と同じくらい肉体に対する意識高い系竜胆は毎朝60分こうしてランニングに行く。



帰宅すればまず300㎖100円超えのEvianで水分補給。身体が温かい間にストレッチを済ませ、すかさずホエイプロテインをシェイクし飲みそれと一緒に亜鉛サプリを摂取。筋トレ後シャワーを浴びその流れで洗濯機を回し買ってきた雑誌をなんかカッコよく読みつつ、朝食の厚切りベーコンと半熟のスクランブルエッグ、クロワッサンを(瓶に入ってるタイプの)フルーツジュースで流し込みつつ時間を潰す。



そうこうしている間に寝ぼけた兄貴が寝室から出てきて風呂に消えていく。




そう、灰谷兄弟は朝と夜、それぞれ一日に2度も風呂に入る。使って5回したら捨てるフワッフワのバスタオルで雑く体を拭いてから腰にオキニのキリアンだかトムフォードだかの香水を振りかけ、カルバンクラインだかグレイブボールトだかのボクサーを履き、水が滴る髪をかき揚げて気怠げにクソ広リビングのバカ高ソファ(カウチ)に腰掛ける。

灰谷兄弟だからサマになるが、パンピがやれば勘違い甚だしすぎてもはや恥みないなルーティンである。是非とも一般家庭の肝っ玉オカン(弁当の犠牲者、早起き)に1度バチギレられて欲しい。


低血圧気味で朝は食欲のない蘭がミキサーに(あらかじめ切られている)レッドドラゴンフルーツとキウイとバナナを突っ込んでスムージーを作り始めた。なおその時に使ったミキサー(=洗い物として産まれてくる姿を大いに誤ったクソだる調理器具)は後で竜胆が洗わされる。なんだレッドドラゴンフルーツて、そんなもんインスタでしか見た事がない。恐らくこういう奴はチアシードとかバジルシードも食う。




腹にエネルギーを入れたところで洗面台に移動、OLよりこだわり抜いた歯磨き粉と歯ブラシ及びフロス及びマウスウォッシュで口内の清潔を確保した後、眉毛を毛抜きで抜いて整え電気シェーバーで髭を剃り、資生堂の洗顔をしっかりネットで泡立てゴシゴシやらず撫でるように洗い、ぬるま湯で丁寧に洗い流す。柔らかいタオルで押さえるように水分を取った後はポーラのBAで保湿する。蘭はしょっちゅうDiorとかSK-IIに浮気をする。最近はクラリフィックにハマっているらしい。


顔が終われば次は髪だ。竜胆は面倒くさがりの兄貴のロン毛をタオルドライしDiorのジャドールを満遍なく伸ばしてレプロナイザー 7D Plusを握らせる。そして自分は140℃に温めたヘアビューロン 7D Plus を髪全体に通しとりあえず一旦ストレートにしてから毛先を外に跳ねさせ、しつこいくらいに三面鏡で確認したあと行きつけのサロンでオススメされたヘアワックスで固定する。そして兄貴に三つ編みを施す。気に入らなかったら解かれるので丁寧に。
……それにしてもバイオプログラミングに金を落としすぎである。ご丁寧に4Dではなく7Dを選んで使うあたり、流石の灰谷クオリティ。これで将来ハゲたらダウンタウンの浜田とかがめちゃくちゃ笑ってくるだろう。



制服のシャツを着崩して緩くネクタイを閉め、サラッとハイブラのカーディガンを羽織りブレザーに袖を通す。ケータイを充電器から抜いてHERMESの長財布しか入ってないスクバとチャリキーを持ち家を後にした。




蘭は実はこういう所だけは謎に滅茶苦茶空気が読めるので、なんでもない顔をして一人でガッコに向かう。竜胆は一虎の姉ちゃんがまだ寝こけているであろうラブホに向かってチャリを漕いだ。




やはり奴はまだ完全に寝ている。青春竜胆は毎日毎日眺めているのに飽きもせず「可愛い…」とか思いつつ頬っぺを撫ぜる。
眺めるのに満足したら、寒がりな一虎の姉ちゃんがローテーションで年中身につけているグレーのスエットの上からセーラー服を着せ、洗面台まで運び歯ブラシを持たせてその間にクソ長ぇ髪をとく。前髪に入った金メッシュ以外染められていない黒髪は何もせずとも艶々で綺麗だ。灰谷=思春期=本命童貞=竜胆はバレないようにシレッと匂いを嗅ぎつつ満足するまでクシを通す。


がま口財布と化粧道具しか入ってない世間を舐めたサイズのVUITTONを首からかけさせた未だ半寝の一虎の姉ちゃんの手を引っ張りガチャピンの靴下を履いた足にキティちゃんのサンダルを履かせ、戸締りをしてラブホを出発。


チャリの後方に乗せてしっかり腰に手を回させたらあとはもう勝手に自分の背中でくぅくぅ寝始めるので、右の肩甲骨の手前辺りに当たるやわやわの頬っぺたの感触を感じながらガッコまでチャリを漕ぐ。ちなみに竜胆はあえて遠回りして土手を経由している。太陽が水面に反射してめちゃくちゃ綺麗だ。なお背景を朝日から夕日にかえたらそれはもう"時かけ"なのだが、残念なことに一虎の姉ちゃんは朝どうやって登校したのかの記憶がまったく無い。オカルト好きの一虎の姉ちゃんはこの身近な七不思議()に勝手にテンションが上がっている。ドンマイ竜胆。



1限が終わった頃に一虎の姉ちゃんは目を覚ます。目を覚ますとカバンから鏡とラブライナーを取り出して化粧を始める。

「灰谷竜胆また唇舐めっただろ」

竜胆は唇が分厚くて強い。だから乾燥したりすることは滅多に無いのだが、この、一虎の姉ちゃんがマキシマイザーを出したこの瞬間に敢えて「乾燥してます」みたいなフリをして唇を舐めると特殊イベントが発生するので毎日毎日しっかり舐める。

「切れたら痛てーだろー?」
「ん。」
「買えよもう自分で」
「ん〜?」←すっとぼけ

唇がスースーするのに幸せを感じつつ、さっき自分の唇に着いたティントが世界で一番可愛い女の唇に着くのを熱の篭ったタレ目でガン見しながら「いつか直接チュー、いつか直接チュー」と思うのだった。なお一虎の姉ちゃんは「昔一虎によくやったなーメンソレータムだったけど」と思っている。そのうち温度差で発電とかができるようになるかもしれない。再生可能資源片側通行青春エモーション。



4限が終わると昼休みだ。唯一持ってきた財布を使うタイミングである。購買にHERMESの長財布はもはやダサいまであるが。

「あ、今日木曜じゃん。灰谷竜胆アレじゃね?メンチサンドの日じゃね??」
「そうだな」

こういう所が好きなのだ。オレがメンチサンド好きなの勝手に気がついて勝手に覚えてる。やめて欲しいニヤけそうだ。毎週ニヤけそうになっている。
その後わざわざ別行動することも無いので仲良く購買まで行ってメンチサンドを購入。羽宮は人気のイチゴオレじゃなくてバナナオレを購入する。竜胆は「意味わかんねェなんでがま口なの♡(キュンです)(※心の声)」と羽宮に変態チックな興奮を覚えつつ(※毎回)クラスまで帰ってなんでもない話をする。


教室の左側、窓際の後ろから2番目の席で椅子に横向きに座り壁を背もたれにしながら、自分の右側で数学を解く羽宮を眺める。竜胆はそこまで楽しさが分からないけど、数学の時間だけはサラサラ問題を解いていく羽宮が大好きだった。なおその間ずっと羽宮を眺めているので竜胆は数学の成績が良くない。しっかりしろ理系コース選択。


放課後、一虎の姉ちゃんはそこら中に友達(猫)がいっぱい居るのでありとあらゆる場所に寄り道する。これが徘徊ルートだ。ごくたまにご一緒するが、「家ちげー方向じゃん、じゃあナ」とか言われて大体撒かれる。なんせ一虎の姉ちゃんは朝の記憶がない。一人で来て一人で帰っていると思っている。徘徊ポイントが多い上に謎なのがこれまた厄介だ。
竜胆は何も用事がないときは居そうなポイントに足を向けるが六本木のカリスマ業(関節技)が忙しいため毎日毎日追っかけ回すことは出来ない。でもまァ、羽宮のそういうツレない所に燃えているから恋とは仕方の無いものだ。




さてさて明日は金曜日。土日会えるかわかんねェからしっかりこの目に焼き付けることを決意しつつ、ちょっと入念に風呂に入って入浴剤とかを使う乙女な竜胆だった。


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