──大乱闘クリスマスブラザーズ




なんとなく察してる方しか居ないと思うが一応事の顛末を明記しておこう、




柴大寿周辺の殺傷沙汰兄弟喧嘩伝説である。




まず、クリスマスになる前に黒龍の現状をお伝えしよう。




遡ること数年前、

イザナが「九代目はオマエに譲る。オレはもうどうでもいいから頑張れ」とかめちゃくちゃテキトーなことを言って総長を辞め、九代目にまつり立てられた青宗は、とにかくどうすればいいのかわっかンなかったため、1度原点に戻り佐野真一郎に指示を仰いだ。




「もうオレのモンじゃねェからあんま偉そうな事は言えねェけど、できることなら元に戻ればなぁ」



そう言われた青宗はやらかし過ぎていた喧嘩以外の犯罪行為を体張って止めさせた。タイマンは強いのだ、タイマンは。時にはヒールの角使ってメンバーを教育した。もはやそれは喧嘩というより調教かプレイだ。いたいけなメンバー数十名が青宗(綺麗な顔)(ピンヒールでチンコ踏んずけてくる総長)に性癖をバグらされたことは言うまでもない。
だから黒龍はピンヒールで股間を踏まれて喜ぶ変態ばかりになってしまった。
ピンヒール調教で忙しかった青宗は少年院には入っていない。一虎は(半分くらいは)オマエの友達のせいでデビューを果したのに…しっかり闇落ち暴走爆裂九井(※まだこの時は赤音さんと付き合ってない)の手網を握っていて欲しいものである。




そうして黒龍は古き良き初代の価値観を取り戻したのだが………なんせ同世代には飛ぶ鳥を落とす勢いの東京卍會、黒龍元総長が率いるS62の横浜天竺という、佐野カリスマのバケモン列強がトップを突っ走っているのである。しかも天竺に至っては六本木の灰谷兄弟も川崎の呪華武も放し飼い状態でやりたい放題である。最近では新宿愛美愛主もその名前をよく聞く、芭流覇羅に変わったが。

青宗がどれだけ頑張れど、カリスマ佐野真一郎も軍神明司武臣もワカとベンケイも居ない黒龍が関東トップに戻るのは現実問題不可能に近かった。




しかし、青宗は憧れの真一郎に「元に戻して欲しい」と頼まれたのだ。これを叶えられなくしてなにが総長か。心を自分で埋めるため、憧れの人から引き継いだ大事なチームの治安を維持しつつ、返り咲きへの手がかりを掴めないまま中学生になってしまった。




そんなある日、初恋拗らせディルムッドオルタ九井(※まだこの時は赤音さんと付き合ってない)に「ウチの学校に"バケモノ"がいる」と紹介された青宗は藁にもすがる思いではるばる九井の学校まで出向いた。
何としても仲間にせねば。他力本願ではない、でも現実問題自分一人ではどうしようもない。どんなバケモノが出てくるのかは知らないが何としてでもぶっ飛ばしてシメて仲間にせねば。





「ツラ貸せや柴大寿」

「楽しませろよ?」












高圧的にかかっておいて、力の差は圧倒的だった。


これは、最早オレが総長やるよりコイツが仕切った方がいいのでは……??と思った青宗は無意識に「アンタがボスだ」と呟いた。


「いいや、総長はやらねぇ。忙しい。」
「なっ!?」
「でもまァ、オマエが新しい黒龍を作んのには協力してやる。…その代わり九井!!オマエもオレに命を預けろ!!!」








この時大寿がなぜ青宗に協力したのか、

それは家の中で柚葉、東卍で三ツ谷に甘やかされまくってる情けねェ八戒をイッパシに成長させるための教育機関を創りたかったからである。





アイツは余りにも周りが見えて無さすぎるのだ。
昔、八戒が三ツ谷に「こんなん押し付けられてつらくねーの?」と言ったその"こんなん"は、全て八戒以外の他の誰かがやっている、なんせネグレクトの父子家庭なので。もっと言うと三ツ谷と妹2人は大分歳が離れているが、柴家は全員年子である。家政婦やシッターは24時間付ききりで面倒を見て育てる母親とはワケが違う。柴家では大寿が親代わりだ。つまり八戒の甘ったれは2個しか違わねェ大寿の甲斐性によって保証されているのだ。


別に東卍がヌルいとか言いたいわけではない、しかしあそこに居ても八戒が自立するとは思えない。大寿の周りにはパイセンを初めとした叩き上げが勢揃いしている。世紀末ハーレーであったり、元ブラジルのギャングスターであったり、S62であったり、歌舞伎町の死神であったり。正直甘えたなのは八戒しか周りにおらずかなり焦っていた。

オレが怒鳴って姉貴に庇われてそれを盾にするような奴のまま野に放つわけには行かないのである。これは期待でもなんでもない、マトモな人間にくらいは育てという義務の確認だ。
もはや「中2にもなって甘ったれてんじゃねェ!!いい加減目ェ覚ませ!!それか便座くらい下げろ!!」とか言って一発くらいならシバいても「あぁ、堪忍袋の緒が切れたんだな…ワンオペおつかれ……」と同情を買いそうなのだが、DVが地雷なため己が八戒をシバくわけにはいかず、そこで丁度良く転がってきた黒龍を練り上げて矯正機関を創り情けねェ弟を矯正しようと思ったのだ。




あとはまァ、頼まれたらやるのだ彼は。






…なぜ大寿は人の心をつかみ、なぜ取り巻きの奴らはみんな大寿に惚れるのか、

佐野科のカリスマ性や灰谷兄弟のカリスマ性のソレとは違う不思議な力は、なにも"圧倒的な暴力"のみに由来するものでは無い。
"リーダーシップ"、"知識の多さ"、"頭のキレ"、"他人の成長に期待し目をかけて面倒見てやる兄貴肌"、"命を預かって背負ってやる甲斐性"、その全てがトルネードした結果彼の元には人が集まり軍隊のように足並みを揃えるのだ。



母親が死んでも泣き言ひとつ下の妹弟に漏らさず、独りで背負おうとしてしまうその胆力は見上げたものである。

"悲しみに暮れて塞ぎ込むのは己独りで後回し。その前にしっかりさせないと。"

面倒見の良い割に本人が孤独なのが彼の魅力の1つなのかもしれない。



……その分、間違えた方向に進んだ時に彼を止められる者は極わずかに限られるのだが。




大寿の話がエラい長くなってしまったが気を取り直して……





そんな訳で今の黒龍は洗練され、足並みを揃えて甦った。九井少年金の猛者と暇つぶしと、横入りしてきた暴力で金稼いでたプロギャングスターのおかげで専ら相手は大人になったが、名誉はかなり挽回し、列強のひとつに返り咲いた。





暴力を振るっているところなんて見られようものなら一発でパイセンに嫌われることが分かっているたぃちゃんは、これまで自分の暴力性をひた隠しにしていた。
もちろんそんなもんはとっくの昔にバレているのだが、今日も今日とて「オレは守りの拳しか使いません」みたいな顔をしてパイセンの警護に当たっている。それを見てパイセンは「ちょっと面白いな♡カワイイ♡」とか思っている。パイセンの目に映るたぃちゃんはいつまで経っても大きなランドセルを背負ったちっさい頃の面影を残しているのだ。他人から見ればそんな面影なんかミリも残っていないのだが。

パイセンは暴力が大嫌いだ。しかしそれを上回るたぃちゃんへの信用があるから目を瞑っている。
ちなみに、さっちゃんはどこかたぃちゃんに似ているので怒れない。2人ともあんなにデケェのに何故かちっさい男の子の孤独な背中が重なって見えるらしい。眼科とかに行った方がいいと思う。
さっちゃんも私に暴力は振るわないだろうし、もし私に何かがあったら何かがある前にたぃちゃんが許さないだろうし、2人でケンカなんてしたら私に嫌われることくらい分かっているだろうから声をかける程度で放し飼いにしている。




……そろそろ殴ってでも変えないと八戒は弱いままである。自分のイライラも限界だ、強く育てねぇと。

…そも、大寿が嫌いなのは理不尽な暴力であり家族を愛さないことである。
このまま向き合わないのは愛ではない。本末転倒、八戒のためにならない。














これであの人に嫌われても後悔はない。
この時はそう思ったのだ、この時は。














タケミチたちが黒龍の縄張りに足を踏み入れた時点で、大寿の意志は固まった。

















時は戻って2005年12月25日

カモからカモへの送迎を任されているさっちゃんがケータイでメールを開きつつパイセン(金策中の姿)に話しかける。




サ「「オレはあの人に執着する自分を優先しすぎた。柴家ファミリーに向き合う時が来ただけだ、じゃあな。」だとよ?」
パ「…予定変更よさっちゃん。教会まで飛ばしてちょうだい」
サ「いいのか?今日はクリスマス稼ぎ時だぞ?」
パ「ほっておけるわけないでしょう。さっちゃんが同じことしても私は行くわよ。…わざわざ今日なのはかなりやめて欲しかったけど。」
サ「…へぇ?」
パ「着いてくるなと言っている時に着いてきておいて、自分の都合で簡単に離れられると思ってるのかしら?おバカさんねぇ♡」





毎年、クリスマスの時期になったら自分を無理やり教会まで引っ張り出して金策の邪魔をするたぃちゃんが、なぜか今年はちょっかいをかけてこない。不審に思ったパイセンはさっちゃんをたぃちゃんまで遣わせて、遠回しに"報連相をしろ"と圧力をかけたのだ。


思春期だし色々あるかな?まァ丁度いいしな…と思って放っておいたらこのザマだ。


なんだオマエ、都合いいときゃ散々金策の邪魔してたくせに自分は1人で勝手に姿くらませやがって、のお気持ちである。






パ「私が見られたくなかった私を見つけ出したのに、アナタが見られたくないアナタを隠し通せると思わないで欲しいわね♡」
サ「仕返しリベンジだな?」
パ「ええ、仕返しリベンジよ♡」










\ヴーーーッ、ヴーーーッ、pi/
「どした?」
『はぁちゃん手伝って』
「いいヨ、何すればいい」
『教会まで来て』






蘭「あ?なに誰?男かー?」
竜「男っ!?!!!??!!!」
蘭「竜胆必死かよww」
姉「ァン?パイセンだよパイセン、ちょっとアタシ用事できたから」


なぜ一虎の姉ちゃんが灰谷兄弟と一緒にいるのか、
パイセンのクリスマスを100万で買おうとしてくる蘭を邪魔に思ったパイセンが一虎の姉ちゃんと頼れるスケット(後述)に見張りを頼んだからである。

1日100万は確かにデカいのだが、24日25日で回れるパパやら彼氏やらは限られており、「蘭の一発100万」と「契約している限り永続的に続く10万ずつを合計10人から」なら後者の方が稼げるので、厄介払いをしたかったのだ。



数日前──

パ「こんにちは、竜胆君」
竜「…オレだけ呼び出して、何」
パ「ふふ。…クリスマス、はぁちゃんと過ごしたい?」
竜「!?」
パ「アレだけあからさまで、気がついてない鈍感なんてはぁちゃんくらいよ♡」
竜「……で、なんだよ」
パ「はぁちゃんには今年の送迎はやめてもらおうと思ってね?その代わり別の"お仕事"をたのんであるから、竜胆君は灰谷君を意地でも引き連れてあの部屋に行ってちょうだい♡」
竜「別の仕事…!?アンタ!まさか遂に羽宮にまで援交させるつもりか……!?!!」
パ「おバカさんねぇ、そんなことさせるわけないじゃない。
はぁちゃんはちゃんと、本当に好きな男の子とだけ付き合って、本当に愛してくれる人と結婚して、幸せな家庭でお母さんになるのよ♡」
竜「……自分の代わりに"送迎"とか言って男相手に護衛させてるやつの言うことなんか信用なんねーよ。」
パ「手を汚させてるって?」
竜「そうだよ、自分だけ怖いからって」
パ「……そうね。私ははぁちゃんほど強くないから、あの子を危険な目に合わせているものね。」
竜「…やりたいならアンタ1人でやれよ。羽宮を巻き込むな」
パ「それは無理だわ?私たちは2人とも、手を汚さないと上がれない場所にいるから。お互い、何も犠牲にしないで、なんてことは無理よ。私が無償で恵んでも、あの子は対価なしに受け取れないから。」
竜「…なんでさ、オマエらってそんな無茶ばっかすんの。もうやめろよ、今のままでいいじゃん」
パ「その"今"に、保証はないの。だから未来は自分で掴まないといけないの。
……私は、あの子の昔のことを全部知ってるわけじゃないわ。お家が大変だったことしか知らない。それも風の噂よ、家のガラス全部割って家出したとか、本人に確認したことはないの。あの子も私のことは何も聞いてこない。多分、灰谷君達の方がよく知ってるでしょうね」
竜「だから、それならアンタだけで、」
パ「私がはぁちゃんと初めて出会ったのは使われてない第2音楽室。ボロボロで、死んだ顔をして入ってきたかと思えば、手に持ってたライターで松脂溶かして捲ったスウェットの下の火傷だらけの腕に落としはじめたの。
"今"が崩れ去ったら、私もあの子もあの地獄へ逆戻りよ。」
竜「っ!?」
パ「大丈夫。もう今はそんなことしてないよ。
…はぁちゃんはね、私みたいに汚れていい存在じゃないの。私はもうどう頑張っても何をやっても本当に好きな人とは結婚できないから仕方がないけど、はぁちゃんは本当に一番好きな人と結婚しないといけないの。……本当に好きな人に抱かれるたびに、自分が不誠実だった過去がよぎる様な心の傷が一生付きまとうお仕事はさせるつもりはないわ。優しいあの子は心から幸せになるべきなの。
だから安心してね?あの子は私が責任をもって綺麗なまま大人にするつもりよ♡」
竜「………………ごめん、言いすぎた。」
パ「いいの、本当のことだから♡」
竜「……危ないとは思ってっけど、オレはアンタが汚れてるなんて思ってないから。」
パ「…竜胆君は優しいね。ありがとう♡」
竜「……別に。」
パ「…私はね、竜胆君に期待してるのよ?
はぁちゃんとの結婚式には呼んでね♡」
竜「バッ!!ナッ!!!…なっ!!!!/////」
パ「……バナナ?……え?あれ、結婚しないの…??」
竜「するっっ!けどォっっ!!!//////」
パ「うん♡応援してるね♡
……灰谷君を歌舞伎町でしっかり足止めしておいてね。出会したら確実に邪魔されちゃうわ♡今年は上手いことたぃちゃんが引っ込んでるから本気で行きたいの。六本木と銀座には絶対に近寄らせないで。お願いね♡あ、そーだストロベリーフロートも食べていいよ♡」
竜「いや要らねぇよ」




竜胆の本命童貞を巧みに利用し灰谷をセットで足止めするため、(竜胆の恋心を)なんもわかっていないままの一虎の姉ちゃん(※毎年クリスマスはパイセンの送迎で忙しい)に"お仕事♡"とか言ってWiiを握らせてついでにマリオカートとマリオパーティも握らせておいた。
本日は25日、一虎の姉ちゃんと灰谷兄弟はマリパをやっている。昨日24日は修二と鉄太も混ざってマリカーをしていた。



竜「なんの用事だよホントにパイセンなんだろーな」
蘭「…竜胆マジで必死かよウケるヮ」
竜「色々あんのっ!!」
姉「何の話だ??パイセンだつってんだろ?用事はわかんねェとにかく向かう」
蘭「わかんねェのかよwww」
姉「アタシとパイセンは運命共同体なんだよ、お互い困ったら1番に頼る、ソレに理由なんていらねェしそーゆー時は化粧とかしてねェで助けてやる、…当たり前のことだろ?じゃあな」
蘭「えー、じゃあオレもいくー♡」
竜「オレも」










一方東卍では、スクラップ製造販売業者伍番隊の異様な嗅覚により、花垣、松野、三ツ谷ユダ疑惑が浮上していた。黒龍との休戦協定が結ばれたあとから、その3人がバチクソきな臭かった。

春「絶っ対ェ怪しい」
虎「挙動が不審なんだよな」

お前らはメンドクセェ彼女かなんかなんか??ってほどの嗅覚である。警察犬にでも就職すれば一生食っていけそうだ。まァ顔だけでも一生食っていけそうだが。

花垣は裏切る度胸はなさそうだし裏切っても大したことなさそう、松野は場地を裏切るわけが無い、ユダだった場合1番厄介な三ツ谷を張ることとなった。分散しない辺りなんだかんだで仲がいいメンヘラコンビは今アパートの階段の影に隠れている。クリスマスの寒空の元。顔が良いのだから彼女でもなんでも作って遊べばいいのに、コイツらはマイキーしか見えていないのでそんな遊びは二の次のようだ。








教会の前


九「何しに来たサウス」
サ「アマービレ送りに来ただけだ、退けオマエら」
青「通す訳にはいかねェ」
サ「はァ?オマエら大寿にケンカ売るンか?」
青「その大寿に誰も通すなって言われてんだよ」
サ「アマービレは特例だろうが。なァ九井?」
九「知らねぇよ」
パ「あの、…もしかして九井君ってやっぱり私の事嫌い…?」
九「別に」
サ「エリカかよ…」
パ「それともクリスマスに赤音ちゃんと遊べない八つ当たり…?」
九「💢」
パ「なんでもいいけど通してくれないかしら、急いでるの」
青「あんまチョーシこいてんなよ、族の集会に顔出した以上姉貴の友達だとか女だとかは関係ねェぞ」
パ「あんまりなこと言うなら赤音ちゃんに言うわよ♡」
九青「「ぐうぅっ……!!!」」
パ「あの、本当にごめんね?でも通してくれないとあんまり得意じゃない私のバイクの運転であなた達のこと轢き殺さなくちゃいけないわ…?お友達の弟くん達を致命傷にしたくないんだけれど、仕方ないかしら…」
九「とんでもねぇなアンタ」
青「やれるモンならやってみろ」
サ「しっかたねぇな」
九「っ、」
サ「話(※肉体言語👊)つけてやる、アマービレは行ってこい」
パ「ありがとさっちゃん」









三ツ谷宅前に動きがあった。集会もねェのに特服着てインパルスに跨った三ツ谷を見た一虎は隠してあったケッチに跨り春千夜と2ケツした。
正直、この2人からしたらマイキーの命令もなしに特服着てどっか行こうとしてンの自体がもうクロの行為なのだ、捕まえて問いただしスクラップにする他ない。

「オイ一虎もっとスピード出せ💢!!」
「黙れしっかりおっちんしとけ💢!!」
「!?」

鬼の形相で追っかけてくるややこしいメンヘラギャル2人に気がついた三ツ谷はとにかく教会へ急いだ。
バイクチェイスの始まりである。









「あれ、今三ツ谷のインパルスの音しなかった?」

本日はクリスマス。このクソ寒い中マイキーとドラケンと場地と彼女いない歴25年の真一郎はムサ苦しくツーリングに繰り出していた。ちなみに、イザナはエマとデート♡である。

「………オレも聞こえた」
「間違いじゃなかったら一虎のケッチの音も………」
「…………オマエらが言ってるのと一緒かどうかわかんねーけど、スゲェはやくなかったか?」
「…カーチェイスでもしてんのか……?」
「…………、………ス〜〜〜…、どっちから音した…?」
「「「右」」」
「何やってンだよアイツら…💢」
「行くか…」













舞台は道路から戻り教会へ




八戒とタケミチが大寿に絞られている。





大「聞いたか八戒?」
八「っ、」
大「テメェの秘密を話そうか?」
タケ「??」
大「コイツはオマエの思っているような奴じゃあない」







大寿が意志を固めた日、初めて八戒をド突いた。柴なのにシバくではなかった。ド突いたらしい。2割くらいの力で八戒は吹っ飛んだのだが、それが2割の力であることを柚葉も八戒もわかっていた。今まで散々見てきたのだ。実際に殴られていないため想像しかできないが、怖い。


なぜ大寿が今になって自分たちに暴力を振るいだしたのはわからないが、生身では勝てないことだけわかっていた2人は、原さk((ゲフンゲフン…、どっかの世界線同様しっかり刃物を持っている。



タケミチはどうして教会に居るのかと言うと、稀咲がけしかけて都合よく配置された。



まず、自分が来た未来に帰ったタケミチは一虎に会った。そこで、出会ったバジに「一虎君のお姉さんに会いたい」という話をした。
…しかし、バジは「は?一虎に姉貴なんていないけど…?」と言っていて、それがウソではなさそうだったから思わずナオトに調べてもらったのだ。
……調べるなと言われた羽宮──の名前は、戸籍上に存在しなかった。




  >>> ホラーである。<<<




「ヒョッ…」とかいいながら1ミリチビったタケミチは、ハロウィンの後過去に戻ってきたてから一虎の姉ちゃんに会わないように徹底的に避けていた。そりゃ誰しも亡霊に会いたくない。ワンチャン亡霊より怖い何かかもしれない。だから、一虎の姉ちゃんに「聖夜決戦の話」はしていない。



さて、稀咲は別に東卍ではないが、一虎の姉ちゃんとパイセンをこの危ないケンカに巻き込みたくなかったのだ。稀咲はもう橘を狙っていないから、どれだけタケミチが疑っても何をしてももう都合良くしか使われないが、そんなこと微塵も知らないタケミチはこれまたどこかの世界線と同じく千冬に止められたのに稀咲を信用した。
千冬は一虎のダチである。何かあったら一虎の姉ちゃんが悲しむ枠に入っていると判断されたため、大寿なんてバケモンにブチ殺される前に半間が丁度よくボコって柱に縛り付けてきた。


つまりこれもどこかの世界線と同じ状況だ。前半に10件くらいあった被害記録は一体なんのためにあったんだ???ほぼ全部起こっている。







大「コイツは──」
タケ「くっ」
八「やめろお!!!」
柚「──」
タケ「え?柚葉!?」
大「!!」




 \ ドッ…… /





パ「っ"〜〜〜!!!」
大「は、????」
パ「っ、…まに、あった…」
大「……あ、ぁんた、…なん、…ここ、」
柚「!?……っ!!!!」
パ「……来て、よかった、」
八「な、んで、」
パ「…久しぶりなのに、ゴメンね、」



パイセンが、ナイフを持った柚葉に刺されそうになった大寿を庇った。




姉「…………パイセン!?」
竜「………ナイフだ」
蘭「……」
姉「…………オイ…誰だ、誰が刺した、…殺してやる、オマエか?…それもとオマエか?
……ァア"?口ついてんだろーが喋れや…」


一足だけ遅れて一虎の姉ちゃんと灰谷兄弟がやってきた。違ェ入口から入ったらしい。











冬「!?どういう状況だ…!?」
三「…羽宮さん?」



千冬と三ツ谷の到着である。三ツ谷は追っかけられたせいでめちゃくちゃ早く着いた。なお、三ツ谷を追っかけていた2ケツのマイメロギャル達は2ケツしてんのに雪の中を法定速度バリバリに超える無茶な運転をしていたため途中でスリップして、今は公道で横転したバイクの横で擦り傷だらけになりながら髪の毛の引っ張り合いをしている。










大「っ──」
タケ「(大寿が泣い!?)」



目の前で最愛の人を刺されたたぃちゃんはツ──と涙を流した。混乱して、どうしたらいいか分からないらしい。



パ「………、立つ、」
姉「ッダーー、もーー"、…肩持ってハイ、」


胴体から血を流した佳人は30センチも下から大男を強い目で視界に映す。


大「っ、」
パ「……なに、今更泣いてるの。たぃちゃんが選んだ道でしょう。」
大「は、」

\バチーン!!!!/

タケ「!?!!?!(大寿にビンタ!?殺されるぞあの人!!!!)」
大「イ"っ!」
パ「八戒くんはもっと痛かったわよ。これで私も暴力女、あなたと同じ、地獄行きね。」
八「………」
パ「どうしてこんなことになってるの?」
大「それは、」
柚「…………」
八「…………」
姉「……オイ、別に柴以外でもいーだろーが誰か答えろよ、そもそも刃物持ってンのはテメェらだろーが、…人の話聞いてんのか?…ァ"?」
柚「………」
八「…………」
姉「おい、そこのノッポの坊主」
八「っ、」
姉「なんで柴を刺してぇんだ?アタシは柴の知り合いだからな、殺されンの黙って見てるわけにいかネーんだよ、…おい、なんか喋れや殺すぞ…」
柚「オイ!!八戒に手ェだすな!!」
姉「は?人殺しは黙ってろ、アタシは今コイツに聞いてんだよ」
柚「っ、…柴家の問題に口出すな!!」
姉「…は?オマエら兄弟かよ、兄弟で殺そうとしてんのか?アタマおかしいだろ…
…ァア"?…ちょっと待てよ、………オイ柴」
大「…──」
姉「オマエこれ妹と弟だな、なんで殴られた跡ついてんだよ、オマエ兄弟殴ったのか?
……なに被害者ヅラして涙流しんだコラ……、
     死ね!!!💥💥💥    」
大「ゥグァ!っっっ!!!!」



元より放心状態だった大寿は一虎の姉ちゃんのパチキ一発で完全に沈んだ。



姉「………セーラー服、気持ちは分かる。でもやめとけ」
柚「……………」



"あの羽宮家で一番強く、そして強く存在し続けざるを得なかった。"
守るために壊す、という思考回路を一虎の姉ちゃんは誰よりも理解していた。その先にある後悔も。









姉「で、テメェだよ坊主、……なんでさっきからなんも喋ンねェんだよ、……ア"?」
八「っ、」
姉「テメェより兄ちゃんと姉ちゃんの方がどう見てもダメージデケェだろーが、なんでさっきから姉貴に庇われてばっかなんだ、オイ聞いてんのか?
……情けねェつってんだよ!!甘ったれてんな!!!!それでも一虎の仲間かテメェ!!!自分より強い兄貴に屈して黙って眺めてんじゃねェ!!!守ってくれる姉貴のこと盾にしてんじゃねェ!!!!今ここにいる東卍の隊服着た奴全員!オマエのためにここに来たんだろうが!!なにイモってんだ!!
      死ね💥💥💥!!!    」
八「ッア"!!!!」
柚「八戒…!!!」




問題は八戒である。姉ちゃんも一虎も仲間意識がめちゃくちゃ強いし負ける≠ニかそういう思考回路で体が動いていないので、この八戒の態度がめちゃくちゃカンに触ったのだ。
その、ちょっと甘ったれた態度やちょっとおバカなところが八戒の可愛い美点なのだが、一虎の姉ちゃんからしたら大寿も年下のガキ。八戒の頼りなさそうな部分から大体のあらましを察した一虎の姉ちゃんは、長いこと付き合いのある大寿への情を取ったのだ。


姉ちゃんは八戒をボコボコにし始めた。
柚葉は空気を読んだ竜胆に抑えられている。さす竜胆。





タケ「ちょちょちょ!!!」
姉「ボケがァ!!!」
三「っ八戒!!」
冬「姉御やめろって!!!」
姉「うるせェ!!!ここで引いてもまた殺し合いになるだけだろうが!!今ここで部外者がボコらねぇと兄弟で殺し合うのを命懸けで庇ったパイセンが刺され損になんじゃねェか!!!」






\ズルズル……/


サ「……、ふぅん?」







乾と九井を失神させて引きずったサウスが礼拝堂に入ってきた。



サ「…………刺されたのか、アマービレ」
パ「さっちゃん…」
サ「なァ、どうしたいアマービレ。アイツらはそこで伸びてるパルセイロに関係ある奴らなんだろう?」
パ「私の目が閉じる前に、兄弟喧嘩のケリをつけて」
サ「良いんだな?」
パ「……うん」
サ「おいアジタート!!オレと変われ!!
…………ニホンに来てから楽しかったよアマービレ。あの世でも達者でな。」
姉「は?巫山戯んな引っ込んでろ寺野!!」
サ「アマービレが目を閉じる時、独りにしておくつもりか?」
姉「…チィッッッ…!!!しっかりやれよ!!」
サ「おいチビども!!オレが大寿の代わりだ!!」
八三タケ冬「「「「っ、」」」」
サ「さぁ、」
八「、」
サ「…捧げようか、"鎮魂曲レクイエム"」















   さっちゃん
     VS
八戒&三ツ谷&タケミチ&千冬

という「それもう大寿の方がまだマシやったんとちゃうんか……??」みたいなヤベェ戦いが始まった。







サウスは殺さないギリギリで殴っている。彼は手加減ができるようになったのだ、音楽セラピーは伊達ではない。







タケミチは、サウスに一発も入れれていない、入れれていないのだがやはり彼は諦めない。








八戒がボロボロ泣いて真実を口にした。オレは今まで怒鳴られる度に柚葉を盾にしてきたと。胸ぐら掴まれたり正座させられたり閉め出されたり、その度柚葉に庇われていた、それをさも自分がした事のようにオマエに話した、と。




パイセンを抱えた状態の一虎の姉ちゃんはイラつきすぎて無言である。気絶中の青宗と九井に変わって灰谷がしっかり冷めた視線を飛ばしておいた。








ダセェエピソードをみんなが語ったところで、ナイフが体に刺さってるはずのパイセンが呟いた。


「フフフ、…私、三ツ谷君を推すわ、カッコイイ……♡」
「わかるわ」
「!?…ウソだろっっっ!?!!?!!」
「あんなお兄ちゃん欲しかった♡」
「オレもお兄ちゃんだぞー?
……なぁちょっとくらい返事とかしろ?」
「「ジャイアンは六本木に帰って。」」



一虎の姉ちゃんに絶賛片思い中の竜胆と、小1の初恋からずっとパイセンに片思い中のたぃちゃん(失神中)に挟まれた女子勢が三ツ谷を推し出した。竜胆と大寿も可哀想だがこんなヤベェ女に気に入られちまった三ツ谷も可哀想だ。









ギャラリーが湧いてる間に八戒の覚悟が決まったようだ、その雄叫びで大寿が目覚めた。





目覚めたパルセイロに気がついたさっちゃんはニヤッとひと笑いし、














八戒を、10割の力で殴ろうと、したのだが、


















柚「八戒っっ!!!!!!!」
大「ッグゥ、!!!!」








このままでは死ぬ、流石に本気で死ぬ。そう思った大寿が庇った。


別に、大寿は妹と弟を殺したいわけでは無かったので。





八「へ、」
柚「兄、……貴…?」






サ「目ェ覚めたかパルセイロ?」
大「テメェ誰の家族殺そうとしてやがる」













"ティラノサウルス  化け物  vsメガロドン 化け物 "

千冬とタケミチの感想である。
蘭と竜胆は「プロレスより湧いた」と言っていた。






暴力に愛された男たちは、お互いがくたばるまでド突きあい続けた。
自分たちが暴力を封印する理由であった愛しのお姫様が死にかけてるその御前で、自分たちの本質を曝け出してぶつかり合った。





ちっちゃな頃から悪ガキで、12でギャングスターと呼ばれたサウスに比べれば大寿は当たり前に劣るのだが、今オレが膝をついたら確実に柚葉も八戒も殺されるだろう、そんな気がした彼は身の丈以上の力で対抗した。





お互いが大の字でブッ倒れるのは同時であった。満身創痍、まさにこの状態だ。









\バブーーーー!!!/


三タケ冬「「「!!!」」」








\ダァンっっ!!/←扉が開く音


虎春「「イ"ーーーーーッッッ!!!」」
場「オマエらいつまでケンカしてんだよ」
ド「そんなに髪引っ張ったらハゲんぞ」
虎春「「うるせェっつ💢💥💥!!!!」」
マ「仲良いなー」
場「オマエ目ェ見えてねぇのか??」
真「……は?なんだコレ」




マイキー御一行の到着である。
雪の中転がりながらキャットファイトしてたせいでびちゃびちゃの一虎と春千夜を拾い、三ツ谷のインパルスを頼りに教会までたどり着いた。
オモテに居た黒龍はイヌピーの布教及びヒール調教のおかげで漏れなく真一郎のファンなので、なんも言わずにモーセみたいに道をあけてくれた。












何も分かっていないマイキー御一行を他所に、大の字になったサウスはポツリと呟いた。





「家族は、大事にしろ。」

「ブレーキ踏んでくれる奴は、残しとけ」






愛を握ったその拳で父を殺した彼は、愛の理想の姿を知り、自分を占領し圧迫する黒い衝動と暴力の抑え方を身につけたことで、いつかの出来事に向き合ったのかもしれない。






なぜだかは分からないが、見たこともない傷だらけの大男が口にしたその言葉は、マイキーにとても響いたらしい。
















「…ねぇ、柚葉ちゃん、八戒君、よく聞いてね?」





静まり返った教会に綺麗なソプラノがよく響く。パイセンの声だ。





「柚葉ちゃんと八戒君にとって、たぃちゃんはとても怖かったと思うの。今日も、たぃちゃんったらまた1人で突っ走って……、八戒君痛かったでしょう、…そうよね、叩かれると、痛いの。」

「でもね、たぃちゃんは、あなた達のお兄ちゃんは、あなた達のことを愛してるの。こんなにぶっきらぼうで、怒りん坊かもしれないけれど。……私はね?あの、いつ追い出されるか分からない冷めきった広い家のすぐ隣で、私より何歳もちっさな生き物が、あまり年の変わらないさらにちっさな生き物を全力で愛して生きていることに感動したの。私は、あなた達3きょうだいのおかげで、心のどこかでずっと、本当の愛があると信じれたの。」

「あなたのお兄ちゃんの本質は、もしかすると暴力かもしれない。でも、私は、…暴力が世界で一番嫌いな私は、あなたのお兄ちゃんのこと、世界中の誰よりも愛してた。あなた達を庇ったこと、全然後悔してないわ。だからどうか、ここで終わる私のことは気にしないで。気にする代わりにあなたの、あなた達のこの不器用な優しいお兄ちゃんを愛してあげて」

「この子ったら、ワガママ言ったの1回きりなの。でもそのワガママさえ叶えてあげられなかった。何もできない私は、嫌がるこの子を置いていってしまった」

「見る影もなく堕ちてしまった私のこと、未だに心配してくれるような優しい子なの。完全に振り切る勇気がない私をずっと大好きで居てくれる子なの。どんなに強く見えても、この子もまだ、あなた達と同じ、守られるべき子供なの。
だからどうか、私が嫌った血の繋がりを、そうじゃないって証明して…?
…………みんな、仲良くね、」



一虎の姉ちゃんの腕に抱かれたパイセンは、2度目の涙を流しながら大寿が大の字になっているであろう方向に頭を向けた。



「……た、ぃちゃ、…いままでありがと、
…だいすき、、

       …………っっ!!!」


一同「「「 !?!!?! 」」」







一虎の姉ちゃんの腕の中にいるパイセンが、自分に刺さったナイフを横に引き、腹を切ろうとした。








姉「オイ馬鹿やめろ!!
………やめてっ!!!お願い!!!!!」
パ「離っしてはぁちゃん…!!柚葉ちゃんが人殺しになっちゃうでしょ…!!」






普段全然泣かねぇのに、泣きながら悲痛に叫んでパイセンの腕を抑える一虎の姉ちゃんをみて、場地の座右の銘は「何があっても自殺はするな」になった。一虎はそんな様子の2人を見たことがなかったので血の気が引いて停止した。







姉「気持ちはわかっけど自殺諦めンのだけは許さねェ!!オイ!!!!テメェら!なにタラタラしてんだ!!!さっさと動け!!一虎!救急車呼べ!!こんなカスのカスみてぇなケンカでパイセンが死んじまってたまるか!!!」
虎「っ"うん"!」
タケ「いや、カスて…!!!」
春「オイ一虎!110じゃねぇ119だバカタレ!!!」
姉「柴!!寺野!!オマエらは残ってアタシと救急車乗る!!オイ三ツ谷!!、」
三「!! なんだ!」
姉「ホントだったらアタシがそのセーラー女子と坊主連れ帰ってメンドー見てやるべきなんだろーけど、アタシはこのとーり今恐怖で手がガタガタ震えてる!!何かの拍子にバイクが滑って2人とも轢き殺しちまうかもしんねェ!!だからアタシの代わりにオマエが今日は面倒見てやれ!!いいな!!わかったな!!アタシの代わりなんだからしっかりやれよ!!!以上!!クソしょうもねェことにパイセン巻き込みやがって!!オイオマエら!アタシが血迷って殺す前に視界から消えろ!!!なんでアタシのパイセンがこんな目に合わねぇといけねェんだよ!!フザケてンなドブが!!帰り道の雪で全員事故って死ね!!!解散!!!」
場「相変わらず無茶苦茶言いやがる…!!」
ド「本心を隠そうとしろよ…」
真「世紀末ハーレー思い出して頭が…」
マ「バイクチェイス思い出して頭が…」
春「マイキー!大丈夫っすか!!」
姉「オイ坊主!!!坊主オマエケツの穴締め直してしっかり生きて行けよ!!もしまた兄貴と姉貴と三ツ谷盾にして情けねェ事したらパイセンの苦労無駄にした罪で足ボキボキに折ってやるからな…!!アタシは柴やら寺野よりヌルくねェから姉貴や兄貴で勘弁してやらねェぞ!!覚えてろ!!死ね!!!」
蘭「何回殺すんだよオマエwww」
姉「一虎と同じチームのやつがあんなで許せるか💢テメェ弟があんな情けねェことほざいて許せんのか??」
蘭「ウチの竜胆を女盾にする情けねェやつと一緒にすんなー?」







こうして大乱闘クリスマスブラザーズ事件は終結した。


救急搬送されたパイセンは、一虎の姉ちゃんの的確な応急処置によってギリギリ一命を取り留めたらしい。
それより、救急車に同乗していた一虎の姉ちゃんの脳震盪のほうが深刻だったそうだ。デケェ男にパチキなんて2連発もするもんじゃない。というか大寿を沈めるパチキをしたあと連続で八戒にパチキをしてなぜ意識がハッキリしているのかがわからない。




















本日は12月26日
ここはパイセンが入院している個室。そう、金があるので個室である。出資者は大寿。




ベットの上で行儀悪く団子になっているイジけた布団の塊と、真横の椅子に腰掛ける覚悟を決めた大男の姿があった。



大男は数分前、病室の前で花だけ置いて帰ろうとしていた所を一虎の姉ちゃんに捕縛され、「謝罪もナシに逃げんのか玉ナシ」とか煽られ、「逃げねーよ💢」となり覚悟を決めたらしい。









「…………………………」
「…………………………」
「…………………………話が、ある」
「聞かない」
「グッ……ンン"、…ワガママは別の機会に聞いてやる、……だから今は聞け」
「………」
「………黙って消えて悪かった」
「…………」
「アンタに嫌われて、二度と会えないことを覚悟したつもりだった。でも、いざアンタが刺されて死んで、もう二度と会えないと思ったら、後悔なんてモンじゃ済まなかった」
「…………」
「アンタを愛してる。アンタのやりたい事は全部オレが叶えてやるから、オレと家族になってくれ」
「………ダメ。」
「…、惚れた女に庇われるような情けない男だからか?」
「違うってわかってて意地悪いわないで」
「…じゃあ、オレの事が嫌いなンか。暴力振るうから、」
「だから!違うってわかって、ンムっ!?」
「ン、……やっと顔出したなァ?」
「っ、離して!何笑ってるの!!私今可愛くないの!こんな、」
「こんな?なんだよ。アンタが可愛くなかったことなんか1回でもあったと思うか?可愛すぎて本気で横取りされねェか心配で、ずっと着いて回らねぇと気ィ済まねぇんだよもう何年も」
「っ、だって、」
「……アンタはあの日、「いつかすれ違ってもオレはアンタに気が付かない」って言ったな」
「………」
「バカが。気付くに決まってンだろ。…アンタはなんも変わんねェよ、曲がり角で距離掴めてなくてしょっちゅうぶつかりそうになるとこも、ホットケーキの一発目で加減がわからなくて失敗してこっそり自分の皿によそってバレてねェと思ってンのも、イタズラ好きですぐナイショって言うことも、本当はなんでもできるようになるために血の気引くほど努力してることも、あの時以外人前では一滴も泣いたりしねェ強いとこも、オモテではなんでもないように振る舞うくせに1人の時はすぐ不安になって縮んで黙ることも、寂しがりで怖がりなところも、オレより何歩も先を歩いてるのにオレを完全に振り切れないところも。
昔からなんも変わんねェ、ずっとアンタはオレの中で一番美しいし可愛い」
「私は!アナタが独りぼっちで大変になる事をわかっていて!"自分が醜く落ちぶれていく姿を見られたくない"なんて理由で突き放したのよ…!?私だけ、「全部無くなったんじゃなかった」だなんて、アナタから与えられて満足して!美しいわけないじゃない!!結局何も、私ばっかり貰って勝手に逃げて…!!」
「あぁ途中で気付いたさ、知ってたよアンタがオレに失望されたくなかったことなんて。嫌われたくなかったんだろ?ほんと、どうしようもねェくらいオレのこと大好きだな」
「…………」
「でもな、アンタが背伸びしてることを1番知っているのはオレなんだよ。アンタの素を無理やり暴こうとするのなんてオレくらいだろ。本当はドジで甘ったれで、地に足着いてねェの知ってんだからな。今更失望もクソもあるか、さっさとオレに囲われろ。」
「……………」
「…無理やり背筋伸ばして肩張って生きてる姿をずっと見てた。オレだけが知ってる。オレはそのアンタの強さに救われてきた。アンタはそんなオレを切り捨てられない。いいか?オレにはアンタが必要だ、アンタにもオレが必要なんだよ、いい加減観念しやがれ」
「…今の私じゃもうアナタに釣り合えない。酷いこといっぱいしてきたの、見てたでしょ。昔の私みたいに潔白じゃないの。汚れてるからもうほっといて。見ないでもう、お願いだから帰って。」
「あンなぁ、オレは高嶺の花を追いかけ続けたんじゃない。オレはアンタを追いかけ続けた。アンタに振り返って欲しかった。」
「……」
「どれだけ環境が変わっても、将来老いても、オレ以外の全員に失望されたとしても、オレだけはずっとアンタを愛してる。…もう十分、見りゃ分かンだろ。らしくもねェけど、ストーカーみたいに何年も女々しく付きまとってたンだからよ」
「……」
「オレもアンタも自分のこと追い詰めすぎたし抱え込みすぎた。…それでも、オレが埋まらねぇ寂しさに蓋をして前に向けたのは、独りぼっちじゃなかったのは、どれだけ理不尽に折られてもアンタが未来に向かってたからだ。」
「………そんなことない、過去に囚われてばっかり、」
「なぁ、こんなオレがアンタに優しくできるのは、アンタがオレに優しかったからだっていい加減気付けよ。昔のアンタがオレにやってくれた事はそんな簡単に全部無くならねェよ。怖いなら今度はオレが手ェ握っててやるから、わかんなくならねェようにずっと傍に居てやるから」
「………たぃちゃんみたいな優しい子から愛されるような女の子じゃないの。周りが思ってるよりずっと、要領が悪くて、無力で、卑怯で、お金のために人の気持ちを利用するような汚い女で、」
「オレが惚れた女が汚いわけねェだろうが。
…それに、オレのこと優しいなんてほざくトチ狂った女アンタくらいしか居ねェよ」
「……」
「なァ、世界で一番愛してる。だから、おとなしくオレに愛されてろ」
「……いいの…?」
「ああ。」
「………………、ほんとに………?」
「ああ。」
「……ありがとう"」
「…………あンな、こういう時は"ありがとう"じゃなくて、」
「私もたぃちゃんを愛してる。大好き」
「っ、………、……、……わかってンかよ」
「彼女にしてくれる?」
「彼女どころかすぐにでも嫁にしてやる。
……そのうちオレのガキの母親になるんだからな、幸せになる準備でもしとけ」
「うん。………今までごめんネ(ギュっ♡)」
「あぁ本当になァ!オレの恋心を散々弄びやがって!!(ギュっっっ♡)」
「んふ♡www、たぃちゃんから恋心なんて言葉が出てくるとww面白いわねwwww」
「笑ってんじゃねェ!!急に元気になりやがって…!!今までのこと許したわけじゃねぇからな!!」
「だ、だって途中で私の事嫌いになってたぃちゃんから手を離すと思ったんだもん……たぃちゃん潔癖だし……、私はたぃちゃんの手を離しきれなかったんだもん……」
「離されたくねーくせによく言う」
「…………」
「嫌いになれたらあんなダセェこともこんなダセェこともしてねェってンだよ」
「…………」
「………………なんか言え」
「…………」
「………真っ赤だなアンタ」
「…………、意地悪言う子は、…嫌いよ…。」
「、……オマエ、……………嫌いは、………ダメだろうが………。」
「…………、……オマエじゃ、ないわ?」
「なァ強がるか照れるかのどっちかにしねェか?頑張ってオレの体使って顔隠してるとこ悪ィけど首まで真っ赤だから照れてんのおもっきしバレてんぞ」
「…たぃちゃんも心臓バクバクじゃない。」
「オレは、……アンタのが移ってんだよ」
「……じゃあ、、離せば。。。」
「、離すわけねェだろバカが、二度と離してやるかよ。…あと、アンタ刺された後言い逃げみたいに、こっちの顔も見ず愛してるとかほざいてやがったけど、アレ神の御前だから撤回できねェからな。分かってんだろうな」
「プロテスタントは離婚アリだもん」
「うるせェなカトリックに改宗してその口塞いでやろうか」
「あらやだどうしよう、資産運用が…アレは不倫になるのかしら、…ご法度?」
「ハァ!?この後に及んでまだそんな事言うンか!?!!…オイ、今度オレ以外の男の前フラフラしだしたら浮気だつって…」
「……怒る?…殴られる…??」
「ンン"、……浮気だつってデケェ声で騒ぐ」
「んっwwwwwwwww」
「本気だからな!!!……………欲しいもんなんか全部買ってやるし、絶ッ対ェ一等地のイイ家住まわせてやるし、外車も買ってやるから、だから、………チッ、いつまでも笑ってンな!!本当わかってンだろうな!」
「今のは意地悪だったわ、ごめんなさい。でももうそんなに飾り立てなくても、たぃちゃんはどんな私だって気が付いてくれるんでしょ?たぃちゃんが居るならもうなにも要らない♡」
「っ、…ぁ"あ"あ"〜〜〜っ、クソッ!!!アンタほんと…!!覚えとけよ"!!!」








病室の外には見舞いに来たS62の皆さん(勢揃い)と、空気を読んで入室を止めた優秀な相棒パルセイロの姿があった。




「美女と野獣じゃねぇか」
「蘭、ドンマイ」
「別にオレは本気じゃあねぇよw」
「アアアあい、あい、あイあいしてるとか、」
「どしたオマエ」





壊れかけのレディオの様に病室を指さすのは、可哀想なくらい真っ赤になった一虎の姉ちゃんである。目まで充血させて湯気を吹いている。

そう、一虎の姉ちゃんは下ネタはドンと来いだし拗れた恋愛の相談もドンと来いだが、「思いが通じあってラブラブの状態」とか、「男が"愛してる"とか口に出す」とか、「月9のキスシーン」とかはメッッッッチャ恥ずいのである。


男からのストレートな言葉や愛情表現、好意にメチャクチャ弱い。不慣れなのだ。





「なんっでテメェらは恥ずくねェんだよっ!!死ね"!!!ヤリチン"!!!!!」




くそデケェ情けない声でそう叫んだと思ったら、ピャーッて走って逃げてった。病院なんだよ静かにしろ。


まったく、童貞でイジったりヤリチンでイジったり忙しいヤツだ。






実は少女漫画にもハチャメチャに雑魚いので、それに気がついた千冬にストロボエッジ持って追っかけ回されて千冬の前で読まされて真っ赤になりながら好きなシーンをオタク談義させられる拷問を定期的に受けている。「蓮きゅ……//////」つって顔を覆って横転する。多分、今現在一虎の姉ちゃんに1番強いのは少女漫画を装備した千冬である。
エロ本もAVも涼しい顔で見ているくせに…









竜胆!!チャンスだ!!!行け!!!わかりやすく好きってさっさと言え!!!愛してるって言え!!!!!


そう思ってモッチーは竜胆を見たのだが、なぜか竜胆まで羽宮に釣られて真っ赤になっていた。いや、なんでだよ。




「は?なんだアイツ」←マジで意味わからんの顔で羽宮が走り去った方向を見る
「ほっとけイザナ」
「竜、胆wwwwwww」
「っ"、っっ"/////////」
「目ェグルグルじゃねーかww」
「斑目うるせェぞっ!!!!!//////」
「はぁ、、出直すか?」
「その方がいいか」
「せっかくなのに悪ィな?」
「サウステメェ謝罪とかできたンか」






この時のサウス(割とロマンチスト)は知らない。
空気を読んでアマービレとパルセイロを2人きりにしようとしてるのに、遠慮が無くなって頑固むき出しの2人の痴話喧嘩の仲介係になることも、数年後結婚式でバージンロードを任されることも、ブラジル帰ろうとしたら引き止められて柴家のペット🦖状態になることも、まだ、知らない。









────────────────






「"理由なく始まりは訪れ、終わりはいつだって理由をもつ"、なぁ………」



彼女の愛すべき人は、彼女のカラオケの十八番を知る時が来るのだろうか。
クリスチャンじゃねェから詳しくはないけど、プロテスタントはマリアのことを崇拝しねェらしい。まァ、マリアってかリリスみてぇな女だったけど。
……そうだな、イヴほど馬鹿ではない、蛇に誘惑されたとも思わない。
綺麗な顔して気が強い、正しくリリスみたいな女だったと思う。アダムと別れてオレの手まで転がり落ちて来ねぇかな。来ねぇんだろうな。




アイツらには「本気じゃない」なんて言ったが、間違いなくオレが人生で初めて惚れた女だった。自分の気持ちは誤魔化せなかったし、すり寄ってきた他の女じゃまったく代わりにならなかった。


どうしようもなく、本気で好きだった。理由なんてわかんねぇよ、なんか知らねぇけど気づいたらスゲー好きだった。







初めて会った時、"ウワサの元高嶺の花"なんて穿った見方をしていなければオレにも勝ち目はあったのだろうか。


はァ…………、「叶えねぇ」なんて言うから、相手は死んだか既婚者かだと思ってた。
アイツ、どっからどう見てもアンタのことずっと好きだっただろ。本命アイツかよ。誰がわかンだよ、5歳も下だし相手にしてねーんだと思ってマークしてなかったのによォ。

………あぁ、なるほどな?だから「叶わねぇ」じゃなくて「叶えねぇ」つったのか。叶えるつもりが無かったから。




……あーあ。オレだけがキズ負っちまったよ。







「?、兄貴なんか言った?」
「………いや?なんも」


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