──世紀末ハーレー盗難事件
その世代にぶち当たる不良一同が頭を抱えて呻く伝説である。
事の顛末を簡単に説明しよう、
一虎の姉ちゃんのハーレーが盗まれた。
まず何故当時中学生の彼女がハーレーを持っていたかというと、中学入ってすぐ出会い、ズッ友を誓った女のパイセン(ゆるふあ)の彼氏が開業医の息子の大学生だからである。
一虎の姉ちゃんは不良娘であった。気に入らねェ親父の居る家には帰らねェし、センコーは嫌いだからヤジる。
でも、ケンカしたいわけでも何でもなかったので、邪魔するやつ以外をボコすことは無かったし、そこいらの男よりも漢だったので女にはモテた。
レディースという訳でもないが、喧嘩や悪行で名をとどろかせていたお騒がせ女子中学生が羽宮一虎の姉ちゃんの正体であった。
拠点にしてる歌舞伎町をパチキでシメたのが当代の女王、一虎の姉ちゃんであった。
ハーレーはパイセンとオソロで買ってもらった。パイセンが中学卒業しても一緒にツーリングするって約束を形にしたのだ。カレシの金で。というかカレシの親の金で。経済は欲と見栄で廻るのである。
パイセンがウルトラで一虎の姉ちゃんがストグラ。と言ってもウルトラの余りの運転しにくさにパイセンはいつも一虎の姉ちゃんのケツに乗ってる感じである。もちろんノーヘル2ケツである。一虎はケツには乗せてもらったことはあれど、ハンドルを握らせて貰ったことは無い。あ、掃除させられる時は触るけど。
フツー暴走族は未成年でお金が無いはずなので、先輩から貰ったり部品集めたりそういう過程を経てやっとこさ国産車を手に入れるものなのだが、彼女たちは開業医のボンボンとかいうチートアイテムを持っていたので、おおよそ10代の女子に似合わぬクソデケェ車体とバカ長ェ黒髪を夜風になびかせていた。
一虎の姉ちゃんは170cmとガタイが良かったので軽々乗りこなしていたが、それに比べたら可憐なパイセンにウルトラはデカすぎたらしい。当たり前である。オッサンでもキツい。一虎の姉ちゃんがゴリラなだけである。
……話が逸れたが気を取り直して……、
そんな大事なハーレーが盗まれたのである。
肌寒い時期の夜更け、当たり前のようにスエットしか着てないショッキングピンククロックス☮️の乙女達はあまりの寒さととりあえず帰ろうとしたパイセンの家の遠さにブチ切れ、頭に血の昇った状態でパイセンの家に止めてあったハーレー(ウルトラ)に乗り換え東京一帯を爆走しだした。そう、盗品の方のハーレー(ストグラ)を盗んだ不届き者を狩るためである。そんなもんを盗むのは決まって不良・ヤンキー・族である。
近辺の暴走族を全部当たったが、どこも黙ってバイク点検をさせなかったので、一虎の姉ちゃんとヘッドがタイマンを張る形で頭突き1本でノシて回った。
ヤベェヤツは全員少年院に入っていたのでその辺のザコをボコすのは一瞬であった。
彼女は一虎の姉ちゃんなので顔面が最高峰であり、その最高峰の顔面をヘッドの正面に持ってきて肩を持ち、相手がちょっと見惚れて停止した次の瞬間に自分の石頭でド突いて潰す。
一撃必殺である。
チッセェグループはどこを探してもなかった。
もう残るは1つ。
そう、黒龍である。
2人とも黒龍はクリーンだと聞いていたので最初は疑わなかったのだが、マジで全部のグループを頭突きで沈めた今残っているのは黒龍しか無かった。
黒龍の集合場所にドピンクのハーレーで突っ込んだ2人は佐野真一郎に向かって事情を説明をした。
しかし黒龍のメンバーも黙って愛車を点検させろと言われても納得できない。いや見せるだけなんだから見せてやれよという気もするが。まぁ彼らは血の気の多い不良なので。
ということでやはり真一郎とのタイマン勝負になり、頭突きをしてノシた結果大人しく車検()をさせてもらい、
…………入りたての下っ端が盗んでいたことが発覚。
あらゆることにムカつき、盗んだやつがヒョロっちぃことにもムカつき、あんましカッコよくなかったことにもムカつき、真一郎の似合ってねェリーゼントにもムカつき、雨にもムカつき、風にもムカつき、更にはパイセン家で月9撮り忘れたことに気がつき、
荒れ狂った一虎の姉ちゃんは綺麗な顔を不動明王にして盗んだやつをボコしまくり、「このままじゃ死人が出る…!!」と捨て身で止めに入った真一郎までボコしまくり、でも真一郎が女は殴るなって言うし、元々オレらがやらかしたことなので下手に手を出す訳にも行かず、断腸の思いで死人が出る前に救急車と警察に通報。
連行されてる時でさえ
「テメェこの野郎オマエが盗んだせいで歩かされてクロックスのヒモちぎれただろうがコロスぞ!!!!」
「お、落ち着きなさい!」←警官
「ウルッせぇ死ねやハゲ!!触んなセクハラだぞ玉潰されてぇのか!!ぁあ"!!?!」
「ヒェッ…」←ワカ
「歌舞伎町から南麻布までどれだけ歩いたと思ってんだ死んで詫びろや!!!出てきたらブッ殺してやるから覚えとけぇァ"!!!!」
「噂には、聞いてたが……」←明司
「あの分だと鑑別所出られないだろうな…」
「あらあら〜、次は少年院で待ち合わせかぁ…」←パイセン
「いや少年院はダチ行けねェけど…」←ベンケイ
「ん〜、じゃあお手紙書かなきゃ♪」
「お手紙て」
「白ヤギさんたらお手紙書いた♪黒ヤギさんたら読まずに食べた♪」
「狂ってんな」
この調子である。
とまぁこの流れで一虎の姉ちゃんは鑑別所、真一郎と下っ端は病院送りになり、パイセンはワカがウルトラの後ろに乗っけて送って帰った。ストグラはベンケイが責任持って一虎ん家まで届けた。
鑑別所に行った姉は勿論少年院√に分岐し、何故か男子の施設に収容され、そこでまぁ同い年のヤベェやつらに出会うわけだが…
この一連の流れがあり、一虎の座右の銘は「バイクだけは盗むな」になったのである。
羽宮一虎。彼はDVクソ親父と頼んない母親の長男として生まれた。それだけなら原s……んん"、どっかの世界線と同様ちょっととち狂ったヤツに育っていたかもしれないが、この世界線()では姉という強烈な存在がいた。
弟にとって"姉"というものは元々の属性が強烈である。その属性の上に中身が上記であるため、一虎はそれはそれはヒヤヒヤしながら育った。
それと同時に、横暴であるが筋は通っている()姉を慕って育った。
姉は家の中で一番心が強かった。自分勝手だけど。
一虎からしたら、別に姉ちゃんは悪いヤツじゃない。ただのバイクが好きな不良娘である。
怖ぇけど、優しくねぇけど、大好きな姉ちゃんである。
……父のDVは仕事疲れが理由であった。彼の家やら持っているゲーム機やらを見れば分かるかもしれないが、金はあったのである。
給料のいい代わりに気を揉む接待、営業などなど…それに追い詰められた父親がやることが
躾であった。
しかし、それを一虎の姉ちゃんはヨシとしなかった。
「姉ちゃんが中学に上がってまもなくした頃、母さんに暴力を振るう父さんに耐えられなくなって、最終的に家の窓ガラス全部と父さんが買って1週間くらいしか経ってない新車のフロントガラスをバキバキに割って家出した。
オレを抱えて。
行き着いた歌舞伎町の自販の前でコンポタを姉ちゃんだけが買って、「オレにもちょうだい」つったら下に残った取れねぇコーンだけ渡されたの二度と忘れないと思う。
何日かたって、雨が降ってしゃーなしで家に帰ったら離婚が決まってて、姉ちゃんを父さんと母さんが押し付けあってて、最終的に母さんがジャン負けして、オレと姉ちゃんは母さんについて行くことになった。」
「いや、いやジャン負けで親権キメてんなよ。」
もっともである。
「……はぁ……。オマエの姉ちゃんがヤベェことはわかった。で?なんでそれオレに話したんだ?」
「来週出てくるはずだから迎えに行くんだけど、着いてきてくんね?」
「エッ…なんでオレなんだよ…」
「場地しか居ねぇじゃんこんなん着いてきてくれんの」
「まぁいいけど」
1週間後
少年院の門の前
「よォ久しぶりだな一虎、アタシのストグラちゃんと手入れしてたか?(ワシワシ…)」
「してたよ!」
「いい子だオマエにはこれをやろう」
「なにこれ!」
「アメ」
「………」
「アン?誰だコイツ」
「友達の場地!!」
「あっそ、仲良くしてやってな〜?オマエにもやるよ、ハイ。」
「ありがと」
「ァ?」
「ゴザイマス」
「あ、そうだ、、、
\おーいイっザナ〜〜〜っっ!!!
悪ィおっ先〜〜!!!!☆☆☆☆☆/」
\ガンガンガンガン!!パリィン…!!!/
\やめなさい!!!!/
「ダハハハハwwwアイツ絶対満期だろwww👉」
「姉ちゃんイザナって誰?」
「ァ?ブラコンの痛ェヤツ」
「つかここ男の施設じゃね?」
「掃除とか言われて腹たったからホウキ割って〜元居た女用施設の女子従えて国家を築き上げてデモしたらアタシだけ移された」
「姉ちゃんスゲェ!!!」
「ヤベェの間違いじゃね???」
「\あらあら出てきたの〜?/」
「っ\パイセン!!!/」
「紹介したいお友達が居るから会いに行きましょ〜?」
「赤音ちゃんって子ッスよね!行く!!」
「あっ、姉ちゃん!どこ行くの!今日ケーキだよ!!!」
\メシまでには帰る〜!!/
「……オマエの姉ちゃん、………」
「カッケェだろ?(にっ)」
「………ソダナ…(死んだ目)」
この時の場地(小学生の姿)は知らない。
一虎の姉ちゃんとか正味他人事だったのに、姉ちゃんのせいで数年後一虎と一緒にピーチ姫よろしく己を賭けて血のハロウィン()が起こることも、他に頭抱えたくなるようなヤベェことが多発することも、まだ、知らない。
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