帰省

 GWに、久しぶりに帰省することにした。

 実家の犬は相変わらず――私がこの家に住んでいた時と変わらない態度で、私を迎えてくれた。
 私に気が付くなり、犬小屋から、鎖がぴんと張るほどの勢いで飛び出してきてくれて、もふもふした立派な尻尾を左右に振り、まるで笑っているかのような表情で私を見つめてくる。
 まだ覚えてくれている嬉しさと同時に、私は自分の薄情さを思い知った。
 前にこの子を撫でたのはいつだろうか。散歩をしたのは。遊んだのは。褒めたのは。声を聞いたのは。
 見上げてくる目は子犬の頃と同じくらいきらきらしていたけれど、毛並はすっかりおじいちゃんになっていた。いつ別れがきてしまってもおかしくないのだと、馬鹿な私はその時やっと気が付いた。
 手を伸ばして頭を撫でると、待ってましたと言わんばかりに目が細くなっていき、更に笑顔になる。少し意地悪して撫でるのをやめると、前脚でちょんと催促してきて、次に手を舐めてきた。
 会話は出来ないけれど、態度と表情で気持ちを伝えあうことは出来る。この子から何度も教えてもらった。
 だから私は、大好きだよという気持ちを込めて、思いきり頭を撫でた。


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