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「起きろ」

第七師団聨隊兵舎のとある一室、壁に寄り掛かる状態で眠っていた名前の目が薄らと開く。
ぼんやりと映る先には冷ややかな眼差しでこちらを見下ろす軍人の男とその手には銃が向けられていた。

『……っ、え……』
「貴様何者だ。何故ここにいる」
返答によっては引き金を引くのもいとわない姿勢だ。
「聞いているのか?」
唖然としたまま口を開かない名前に業を煮やした鯉登は、右足を少しばかり踏み出すと彼女はびくりと肩を揺らし、酷く動揺した。
ぼろぼろと涙を流しながら死にたくない、殺さないでと悲願する。今すぐに殺されるとでも思ったのだろうか、そんな彼女の様子に鯉登は困惑しながらも握っていた銃を一度下ろすこととした。

「これでは話しにならんではないか」
『ごめんなさい……ごめんなさい………』
「(このままでは拉致があかん)」
ひたすら泣きじゃくる彼女の意識をこちらへ向けさせようと鯉登は何気なしに名前の腕を掴むが、力加減を間違えたようで表情を歪めさせてしまう。
結果、更に怯えさせてしまったわけだが、それにしても女とはここまでひ弱だっただろうか。

「ぐぬ…どうすればいいのだ…!」
正直ここまで怯えられ取り乱されると思っていなかった鯉登は先程までの警戒心がしゅるしゅると小さくなっていくのが分かった。





『……先程は申し訳ありませんでした』
「少しは落ち着いたか?」
『はい……』
「あまり手間を取らせるな」
『申し訳、ありません…』
「謝罪はもういい』
鯉登は溜め息を吐いた。
「それで。お前はどうやって入って来たのだ。そう簡単に侵入出来る所ではないぞ」
『それが…その…』

事情を説明して信じてもらえるわけがない所か命も奪われかね無いこの状況では口が開かなくなるのも当然だ。
本日何回目か分からない鯉登の問い掛けに名前はどう答えたら良いのか分からずに目を伏せる。
「難しい質問はしていないんだがな。何故答えられんのだ」
『それが、私にもよく分かっていなくて…、その、言っても信じてもらえないかも、しれないのですが…』
「………話してみろ」
『あの、本当に、殺さないで頂けると幸いです』
「は?」



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