手紙



 地球温暖化や環境破壊、自業自得な公害まみれの非日常な日常をいかがお過ごしでしょうか。我々妖怪一同は、お蔭様でみな息災でございます。
 先日、人間社会という物は非常に生きづらいものと聞き及びました。不躾ではございますが、我々の意見を手紙に書き認め、皆様にお読み頂きたいと思い至った次第でございます。突然お手紙を差し上げます失礼をお許しくださいませ。
 単刀直入に意見を申し上げますが、それも偏に皆様方のご先祖様が作り出した仕組み。そしてその仕組みを改変しようとしない皆様自身のせいなのだとお気づきでしょうか。我々には毛頭理解できませんが、片寄った主観からなる規則や自分自身を摩耗するだけの関係性に縛られて、己を押し殺し生き続けることに快楽を見出しているのだろうかと考えてやみません。それはそれで人間らしいのではないかと思いますが、全てを諦めて鬼籍に入るのもとても滑稽でお似合いかと存じます。
 さて、話は変わりますが、皆様が数世代にわたり必死に築き上げた文明と言う名の砂上の楼閣を、どういう訳か、堅牢なる、確固たる、揺らぐことのない、偉大なる絶対無二の難攻不落の要塞だと信じて疑う事のない純粋さ垣間見るたびに、ああ無邪気とは無垢とは白痴とはこういう事を指すのだなと痛感致します。そんなほんのひと時の栄華に酔い溺れ、生きると言う事の本質を見失いつつある皆様が愛おしくてたまりません。
 人間社会のますますのご発展を、妖怪一同、草葉の陰より恨み辛みを唱えつつ、妬み嫉みを含んだ熱視線を送りながら千日千夜百歳千歳を越えてもなお、心から呪っております。どうかお元気で、そのちんけな命が燃え尽きる最期の日まで、相も変わらず曖昧模糊に唯々諾々とお過ごしください。それでは、また。



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