天狗と師匠

 黄昏時。竹林がうねるほどの風と共に、そいつは現れた。
 張りぼてのような大きな翼。山伏のような恰好。目は紙で切ったように細く鋭くて。真っ赤に熟れた夕日を背負い、にんまりと笑うそいつからは、謎の自信が溢れていた。
一本歯の下駄で跳ねるように、私のすぐそばまで近寄ってくる。右手には羽団扇。左手には朱塗りの瓢箪。馬鹿みたいに天狗だった。天狗と聞いて一番に想像するような見てくれだ(顔以外は)。
 だが、残念なことに尻尾が生えている。ああ、この子は本当に詰めが甘い。いつになったら免許を渡せるのか。
「不合格」
「え!?」
 大柄な天狗はしゅるしゅると縮んでいき、見慣れた狸の姿に戻った。


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