──運命のバレンタイン




そう、全ては一虎の受験当日に向けて少しずつ加速していった。




まずは(学力が)イカれたメンバーを紹介しよう。


@場地圭介(偏差値25)
A場地圭介(国語2点)
B場地圭介(数学4点)
C羽宮一虎(志望校D判定)
D場地圭介(英語0点)
E特別講師一虎の姉ちゃん(鬼)
E場地圭介(成績オール2)
F特別講師稀咲鉄太(鞭担当)
G特別講師灰谷竜胆(呼ばれてないのにチャリで来た卍)


以上である。




ではメンバー()を紹介した上で事の始まりを簡単に説明しよう、

一虎の受験前の三者懇談に呼び出された一虎の姉ちゃんが、一虎のD判定の12月の五木模試(絶望)を担任に突き出されて怒られが発生した。



姉「お前、そんな必死コいて勉強しなくてもイーつったけど、最低限この、就職強いトコには入れるようにしとけよつったよなァ一虎ァ〜…一応言い訳聞いたるヮ、……どーゆー事なん?ァア"?」
虎「、…でもまだもっと下にコーコーなんかいっぱいあんだろ!!!」
姉「自己管理サボったヤツが屁理屈タレてんじゃねぇ!!!お前今日から毎日アタシの前で勉強しろ!!!💢💢」
虎「ヤーーーダァーーー!!!!」




一虎はラブホ(住まい)に連行されるあいだ、散々「でも場地は〜」とか「パーなんて〜」とかウダウダウダウダ言い訳しまくった。





そこで召喚されたのが



場「よォ、なんか久しぶりだなぁ姉御!」



またしても何も悪くない場地圭介(巻き込まれ体質)である。





一虎の姉ちゃんは、公立中学に留年制度が無い事くらいは知っている。厳密に言うと、学力において留年制度が無いことを分かっている。場地が、登校日数とか、それこそ少年院の兼ね合わせで留年したことくらいは想像が着いた。

だから、一虎が言い訳できないように場地もアタシの前で勉強させればどうにかなんだろ、くらいの軽い気持ちで召喚した。場地のバカさを見くびっていたのだ。一虎を教えながらソコソコ場地の面倒も見てやったらいいカナ、くらいに思っていた。
無論、大間違いだった。


コンマ1秒刻みで停止する場地の利き手に絶望を感じながら赤ペンと青ペンで計算間違いと四則の順序を場地が書いた途中式に記入、ミミズが走ったみたいな消し残しの多い場地のノートは赤と青に彩られた。





いや、悪い予感はしていたのだ、場地のカバンから瓶底メガネが出てきた時点で。



一方場地は、一虎の姉ちゃんがだいぶ頭イイことを知っている。
場地の家は団地住まいの母子家庭である。
塾に通うようなお金はないし、かと言ってマンツーマンで場地に勉強を教えてくれるようなセンコーも先輩も居なかった。バイク馬鹿か族のダチしか周りにいなかった。

場地は、「自分がバカだから留年した」と思っている。本気で。

なぜ自分が留年したかを詳しく調べないところに彼がバカと言われる所以と、彼が巻き込まれ体質でありながら真っ直ぐな良い奴である要素がふんだんに含まれているのではあるが…
とにかく、一虎の姉ちゃんに勉強を教えて貰えるコレは、留年回避のまたとない機会である。母ちゃんが本屋で買ってきてくれた『やさしい数学☺︎』とか書いてあるワケわっかんねェドリルと大量の使いかけのノートと相棒の瓶底メガネをボストンバッグに詰め、万全の体制で助けてもらいに来た。お袋を泣かせないために。




一虎の姉ちゃんは場地がお気に入りである。場地がまだ小学生の時代、思いつきで渡したプロフィール帳の尊敬している人物の欄に"名取裕子"とか渋いこと書いて返してきたからクソ笑った。
「なんで?笑」って聞いたら「頭よくてなんかスゲェしカッケェから!!」って元気良くお返事されてさらに腹抱えて笑った。
別に名取裕子がサスペンスドラマの事件を解決しているわけじゃないし、「コイツちょっとおバカなんだな」って思ったが、弟の友達がこんなヤツばっかりだったら安心だな、とも思った。


知らねぇガキならいざ知らず、大真面目に頭良くなろうと思ってそうな弟のマブダチを無視できるほど冷徹ではない一虎の姉ちゃんは、場地の横で「まァとりあえず完全暗記科目の社会からやったら合計得点一瞬で爆上がりすっかな」とかいう狡い戦略を立てて姉ちゃんの目を誤魔化そうとしている受験生の自分の弟を一旦置いて置いて、やる気はあるが学力が足りなすぎる場地の面倒を見てやった。









一方、「今日も羽宮に構ってもらうためだけにちょっと難しい数学の問題(数列のクソややこしい嫌がらせ問題)を見つけて来た」稀咲少年は先に居た2人を邪魔だなと思ったので、自分も手を貸してさっさと片付けようと思った。
無論、大間違いだった。



稀「だから移項する時は元ある数字の後に書け💢」
場「、?、、、???ハ?…なんで??」
稀「いいから書け💢💢💢」

ソリが合わねぇやつ同士のソリが合わねぇやり取りである。

姉「場地ィ、元々並んでるやつに割って入ったらダメだろ?順番には並ばねーと」
場「、……、、こうか?」
稀「途中式を飛ばすなイコールの位置を揃えろ💢」
場「??……移項る?」
稀「イコールは動詞じゃない名詞だ💢💢」


なお、場地が一虎の姉ちゃんと稀咲に2:1で両肩から教えられてる間、一虎は飛び入り参加した竜胆君と和気あいあいと口頭で受験に全く使えねぇスラング英会話を楽しんでいた。

イェ、じゃねぇ。
ラブアンドピースでもねぇ勉強しろ勉強。













どうやら場地が本気でベンキョーを始めたらしい。
そのウワサは東卍を駆け巡った。
あの、場地が。国語辞典逆さで読んでる場地が、集会の前のスキマ時間に単語帳握って千冬に助けられながら英単語を覚えている。千冬が単語帳持って問題だして、それを汗かきながら必死に考えている。ゴキの荷物入れるトコに英単語帳と赤シートが入っている。


それは中3が大半の幹部である東卍を震撼させた。


コーコー行く気無い勢のマイキーやらドラケンやらパーやらペーはさて置き、デザイナーになりたくて進学予定の三ツ谷は「教えてくれるとか羨ましいな〜…」と思わず呟いちまったので一虎にラブホまでに連行されて身代わりにしようとされた。残念ながら生贄を何人連れて来ようが一虎が勉強から逃げられることは無いが。
場地を教える声がヒートアップしている横で三ツ谷もちょいちょい教えて貰いつつ、パイセン(※美人)に連れてきたマナとルナを見てもらいつつ(邪魔しないように一緒にお出かけ♡)、着々と進路への追い込みをかけていた。


場「姉御頭良すぎねぇ?将来の夢何?」
姉「あん?………えっと、……ソノ、





























…………お嫁さん…//////」


その場にいた全員が驚愕の顔面を向け一虎の姉ちゃんを凝視した。イザナを待つために向こうのソファーでテトリスやってた鶴蝶も思わずコントローラーを落として振り返った。
この場の誰もが、まさかこの凶暴劇物暴走女の口から「お嫁さん」だなんてファンシーなワードが出てくるとは思っていなかった。しかもなんか照れてやがる。普段はゴリラにしか見えねぇのに、今この瞬間だけは世界で一番可愛い女の子だった。



姉「え、、……なんか言えよ」
場「エ、」
姉「だ、だって憧れんじゃん、、、その、指輪とか……お揃いだったり……(モジ…♡)」


モジ…♡では無い。何故か1人でテンションが高くなっている一虎の姉ちゃんを除き、この場の全ての人間がUFOを見る目で一虎の姉ちゃんを凝視している。竜胆に至っては眉間に皺を寄せつり眉が4割増でつり上がっているし、稀咲少年はメガネが謎の全反射を起こしている。

沈黙を破ったのは一虎であった。




虎「妄想変態おばさんじゃん」



一虎はコンマ1秒後に場地に思いっきり頭を押さえつけられて一緒に土下座させられた。












紆余曲折を経て、頭の使いすぎで腹が減る場地のペヤング半分こ係の千冬まで召喚され、遂に一虎と三ツ谷の受験の日がやってきた。
本日はバレンタインデー。
ちなみに、場地と千冬の三学期の定期考査は1週間後に控えている。




あぁ、そうだ、伝え忘れていたことがある。
本記録の主役は場地じゃあない。
先程紹介したイカれたメンバーのG、

















背番号本命童貞、灰谷竜胆の一回表である。





姉「一虎、受かるかな〜」
竜「いけんだろ」




本日はバレンタインだというのに、一虎の受験日だということしかの頭にない一虎の姉ちゃんと、しっかり手作りの逆チョコを用意してラッピングまで凝って持参した竜胆がイイ感じのカフェで向き合っている。
さっきから、竜胆はタイミングを見計らいすぎてむしろ見逃している。




姉「………え?マジなんで今日呼び出されたん??」
竜「っとぉ〜…」
姉「?なに?モニタリング??」


ちなみに蘭とモッチーが同じカフェでコッソリ張って居るのでガチでモニタリング状態だ。蘭は女装してるしモッチーはサソリのしっぽを隠しているので、全然バレてないけど。


モ「(俺背中押してこよっかな)」←ダンディな紳士のコスプレ
蘭「(オモシレーから黙って見てろって)」
↑女優帽



竜「……っ、スゥ、……アノ、バレンタイン、作った、ンダケド、」


竜胆、カタコトである。
ついにイェ語しか喋れンくなったらしい。


姉「へぇ?そうなん」


羽宮、まさか自分が貰うと思ってないし、さっきからケータイしか見ていない。


竜「エット、チョコレートトカッテ、キライ?」
姉「いや?ケッコー 好き 」
竜「ヴァッ、」


"好き"のワードで心房細動が起こった。チョコレートに向けた"好き"でトキメクなよ六本木のカリスマ。


竜「(スッ……)」\ガサガサッ……/
姉「あん?」
竜「………あげる」
姉「なんで???」



\ッッダァンっっ!!/
姉竜「「っ!?」」



蘭「(おいバカモッチー、静かにしろ)」
モ「("なんで???"じゃねーよ!!!おめーが好きなんだよ大バカが!!!)」

思わず舌を噛み締めながら机を叩いたモッチーのおかげで、竜胆の緊張がちょっと解れたらしい。
なお、竜胆はモッチーと兄貴が変装してまで監視してると思ってない。モニタリングされてるって知らねぇ。



竜「なァ羽宮」
姉「え?ア、うん、何??」
竜「好き」



モ蘭「「!!!!!!」」
つ、遂に言った〜〜〜〜"っ!!!
外野に衝撃が走る。




姉「・・・へ?」
竜「好き、ずっと前から大好き、初めて見た時から大好き、オレと付き合って、」
姉「ホァ、」
竜「なァ羽宮もオレのこと好きになって、俺のカノジョになって、そんでオレのお嫁さんになって…?」


ピンクに紅潮したほっぺたにタレ目をトロンと垂らしながら、力の抜けた羽宮の手を握っている。いつもは吊り気味の眉毛も、この時ばかりは気持ち垂れていた。



モ「(言った!!!)」
蘭「(なんで最近のやつ(※九井を思い浮かべている)は一発目から結婚誓うワケ??オレが知らないだけで、もしかしていきなりプロポーズってトレンド??カリスマの俺が知りえないトレンドって何)」


オレもいきなりプロポーズしてたら良かったワケ?などと、未だにパイセンに未練タラタラの蘭は、冷めちまってヌルくなったアッサムを一気に飲み込んだ。







竜「顔赤い、照れてる?かわいい、」
姉「ヘァ、」
竜「なんでそんなに可愛いの、可愛すぎ、ダメ、オレのお嫁さんになって、」




灰谷竜胆、"兄貴"と"兄ちゃん"を天然で使い分けるタイプのあざとい弟である。
天竺の弟属性は2人、片方が末っ子の鶴蝶、もう片方が何を隠そう灰谷竜胆である。

昔はもっとキンキンに尖っていた蘭の弟を17年も続けてきた彼は、空気が読めてソツがないデキる弟であるし、立場的にも本人の趣味的にもクールな方向性の雰囲気を出している。実際、蘭以外にはほとんど喋りかけないし、蘭ほど社交的でもない。羽宮と一虎みたいな、気に入った人間にはグイグイ行くが、基本人見知りで他人の事に興味が無い。
しかし彼には、弟や妹独特の「なんかこの子に嫌われたくない」という謎のオーラがある。ワガママ言っても許される、あざといので。イザナでも、竜胆に直接関わる前にわざわざ蘭を通す。
つまりまァどれだけクールにカッコイイをめざしても、本人の特性は「カワイイ」であるということだ。


そして今、そのカワイイ本性が、「カッコイイになりたい」というストッパーを忘れたように口からドンドン流れ出している。





姉「ゥア、ちょっと、マッテ……マッテ………」
竜「指輪、お揃いがいいって言ってたから買ってきた、」
姉「マッテ、」
竜「待たない。なァ、付き合ってくれるよな..........?(ガシィッ…)」←両手で両手を握る



あざてぇ上目使いである。



姉「アノ、全然、知らなくて、いつから、」
竜「だから、初めて見た時からだって。
少年院の頃からずっと好き」
姉「!?は??????」



逆にあそこまで露骨でなんで知らなかったのかが分からない。




竜「付き合うって言うまで帰さねーから」
姉「イヤ、ソノ、」
竜「なんだよ。なんで、.....ヤなの..?オレのこと嫌い.......?」



嫌と言いにくいし待ってくれない雰囲気である。
実際、こういうわかりやすい言葉でガン詰めた方が一虎の姉ちゃんには効くので、竜胆のこの戦法は正しい。



姉「ヤじゃぁ、ない……ケd」
竜「じゃあ!!今日からオレ、羽宮の彼氏!!!」
姉「声がッッッ!!!
声がデケェんだよバカ!!!!!/////////」




モニタリング中の外野2人は、少年のように笑う竜胆とやっといつもの調子に戻ってきた羽宮を一景。

「「(オレらいい仕事したワァ………)」」

なんの仕事もしてないくせにやり切った感じを醸し出し、脳内にGetWildを流しながら冴羽獠のようにカフェを後にした。














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さて、本日は2月22日

バレンタインで竜胆と羽宮姉が付き合い出してから1週間が経った今日、集まったメンバーを紹介しよう。


@羽宮姉
Aパイセン
B何でも言うこと聞いてくれる赤音ちゃん
C柚葉ちゃん
Dエマちゃん
Eヒナちゃん
F千咒ちゃん
Gパイセンと柚葉が預かってたマナちゃんルナちゃん



1週間前、羽宮姉が付き合い始めたという噂が流れ、関東一帯に激震が走った。


あの世紀末ハーレー女が!?
ウッソだろ!?!!!?


その激震が走ったのは男だけじゃない、
まずパイセンが大喜びで飛び跳ねてマグニチュード1くらいいった。だってパイセン軽いから、羽が飛び跳ねてるようなもんである。


そこで、女子会を開くことになった。

格闘バー:テラノで。




パイセンが誘ったのは2人、
赤音ちゃんと柚葉ちゃんである。




ならエマとヒナはどっから湧いてきたのか、激震が走った一虎と場地が頼み込んで聞いて来てくれつったのである。


一虎は、竜胆を応援していたがガチで付き合うと思っていなかった。しかもオレの受験中に。見たかったんだけど何??隠してんじゃねーよオレ弟だぞ??のお気持ちである。

場地はテストでそれどころじゃねぇ。姉御に勉強教えてもらったんだから進級しないとなんねぇ。そんな女子会に参加するどころじゃねぇが姉御がついに頭おかしくなったのかと思って心配している。



千咒はもう格闘バー:テラノの正社員だから当たり前にいるし、当たり前に賄いのメロンフロートを飲んでいる。んまー★とか言っている、可愛いな千咒。



赤「彼氏くんのことなんて呼んでるの?」
姉「……なんか、…灰谷竜胆って他人みたいでヤダらしくて……その、……りんどーって、」
パ「で、どこまでいったの?」
姉「どこまでって何"!!!!」
赤「ちゅーう?ちゅーう?」
姉「ぅあ"、……それは、……………昨日、
……1週間、記念、………だったから」
一同「「「「キャー♡!!!!」」」」



さっちゃん()はパイセンの幸せそうな顔を見て幸せな気分になった。黒い衝動なんて見る影もねぇ。愛の形だけがここにあった。


パ「じゃあ次は【ピ──】ねっ♡」


さすが190cm越えの大男を襲っといて大喧嘩するぶっ飛び女である、気が早ぇしとんでもねぇこと言い出した。ド昼間なんだよ今。


柚「エッチな下着とか持ってんの?」
姉「エッチな下着って何"、ユニクロ"」
赤「あっ!買いに行かないとっ!」
エマ「ウチかわいいトコ知ってる〜」
ヒナ「千咒ちゃんお口の周りついてるよ」
千「え、どこだ!」



サ「…お、どうした」
パ「ちょっとお買い物に行ってくるわ?さっちゃん、お会計、」
サ「祝いだ、タダでいい」
パ「ありがとう!…でも大丈夫?経営とか、」
サ「昨日めちゃくちゃ儲けたからOKだ。
おいアジタート!!」
姉「なんだよっ"」

姉ちゃんは赤音ちゃんと千咒に腕を組まれてランジェリーショップに連行されるらしい。

サ「はっ、幸せになれよ!!」
姉「どいつもこいつもよぉ"!!!!」




この時の女子組もサウスも、一虎も竜胆も大寿も稀咲も半間も天竺も佐野家も、みーんな、知らない。
幸せは、なんでもない理不尽がきっかけで、ガラガラ崩れることを知らない。
今、面白ぇバカなことに全力で乗っかって、気に入らねぇことに反抗して胸ぐら掴みあってる時間がどれだけありがたいか、気づいたの時にはもう遅いことを、まだ、知らない。


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