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「コラッなんで畳をばりばりするんだ鯉登!ばりばりやめなさい!」
『(畳ばりばり…?)』
名前は現在、鯉登の上官である鶴見中尉と対面する為にその自宅に来ており、ひとり部屋で待機していた所だ。
鶴見中尉の部下であり鯉登少尉の補佐役とだと言う月島軍曹から、こちらから呼びに行くまで少し待っていてほしいとの申し出があり名前はそれに素直に頷いた。
誰もいなくなった和室でぼんやりと外を眺めていれば、部屋の外からは"キエエ!"という叫び声や"ばりばりやめなさい!"などの言葉が聞こえてきて、彼らは一体何をしているのだろうかと名前は首を傾げるのであった。
*
「いやぁ、お待たせしてしまって申し訳ない。初めましてお嬢さん。鶴見です」
『とんでもないです。初めまして、苗字名前#と申します…!』
鶴見と初めて対面した名前は、彼らの上官なだけあって醸し出される独特な雰囲気を肌で実感するも、反対に立ち振る舞いはフランクで気さくに感じるのだからそれがとても不思議で、名前は自分の膝の上にある手をぎゅっと握り締める。
『……あの日、私を保護する事を提案して下さったのは鶴見さんだと伺いました。本当に、すごく救われましたし、感謝しております』
深く頭を下げる名前に鶴見はまあまあと片手を挙げた。
*
「……とても信じられん話しだが、君は未来の日本から来たと?」
『は、はい』
ふむ、と鶴見は顎に手を当て何かを考える仕草をする。
「あの鯉登がその話しを信じるに至った根拠とはなんだったのか、聞かせてくれるかな」
『……きっかけは、このスマートフォンでした』
座卓テーブルにそれを静かに置くと鶴見は興味深そうに少しだけ身を乗り出す。
「どういう用途で使われていたんだい?」
『これがあれば電話も、遠くにいる人へ文章を送る事も、受信する事も、調べ物をしたり写真や動く映像を撮る事も可能です。これひとつで出来ることは多岐に渡ります』
「それはそれは!この時代では考えられん技術だ」
『ですが、全ての機能を使うには、専用の電波みたいなものが必要と言いますか…この時代にはそれが無いので…使える機能は一部にはなりますが…』
名前は座卓テーブルからスマホを持ち上げ、鶴見の前へ差し出した。
『もし宜しければ鶴見さんも月島さんも、実際にお手に取って操作してみて下さい。これが唯一の私の持ち物であり、根拠となり得るものでもあるので……』
実際に手にとって操作をし、鶴見も月島も驚きを通り越し関心している様子で、少しばかり不格好にそれに触れている。
「………うん、本当にすごい技術だ」
「この時代の物とは確かに異なると…思います」
「これは…確かに根拠と言えるだろう。なあ月島」
「そう、ですね。私も驚きました」
「ふむ。それならば私もひとつ、君を信じてみようではないか」
『……!このようなお話しを信じてくださり、本当にありがとうございます……』
名前は安堵し、ほっと息を漏らした。
「これ、お返ししておきます」
月島から端末を受け取り、ふと液晶に視線をやるとそこには丁度充電切れの文字が映し出されていた。
普段は端末の電源を切って充電を節約していた為、通常よりも長くは持ったが唯一の名前の持ち物であったそれは鯉登をはじめ、鶴見と月島の信頼を無事に得たのちにお役御免となったのだった。
『(ありがとう。私のスマホ)』
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