──脱法マネーバトル
別名『ソードマスター春千夜〜完結編〜』は、金に汚れた九井一の足洗いイベントである。
ああそう、ひとつ注意がある。
今回の話の主人公は、あくまで三途春千夜である。九井でも九井の宿敵である金の魔王でもない。
思い返せば、クリスマスも終わったその日、マネーバトルは既に始まっていたのだろう。
そう、九井がヤバい金を集めていることが赤音さんにバレた12月26日その日から。
なぜバレたのか、きっかけはこうだ。
聖夜決戦()により、パイセンが入院したことを知った赤音さんは、青宗と一君が殺傷沙汰に関わっていたことを聞きつけたのだ。
赤「なんで、そんな危ないことしてるの…!?」
九「………誘われて、」
赤「なんでっ!?なんでそんなことに誘われるの!?」
九「…俺が、金稼ぐの上手いから…」
赤「お金!?どうして…!!」
九「……それは、金が必要で、」
赤音さんがその綺麗な瞳から大粒の涙をぽたぽた零す。
アンタが金持ちの彼氏欲しそう(※完全にココの決めつけ)(※妄想100%)だったからだろ。
だなぁんて口が裂けても言えねぇので、黙るしか無かった。黙りを決め込んだ結果余計に赤音さんは怒っちまって、結局その日は喧嘩別れになった。
一週間以上経った1月3日現在、ココの現状をお伝えしよう。
@、12月25日、聖夜決戦()が平定して黒龍が潰れたその瞬間に、イザナから直々にオファーのあった天竺への参入を保留にし続けている。
A、赤音さんとは12月26日からずっと喧嘩したまんまである。
もうそろそろMP切れだ。株を追うのもままならんくらいヘロヘロになってきた。赤音さん成分が足りない。そう、大食いのココの五大栄養素とは、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、赤音さんである。ミネラルも摂れやお前。
では、一旦ここでカメラを彼氏から彼女に移そう。
1月2日
赤「一くんがっ…!」
パ「うん、うん」
ここはパイセンの病室。パイセンは明日、1月3日に退院する手筈となっている。
パイセンは顔が広いから毎日誰かが見舞いに来ていた。今日はそれが赤音ちゃんだっただけ。
「最近どう?あの、年下彼氏くん♡」
なぁんて聞いたら大泣きしだしたので相談に乗っている。
なお、たぃちゃんは今居ない。喧嘩したから。たぃちゃんはアレ、病室(個室)のベッドで襲われそうになったので宗教とかなんだとか言ってめちゃくちゃキレた。正直もう神の信仰よりパイセンの方が崇めているので、宗教がネックになって拒否ったんではなく、テンパってキレて怒ったという感じである。
男の子だし、ソーユーコトはやっぱオレのタイミングで進めたいらしい。
で、大喧嘩になったたぃちゃんときたら、毎日病院には来てるけど病室に入らずホールで時間潰す、みたいな意味のわからん謎行動をしている。来たんなら入れや病室。
まぁ喧嘩してて丁度いいのだ。
パイセンは、遂に付き合うことになったたぃちゃんに対して誠意を持つため、売春行為の卒業式をしようとしているから。
卒業式ってなんだよ、と思った方もいると思う。キャバ嬢の引退式を想像して欲しい。辞めます、今までありがとう、最後にお金ちょうだいね。の会をやるのである。
全てのタイミングが被ってしまった。
泣く赤音ちゃんを見て天使みたいな(※みたいな)ツラをしたお姫様はこう言った。
「赤音ちゃん、九井君を折ってあげるわ?」
「……折る?………(グスッ、グス、)」
何をどう折るのか、
そう、1日で用意できる金で競って、その思い上がったメンタルをバキバキに折ろうとしている。
別にこれは九井が嫌いでやるのでは無い。
そも、パイセンは別に九井が嫌いでは無い。どうでもいい、友達の彼氏なんか。
でもその友達が困ってる。
この勝負で九井に勝てば、ヤンキーたちは九井より、パイセンに矛先が向かうだろう。
パイセンには鉄壁のカクさんとスケさんがついているので問題ない。
女の友情は熱いのだ。
どーしようもねー彼氏のために一肌脱いでやろうじゃねぇか。
さて、時は進んで1月3日
パイセンは無事に退院し、イモッてる大寿に遠慮もしねぇ羽宮姉が広辞苑より分厚い面の皮で当たり前の様に迎えに来た。
なお、さっきまで食っていたサイゼの会計を、トイレ中の一虎に押し付けて出てきた。カスの王道みたいな姉である。入院費とかで今月キツイ、マジ勘弁。許して一虎。
「なに、じゃああの、クソウザチンカスの家まで送りゃいいの?」
「うん♡」
クソウザチンカスとは武臣のことである。
アイツだけ唯一、まだパイセンに借金を返済しきってない。はよ返せや。
パイセンはもう売春行為から足を洗う。だから、今回の、この卒業式イベントで武臣を付き人にすることで、借金を帳消しにしてあげることにしたのだ。優しいパイセンである。もう面倒臭くなったとも言う。
\ピーンポーン/
武臣の家のチャイムが鳴る。
出てくる気配が全くない。
\ピーンポーン/
もう1回押したその時、
「…あれ、春千夜君?」
「……………ウス」
「おい春千夜待てよ!」
「カズ君まで、」
チンカスソードのマスターである、
ソードマスターハルチヨと鉢合わせた。
「だからさ〜?春千夜の妹が売られててさ〜?」
「本当にどうしようもないのねあのお兄さん」
「だから殺す(刀を見せる)」
「そんなもの持って〜」
そんなもの持って〜(銃刀法違反)である。
「それは、私に返済する借金が間に合わなくて働かされてるの?」
「……いや、たまに、……生活費足んなくて」
「黒川くんのお兄さんのバイク屋、そんなに安月給なの?」
「…………サボってたりします」
「…そう…………。」
本当にクズね、死ねばいいのに。の言葉を飲み込んだ、どれだけ堕ちてもお嬢様育ちのパイセンは、春千夜と春千夜の妹ちゃんを心配した。まだこんなにちっさいのに、妹はもっとちっさいでしょう。
そして提案したのだ、
「……春千夜君」
「…なんスか、」
「私の卒業イベントで、付き人やってみる?」
「……武臣の代わりっすか」
「いいえ、違うわ。だから、断ってくれてもいい」
「………」
「…そんな人が親族に居たら、いつまで経っても目の上のタンコブになるわ。だから、教えれることは教えてあげる。」
「…………?」
そう、春千夜でもやれる金の稼ぎ方を教えてやるのだ。
さぁ、さらに時は進んで1月19日
マネーバトルの前日である。
歌舞伎町の某会場で、予約されたシャンパンタワーの確認や、店の飾りの最終チェック、接客リスト、VIPの予約諸々、最終確認がされている。
春千夜は、ずっとパイセンの横に付きながら、
カメラを回していた。
そう、パイセンはSNSやらなんやらの、発信コンテンツが次の時代にアタることを予測していた。2005年と言えば、まだmixiの時代である。パイセンはmixiという概念に未来を感じていた。それと同時に、これが字から映像に変わればもっと稼げるとも考えた。ビジネスで生きている女は頭のキレが違う。自分が楽しいと思うことは、一定数のやつが楽しいと思う。だが、その楽しいを創り出せるやつは極わずかで、一番最初に踏破したヤツは歴史に残る。レッツゴー陰陽師を見ろ、ソレの代名詞である。そのうち、音楽や漫画の印税みたいなお金の入り方するんだろうな、ということまで予測を立てていた。
ガタガタ言ったがこうだ。
パイセンが春千夜にYouTubeを教えた。
以上である。
さて、九井君の様子を見てみよう。
彼は今、九井窃盗団(仮)を全力で招集し、株の変動に張り付きながら、なんとか今日一日で山のように稼ごうとしている。
彼はパイセンなんか大っ嫌いだ。
あんな売女が赤音さんの友達だなんて本当に認めたくない。
売女も売女だが、お前もお前で闇バイトの雇い主である。
今回もそうだ、当たり屋みたいに果たし状が届いた。赤音さんが家に来たから、やっと仲直りできるのかと思えば、涙目で果たし状を押し付けられた。
果たし状の中身はこうだ。
「お金稼ぎが関東一お上手だと伺いました。
気に入りません。決闘を申し込みます。
1月20日の開始から終了まで24時間、その間でいくら稼げたか勝負しましょう。不正のないように、あなたが信頼している人を私に、私が信頼している人をあなたに付けて、正々堂々競いましょう。」
気に入りませんだと!?
気に入りませんってなんだよ!!
気に入らねぇのはオレなんだよ!!!!
こうして九井少年は天使の皮を被った金の魔王みてぇなぶっ飛びお姫様からの喧嘩を言い値でお買い上げしちまった。
「おーい、お前動かンくていいのかァ〜?」
「うるせぇ黙ってろ」
ちなみに、パイセンが九井に派遣したのは勿論、修ちゃんである。
こういう所の信用が熱過ぎる。
なお、九井がパイセンに派遣したのは、
「(あ〜、胸糞悪ィなー)」
灰谷蘭である。
なぜ九井がパイセンに付けたのが灰谷蘭なのか、九井は今天竺に招待されているから、取引をすればイザナは人材くらい派遣してくれる。
そしてイザナはパイセンの金策を知っている。ソレと勝負すンだろ?女が枕で稼いだような金に、勧誘している金の生産者が負けては困るのだ。
ではなぜ灰谷蘭は胸糞が悪いのか、
大将に顎で使われたからではない。
最近失恋した想い人が、彼氏でもねぇよくわかんねぇオッサンとイチャついて金集めてんのを間近で監視しねぇとダメらしい。なんで俺が派遣されたんだよ、嫌がらせ??ムーチョとかにしとけよ。
そして、何故かオレより近くで付き人やってる春千夜が居る。蘭と春千夜は犬猿である。
さらに、パイセンが信用して九井に派遣したのが半間修二だって聞いちまった。最悪である。オレあいつイッチャン嫌いなンだケド。
灰谷蘭、クリスマスから踏んだり蹴ったりである。
いや、踏まれても蹴られてもいない。
パイセンは信用していない人を踏みも蹴りもしない。
パイセンは人のことを信用しない。
パイセンが信用しているのは羽宮姉、柴大寿、寺野サウス、半間修二の4人だけだ。
それ以外のやつは1ミリも信用してない。
信用する気がない、信用して裏切られたら嫌いになっちゃうから。せっかく仲良くなったのに嫌いになりたくない。
逆に言うと、上の4人のことは嫌いになってでも信じてみたいから信じている。
灰谷蘭がそこに踏み込みたいのであれば、嫌われる覚悟が必要である。
「嫌われる覚悟」とは、カリスマの対義語である。カリスマは宗教だから、嫌われたらその瞬間にサ終である。
パ「ふぅ、後ちょっとで開店だから、夜が明けるまでは一旦突っ走るわね♡」
春「ウス」
蘭「受け取った金はオレに預けろな〜」
九「チッ…日が1日ズレてりゃぁ」
半「うげ〜、ダリィ画面〜」
さて、双方準備は整った。
九井は窃盗団に指示を出す。
パイセンはおじ様に酒を注ぐ。
九井は窃盗団に指示をつげる。
パイセンはおじ様に愛を歌う。
そう、パイセンは愛が大好きだから。
信用と愛は別の話である。信用してなくても人は人を愛せる。
そして、パイセンは、愛の伴わない行動の全てを無意味だと思っている。
だから愛情深いたぃちゃんが好きなのだ。
アイツの愛は最早アイツの体重より重い暴の塊であるが。
……では、愛とは一体何なんだろうか。形の無いソレの定義は人によって違うのだろう。
たぃちゃんにとっての愛は暴力による統制だったかもしれない。
パイセンにとっての愛は、
金である。
金とは、持っていても困らず、何にでも姿を変える万能の願望器である。
金とは、無いと生きていくことすらできなくなる天下の回りものである。
幼少期にクソ親父に身一つで家を追い出され、会長だった母方の祖父の遺産を全額盗られ会社も盗られ、習い事を全部辞めて首席だった私立学校を転校することを余儀なくされたパイセンは、誰より金のありがたさを理解していた。
どれだけ自分が頑張っても、どれだけ他人に認められても、金が無けりゃ何も始まらないのである。
明日のメシにも金がかかることを理解させられたばかりの12歳の少女に救いの手を差し伸べたのは、高級クラブ帰りの大企業の専務のおじ様であった。
ハタから見てどれほど下劣な悪漢の手だろうとも、その瞬間を地獄に居た少女にとっては正しく蜘蛛の糸だった。
人はプレゼントを送る時、「あの人はこれが好きだと言っていた気がする」「これはあの人に似合いそうだ」「無難に万人受けするものを」と考えることが多いだろう。
そう、プレゼントには思いやりが詰まっている。それを人間は愛と言う。
その思いやりの理想像を最終形態まで進化させると、つまりそれは金になるのだ。
現金をそのまま渡すと良く思わない人間も多い。自分のために悩んでくれるその時間に感謝する人間もいる。
しかし、全てにおいて融通が聞いて尚且つ失敗がなくて押し付けがましくもなく、相手の幸せを願うだけの最高のプレゼントはどう考えてもやはり金である。
だからパイセンは、愛の化身であるお金が大好きなのだ。
商才はあれど金が嫌いな九井少年とは、
年季の入りが、違うのである。
さて、今は1月21日、午前1時である。
ここは天竺御用達の廃ビル。
九井一、パイセン、天竺幹部、半間修二、
そして今回の主役、三途春千夜
以上10名が顔を合わせていた。
モッチーとムーチョがサツを数えさせられている。
イザナはソレをただただ見定めている。
勘定が終わった。
好きこそ物の上手なれ。
パイセンの圧勝であった。
「チッ!!!!!!!」
「あらあら〜、うふふ」
怖い女である。
「じゃあ、せっかく勝ったから一つだけ、言うこと聞いてもらおうかしら」
「そんな約束した覚e」
「こんなこと、もう止めなさい。」
「「「「!!!!?!!」」」」
おめーだよ!!おめーが一番やめろよ!!
ここに居る男が半間を除いてほぼ全員思った事である。
「なんでそんなことお前に言われなk」
「私でしょう。貴方がこんなこと始めたきっかけ」
バレていた。
バレているとは知らなかった。
そうだよお前が連れてきた彼氏のせいで俺は!!
「そうよ。貴方みたいな方が普通なの。
私みたいに、ズルで稼いでいる人間を見れば、誰でも同じようなズルをし始めるの。」
「だから!!お前が人になにk」
「言えないわ。だから、これは決定事項では無い。命令でもない。忠告よ。
今止めないと、もう止める機会は二度と訪れないと思いなさい。」
「っ──」
敵の顔をしていなかった。
いつものフワフワした笑顔もなかった。
余裕シャクシャクで人を見下す金の魔王みたいな本性でもなかった。
身を売って骨しか残ってないような絶望した顔の、とても人生勝ち組のお姫様だなんてホザケないような、敗戦国の戦士の顔をしていた。
次の瞬間、九井の脳ミソは使い物にならなくなった。
女に生まれただけで、女だからってだけで大金稼いでるんだと思っていた。
体売れば簡単に稼げる方の性別、なんて思っていた。
勝ち組だと思っていたその女は、圧倒的に負け組であった。
勝ち組を演出していたのだ、地獄から。
バレるワケに行かない、とんだハッタリを成立させ続けていたのだ。
どれだけ心がすり減るのだろうか。
これが、金が手に入っただけで幸せになったような気になれる、何も知らない女なら良かった。
パイセンは、本当の幸せも、見掛け倒しのハッタリも、埋まらない心の風穴も、絶望も、絶望にチラつく希望も、全部知っている。
パイセンはもう、"本当の幸せ"が迎えに来てくれた。サンタさんがプレゼントしてくれたのかもしれない、いや、アイツがサンタさんなのかな。デケェサンタさんだな子供泣くぞ。
だから、自分のサンタさんと同い年の、まだまだ子供の九井少年に、"本当の幸せ"を見なさいと最後の忠告をしてやったのだ。
貴方の本当の幸せは赤音ちゃんでしょう。
もし赤音ちゃんが消えても、もし赤音ちゃんと別れても、貴方の記憶の中の赤音ちゃんが誰かに取り上げられることは無いでしょう。
未来がなくても、過去は絶対に変わらないでしょう。
それは、人生の中で覆ることの無いプレゼントでしょう。
貴方も私も、これ以上、本当の幸せを傷つけるようなことは止めましょう。
それを伝えるためだけに、わざわざ果たし状まで用意したのだ。
「で?オレの財布になるのはどっち?」
黒川イザナ、やはり大将である。
情なんかで有耶無耶にしない。
闇金収集を止める話とかどうでもいいのだ。
「まさか、このオレがスカウトしたサイフにケチつけて、邪魔だけして逃げる、なんてことないよね?パイセン」
「私が九井君の代わりに入って、入った瞬間に寿退社したらどうかしら」
「オレと結婚すんなら考えてやってもいいよ」
「あらあら、熱烈な告白ねぇ」
お互い、結婚なんか絶対しないことを分かっていて言うからタチが悪い。
「九井君はいくらに見える、黒川君」
「いくら?」
「そう、あなたにとって、九井君はいくら?」
「売り物じゃねーだろ」
「人間は売り物よ。厳密に言うと、人間の時間は売り物よ」
「………」
「ちなみに、一般的に人間が一生で稼ぐお金は、2億7000万よ。」
「は、アンタ1日で、」
「そうね、私も九井君も、一週間あればそんなの余裕だったわね。
……まだ、あの子がそんな大金稼げるように見える?」
「………………」
「………………。ね?」
黒川イザナは馬鹿では無いので、パイセンが指を指した先にある九井の顔を見てわかってしまった。九井の心が埋まってしまったのを理解してしまった。
もう、コイツは財布になれない。
財布になる必要が無くなってしまった。
だが、イザナの心は埋まっていない。
タダでは起きない大将はこう言った。
「…………代わりに何を差し出す」
「今日稼いだお金、全部あげるわ♡」
「「「!?!!!!!」」」
とんでもねぇ金額である。
全部あげるわ♡じゃねぇよ、どこに隠すンだよこんな札束、命狙われるワこんなん。
「後からたかるのはナシだぜ?」
「別にいいわ?コレで、私は今日、2つ商品を買うの。」
「……は?」
1つが九井の事なのは分かった。
お姫様は優しいから、どうしようもない不良少年の人生を買って逃がしてあげるのだ。
ではもう1つは何か、
「貴方よ。黒川君」
「……オレ…?」
「そう。黒川イザナ君、貴方よ。」
パイセンは、イザナが天竺を創りたいことを知っている。
身寄りのない奴らをみんな国民にして、居場所を作ってやる、羽宮姉からその話を聞いた。
その大望に、パイセンは金の魔王として最後の投資をする。
「いつか、ポーカーやったよね」
「………あぁ。」
忘れもしねぇエグいファーストコンタクトだった。
「これから大変だろうけど、何回でもやり直しなさい。貴方なら何回でもやり直せるって期待して、何回もやり直す武器をあげるわ」
「…………」
「ありがとう、私だけ年が違うおばさんなのに、はぁちゃんとセットで仲間に入れてくれて。天竺、楽しみにしてるわね♡」
「………………」
「…………、帰ろっか、春千夜君」
「……うス」
「九井君も早く帰るのよ?早く帰って仲直りするのよ〜」
「…………おい、パイセン」
「……なぁに?」
「……………柴が嫌になったらいつでも帰ってこい。天竺はアンタの母国だ」
「…………ふふ、ありがとう」
そこに居た全員が、なんだか、今まで目の上のたんこぶだと思ってた怖い姉ちゃんが嫁に行っちまった様な、そんな気持ちになった。
「おい獅音」
「なんだ大将」
「お前この金預けてこい、絶対ェ途中で無くすなよ、死んでも守れ、でないとコロス」
「無茶だっっっって"!!!!」
「頼んだぞー獅音」
「期待してっぞー獅音」
「大丈夫大丈夫、」
「獅音君ならできるって」
「お前らマジでさァ!!!!!」
春「………電車、無いっすね」
パ「歩いて帰るしかないわねぇ〜」
春「…いつもみたいに、迎えは?」
パ「私はもう、タダの女子大生よ。お姫様ごっこは終わったの。」
春「…………タクシー使わないンスか」
パ「もう、そんなお金持ってないわぁ」
春「……寒ィ」
パ「…………コレ、」
春「?」
パ「カイロ。温かいでしょ」
春「アンタ使わないンスか」
パ「今日、頑張ってくれたから」
春「…………でも俺、別に金稼いだワケじゃ」
パ「稼ぐ必要なんて無いわよ。別に貴方が借金したわけじゃない」
春「!?……じゃあ、なんで今日、」
パ「私はもう使う予定が無くなったけど、今日貴方に教えたことは、絶対将来役に立つはず。貴方だったら上手く使ってくれそうだから教えたの。」
春「…………そんな、分かりもしないこと」
パ「…………」
春「………じゃあ、まだ武臣は返済、」
パ「もういいわ。その代わり、」
春「…………?」
パ「その、貴方が持ってる刀、貰ってもいいかしら」
春「……?これ?……これ、錆びてて抜きすらできませんよ」
パ「なら、抜くなってことね♡」
そう、刀なんか抜く必要ないのである。
パ「大事なことは口で話して確かめなさい。貴方は周りをよく見てるけど、見えるものだけが全てじゃないわ」
春「…………」
パ「……ね?」
春「パイセン、」
パ「?…なあに?」
春「パイセン、武藤さんと結婚しませんか」
パ「・・・ん???」
春「武藤さんと結婚して、オレのこと養子にしてください」
パ「どうしたの???寒すぎて風邪引いた??タクシー呼ぼうか??」
春「引いてねぇッス!!!」
三途春千夜、足抜けして芭流覇羅に行く場地圭介に「トリートメント」を聞く男である。
コイツの文脈はコイツにしかわからない。
さぁ、九井少年は足を洗い、ソードマスターハルチヨはその刀で金の魔王を倒した。
そしてここは大寿の現在の家。
「…………おい、遅せぇ」
「ゴメンね」
「……」
「スねないでよ」
「………どこで、何、ン、」
\ちゅっ♡/
「ン♡」
「………………お前、こんなんで絆さr」
「もうたぃちゃんしかお姫様扱いしてくれる子居なくなっちゃった」
「……………」
「ね?だから、」
\ガバっ…!!/
「キャッ、」
「焦りすぎなんだよお前、」
「……………だって、5歳もオバサンだし…」
「5歳もガキだからってバカにすんなよ」
「…ぇ?」
「………悪かった、嫌なんじゃねェ、緊張してただけだ。あとアンタはオバサンじゃない」
「………………」
「ホント勝手なお姫様だな、茹でダコみたいだぞ」
「タコじゃないもん!!」
「わかったわかったうるせぇもう黙れ、
……黙って抱かれろ、俺だけのお姫様」
春「武藤さん武藤さん!!」
ム「……なんだ、落ち着け」
一方ここはムーチョの家。一緒に明け方のラーメンを食っている。2人とも、昨日はおお仕事だったのだ。ちょっといい袋麺を食っている。
春「オレ!武臣なんかの弟やめて、武藤さんとパイセンのガキになりたいッス!!」
厶「………は?」
春「だから武藤さん!パイセンと結婚しましょう!!!」
またしても何も知らない武藤泰宏さん、春千夜と明司武臣が兄弟って知らなかった。
……え?お前、兄貴のこと殺……え??
お前一人っ子つってたよな!?!!
お前、羽宮達に兄貴殺されようとしてんのを見殺しに……!?!!?!
大男がギャルにビビってんじゃねぇ。
武藤泰宏、三途春千夜と逆で、人の事をあんまりちゃんと見ていない。
しっかり見ろ、お前が飼ってるそのメンヘラは浮気で袈裟斬りしてくるタイプのメンヘラだぞ。
この時のムーチョ(女(?)難)はまだ知らない。
オレらの大将は、与えられた金という武器で居場所を創り、暴力や悪事以外の心の埋め方を与えてくれることを、まだ、知らない。
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