19 立春

帰省二日目。僕は裏庭の桜がなくなっていることにようやく気がついた。驚いて母にわ聞くと去年台風で折れてしまったらしい。卒園祝いに祖母が植えてくれた僕の桜。小ぶりながらも春になると一人前に花を咲かせていたが、いつからか気にも留めなくなっていた。桜のいないその場所は、春なのに寒々しかった

***

ささやかに生きていたのに。目立たず、荒らさず、食べる分だけの命を屠り、家族で身を隠しひっそりと暮らしていただけなのに。神さま。なにがいけなかったのでしょうか。私たちは生きていてはいけないのでしょうか。害だ不快だと騒ぎ滅すあれらの方が、この地にとって不要なのではないのでしょうか。



×/ 戻る /top